新型コロナウイルスの、重症化リスクのひとつとして挙げられているのが慢性腎臓病(CKD)です。CKDは、腎障害や腎機能低下が慢性的に継続するすべての腎臓病のこと。日本全体で患者数は1330万人にのぼり、20歳以上の日本人の8人に1人がかかっていると考えられています。コロナ禍では特に高齢者はより深刻です。健康で長生きをするためには、慢性腎臓病にならないことが重要。予防法や早期発見・早期治療の大切さ、実際にかかってしまったときの食事制限について、東京医科大学病院腎臓内科主任教授の菅野義彦先生に伺いました。

定期健診だけが早期発見・治療の糸口

高度医療の発達もあり、人生100年時代も現実味を帯びてきています。慢性腎臓病(CKD)が悪化して透析を一生続けたり、寝たきりで何年も過ごしたりする高齢者もいます。そうならないよう、定年後に気をつけたい食事や運動などの生活習慣について伺います。

「定年後も働くことのできる時代になりましたが、仕事を引退してしまった患者さんは二極化します。一つは健康に無関心で、現役の時と同じ食生活や生活習慣を続けるタイプ。よほどのことがない限り病院に足を運ぶことはなく、仮に受診しても医師の忠告にはあまり耳を貸しません。もう一つが、これまでの仕事へのエネルギーをすべて健康維持に注ぐタイプです。1日に5回くらい血圧を測ったり、適度な運動を欠かさなかったり、医師の指導を守って食事にも気を配ります。現役中はできなかったことを始めて、1年後には薬がほとんどいらなくなったという患者さんもいました。ここまで『健康の道』を極めなさいとはいいませんが、生活習慣を改善し、定期的に病院で治療を受ける方が、老後も健康な生活を続けられ、健康長寿にもつながります」

CKDは自覚症状がないため発見が遅れるケースが多いといわれ、高齢者が重症化するリスクの原因ともいわれます。小さな異常であっても、体が発するサインを見逃さないことが、早期治療にも結び付きます。

「痛みや違和感を覚える自覚症状はありませんが、決して無症状というわけではなく、むくみ、たんぱく尿といった兆候はあります。なぜ発見が遅れるかといいますと、むくみを感じたとしても、時間が経つと元に戻ってしまい、たとえむくみが原因で体重が増えても、わざわざ病院までくる患者さんはいないのです。たんぱく尿はむくみと違って見てわかるものではないので、尿検査で初めて異常を知ることになります。しかし、血圧や血糖のように数値ではなく、『-、±、+』の3種類で評価するため、危機感を実感しにくいのです。血圧が正常値より大幅に高くなれば、大抵の方は驚いてすぐに受診されますが、『たんぱく尿が出ています』と伝えても反応は鈍く、受診される方はほんの一握りに過ぎません」

CKDの発見が遅れるのは、こうした背景があるわけです。菅野先生は「いかに危機感を持ってもらい受診につなげるかは、医師にとっても課題」と言います。CKDをそのまま放置しておくと、貧血、倦怠感、息切れといった症状が現れますが、この段階ではかなりステージは進行しており、疾患の流れを変えることができずに透析や腎臓移植が必要となる末期腎不全になります。さらに心臓病や脳卒中などの心血管疾患発症リスクも高まっていくのです。

高齢者の食生活は管理栄養士がキーパーソン

「腎臓は一度悪化したら腎機能を取り戻すことはできませんが、早期に発見できれば、症状を緩和させたり、残りの腎機能を長持ちさせたりすることは可能です。50代、60代はまず、定期的な健康診断を受けていただければと思います」

食事については、前回お話しいただいたように、中途半端な食事療法は避け、家族でできる範囲内で実践すれば良いとのこと。

「家族全員で食べる料理は薄味で作って、健康な家族は後から調味料で味付けをすればいい。食べられなくなってやせ細っていくより、しっかり食べることを強調した方がいいと思います。半年くらい試してみて、おかしくなったらそこでメニューを変えればいいんです。家族と同じものを食べながら見直していく方が、実践的ですね」

専門医のアドバイス同様、管理栄養士に話を聞くのも大事だといいます。

「今の医療制度では管理栄養士にだけかかることはできませんが、生活習慣病というのは医者が治すのではなく、管理栄養士が治すものだと考えています。勤務先の保健室や社員食堂に管理栄養士がいれば、一度相談してみてください。家族だけで無理なくできる食生活を、一緒に探してもらうというのもいいと思います」

お話を伺ったのは……


菅野義彦先生
東京医科大学病院腎臓内科主任教授

1991年慶應義塾大学医学部卒業後、同大学院医学研究科、米国留学、埼玉社会保険病院腎センター、埼玉医科大学腎臓内科、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て、2013年4月東京医科大学病院腎臓内科主任教授に就任。

医師のインタビュー記事は、株式会社おいしい健康が運営するメディア「先生からあなたへ」でもご覧いただけます。
https://articles.oishi-kenko.com/sensei/

取材・文/安藤政弘 

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