女性なら誰しも、更年期をやわらげたいと思うもの。あれがいいといえば試し、これがいいと聞けば食べたりしていることでしょう。更年期に詳しい産婦人科医の対馬ルリ子先生がおすすめする食材や栄養素、食事の摂り方などのアドバイスを伺います。

快適な食生活の基本は11の栄養素にあり

つらい更年期症状をやわらげるには食事も大事。対馬先生は更年期をのりきるために有効な、11の栄養素をバランスよくとることが大切だといいます。

1. コラーゲン/肌の荒れ・乾燥、整腸作用、関節や筋肉のこりなどに。

2. イソフラボン/のぼせ、ほてり、発汗、動悸、息切れなどに。

3. カルシウム/イライラ、ストレス、頭痛・腰痛、肩こりなどに。

4. ビタミンC/イライラ、ストレス、肌のかゆみ・湿疹などに。

5. ビタミンA/ドライアイ、ドライマウス、整腸作用、肌のかゆみ・湿疹などに。

6. ビタミンE/冷え、むくみ、肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、肌のかゆみなどに。

7. ビタミンB群/イライラ、ほてり、発汗、動悸、息切れなどに。

8. 鉄/イライラ、ストレス、動悸、息切れ、めまいなどに。

9. たんぱく質/頻尿、冷え、むくみ、肌のかゆみ、湿疹などに。

10. DHA・EPA/ほてり、発汗、冷え、むくみ、肌のかゆみ、湿疹、ドライアイ、ドライマウスなどに。

11. 食物繊維/整腸作用に。

現代の女性の体に不足している要素を補うために

「11の栄養素の役割を知った上で、好きなメニューを食べるといいですね。皮膚の弱い方にはコラーゲン、のぼせ、ほてり、発汗が気になる方にはイソフラボンというように、症状に合わせて栄養を補ってください。基本はビタミンとミネラルをしっかりとることです。特に近年、日本の食材はミネラルが不足していますから、意識をして摂るようにしてみましょう。たんぱく質も不足しがちです。丈夫な体を作るにはたんぱく質は不可欠で、肉や魚といった動物性たんぱくをしっかり摂ることは、更年期以降の健康維持にも効果が期待できます」

月経のある女性にとって、鉄やカルシウムの不足も深刻化しているといいます。

「鉄欠乏性貧血になる女性は男性の6倍にものぼります。乳製品や赤い肉、ひじきとか黒い海藻は積極的に摂取していただきたいですね。色のついたものをたくさん摂ることも健康な食生活に欠かせません。赤や紫などポリフェノールを多く含んでいる食物は、細胞が活性化されますから、アンチエイジングにも効果が期待できます。野菜やフルーツ、魚を調理する際は、新鮮なものを選ぶといいですよ」

習慣化できるダイエットが健康な体をつくる

一方で、無理なダイエットは要注意です。

「一つのものだけを食べるワンフードダイエットをやったことがある方は多いと思いますが、一気に痩せてもリバウンドしやすく、もう1度つらい思いをしなくてはいけないと考えたら意欲も失せてしまいがち。最近は玄米菜食をしている方もいらっしゃいますが、それだけだと痩せすぎて低栄養になってしまう場合もあります。玄米菜食でたんぱく質やビタミン、ミネラルをちゃんと摂るには、相当量を摂らないといけませんし、エネルギー量が足りないので注意をしていただきたいですね。ダイエットは短期集中ではなく、粘り強く習慣化していくことが大事です」

食生活の改善は、更年期以降のフレイル防止などにもつながっていきます。

「食事は生活習慣です。いい生活習慣を身に着けている方は、だんだん健康力が増していきます。逆に健康に気をつかわず、生活改善の意欲もなくて、年齢だけを重ねてしまう方は大病をしやすくなり、寿命も短くなってしまいます。長生きをしても、人生の後半で介護期間が長くなってしまう可能性が高くなるわけです。ただし、肝心なことは何を食べるかよりも、どう食べるかです。食事をないがしろにせず、しっかりと食事の時間をとりましょう。楽しくおいしく食べるのと、短い時間でただお腹の中に放り込むのとでは、消化がまったく違ってきます。よく噛んで味わいながら、おいしくいただくことは、消化管全体の機能活性にもつながります。朝からたんぱく質(卵や肉・魚、乳製品など)を摂ると胃腸が動き出し、消化機能や血流がよくなることで体があたたまります。忙しい日々を過ごしていても、1日3食きちんと食事を楽しんでください」

お話を伺ったのは……


対馬ルリ子先生
医療法人社団 ウィミンズ・ウェルネス
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿 理事長
産婦人科医師、医学博士


1984年弘前大医学部卒。東京大産婦人科教室助手、都立墨東病院総合周産期センター産婦人科医長を経て、2002年ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック(現・対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座)開院。産婦人科、内科、乳腺外科、心療内科、泌尿器科等で協力し全人的女性医療に取り組む。2003年女性の心と体、社会との関わりを総合的にとらえNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立し理事長に就任。全国約600名の女性医師・女性医療者と連携して活動し、さまざまな情報提供、啓発活動や政策提言を行っている。一般財団法人日本女性財団代表理事、ウィミンズ・ヘルス・アクション実行委員会副代表、一般法人社団日本女性医療者連合副代表。2017年日本家族計画協会「第21回松本賞」受賞。2017年デーリー東北賞受賞。2018年東京都医師会・グループ研究賞受賞。著書多数。近著に『「閉経」のホントがわかる本』(集英社・2020年)

医師のインタビュー記事は、株式会社おいしい健康が運営するメディア「先生からあなたへ」でもご覧いただけます。
https://articles.oishi-kenko.com/sensei/

取材・文/安藤政弘  写真提供/対馬ルリ子女性ライフクリニック

 

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