第1回では、「なぜ脱水になるか」を、脱水のスペシャリストである医師・谷口英喜先生に解説していただきました。脱水は誰もが知らないうちに経験しているとのことでしたが、最も脱水を起こしやすいのは高齢者です。加齢によって体の様々な機能が衰えることから、体内に蓄えられる水分量が減少し、脱水になりやすいといいます。高齢者は脱水をきっかけに寝たきりになったり、認知症が進行したりなど、より事態は深刻です。谷口先生に、高齢者が実践したい予防法を伺いました。

加齢による機能低下が脱水を招く

「第一に、加齢により筋肉量が落ちてくることがリスクになります。筋肉量が減っていくということは、体内にある水を貯めるタンクが少なくなってくると考えてください。水分を確保しにくくなることで、脱水になりやすいといえます。足がつりやすくなったり、頻繁にこむら返りを起こしたりするのも、筋肉に水分が少なくなった時の兆候です。第二に、皮膚にある暑さを感じる温度受容器の衰えです。高齢者には熱いお風呂が好きな方が多いですが、これは嗜好性というより加齢によって熱さに鈍感になるというのが理由です。そして第三は、口渇中枢の衰えによって、のどの渇きを感じにくくなること。のどが渇かないので水分が不足していることがわからなくなってしまいます。これだけでも大変ですが、さらに汗腺の働きの低下や、水分が尿として大量に出てしまう腎機能の衰えなど、加齢とともに、体に水分を貯めておく機能がどんどん衰弱していくのです」

寝たきりや床ずれにも脱水の影響が

脱水症からくる熱中症も、こうした加齢による衰えが大きな原因となっています。

「熱中症は、脱水によって汗が出なくなり、体内に熱がこもって、体温が上昇することで発症します。熱中症の報道でしばしば指摘されるように、熱中症になった高齢者は重症化しやすく、最悪死に至ることも少なくありません。熱中症のリスクは、気温のアップダウンが激しい時期や湿度の高い時期に高まりますが、6月、7月は2つの時期が重なる上、家にこもりがちになり体を動かさないことでリスクが倍増します。余談となりますが、屋内で熱中症によって倒れる方の多くは、エアコンのトラブルが引き金になっています。エアコンそのものが壊れていることもあれば、単にリモコンの電池が切れていたというケースもあります。体の予防が何より大切ですが、高齢者のいる家庭では早めにエアコンを点検し、故障していたら修理する、新しいものに買い替えるなどしておきましょう。適切にエアコンを使用することが、熱中症予防になります」

熱中症以外にも脱水症がきっかけで起こる症状があります。

「脱水になると脳の水分が減り、めまいや立ちくらみといった症状が出てきます。若い人ももちろん危険ですが、高齢者は転倒によって骨折する危険があり、寝たきりになる原因になることもあります。脱水で皮膚が乾燥すると、雑菌が皮膚に侵入しやすく、皮膚病や床ずれにもなりますから、注意をしてください。また、60代以上は自覚症状のないかくれ脱水にも警戒してください。脱水症は診断が難しいこともあるので、還暦を過ぎた方で、いつもよりも疲れやすくなったと感じたり、慢性的に疲労を覚えるようであれば、食事以外にスポーツドリンクを飲んだり、こまめに水分補給をしたりするといいですね」

脱水症は認知症をより進行させる

脱水は脳にもダメージを与えることから、高齢者のみならず、50~60代にとっても関心の高い“認知症”にもかかわってきます。

「脳の90%以上は水分が占めています。脱水で脳から水分が減ると脳の機能低下に加え、塩分(電解質)が減少して思考能力も低下します。脱水で認知機能をさらに悪化させてしまうのが脱水症の怖いところです。認知症によって水分補給を忘れてしまうと、脱水症のリスクもどんどん高まるのでより危険ですね」

働き盛りの方や若い方も脳の水分が減ると生活に影響が出てしまいます。

「脱水になると頭の回転が鈍くなるのは年齢に関係がありません。集中力が落ちたり記憶力が低下したり、眠くなったり、悪影響からは逃れられません。社会人であれば仕事の効率が大幅にダウンし、学生であれば勉強に身が入らなくなります。ドライバーの方などは運転すること自体に危険がともなってしまうのです。ただ、高齢者は脱水症の対応自体が困難になる場合も多いので、家族や周囲に高齢の方がいらっしゃるようであれば、様子の変化を察知し、早めに適切な対処をしていただきたいですね」

お話を伺ったのは……


谷口英喜先生 
済生会横浜市東部病院患者支援センター長/栄養部部長
医学博士

1991年、福島県立医科大学医学部卒業。麻酔科医師。学位論文:経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究。神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授を経て、済生会横浜市東部病院周術期支援センター長兼栄養部長。神奈川県立がんセンター麻酔科非常勤医師。東京医療保健大学大学院医療保健学研究科客員教授。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急学会専門医、日本静脈経腸栄養学会認定医・指導医、日本外科代謝栄養学会・教育指導医、「かくれ脱水」委員会副委員長。著書に『すぐに役立つ 経口補水療法ハンドブック』、『イラストでやさしく解説! 「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本』、「はじめてとりくむ水・電解質の管理 基礎編・応用編」などがある。

医師のインタビュー記事は、株式会社おいしい健康が運営するメディア「先生からあなたへ」でもご覧いただけます。
https://articles.oishi-kenko.com/sensei/

取材・文/安藤政弘  写真提供/済生会横浜市東部病院

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