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新型コロナウイルスの感染拡大は収束をみせる気配がありません。免疫力が衰え、感染すると重症化しやすい高齢者の不安はより深刻になっています。医療現場が依然として混乱していることもあり、新型コロナウイルスについては、まだまだ不明な点が多いですが、重症化予防として注目されているのが、歯みがきや舌みがきといった、口の中のお手入れです。口腔をしっかりケアし、虫歯や歯周病をおさえることで、感染症だけにとどまらず、生活習慣病予防にもなります。口腔衛生で予防できる病気、口の中のケア方法などをまとめて、鶴見大学歯学部探索歯学講座教授であり、歯原性菌血症予防のための「3DS除菌」開発者である花田信弘先生に伺いました。テーマ別に4回に分けて紹介していきます。

新型コロナ重症化の一因は歯周病にあり⁉︎

新型コロナウイルスは、2003年に一時的なパンデミックを起こしたSARSコロナウイルスに比べると、病原性はかなり低く、厚生労働省によれば、発症者の約8割が軽症で、うち無症状が約2割。重症化するのは2%未満と公表しています。一方で、65歳以上の高齢者や基礎疾患がある方は重症化リスクが高いことも判明しました。

「SARSコロナウイルスは、感染すると一撃で重症化するため、感染者が他所へ移動せず、さほどウイルスが拡大することなく終息を迎えました。今回の新型コロナウイルスは無症状の感染者が多く、感染に気づかず、ふだん通りに仕事や生活を続けたことで、ウイルスが蔓延する事態を招いたといえるでしょう」

感染しても軽症で済むケースと重症化するケースがあります。その分岐点は、ウイルス感染のタイプにあると、花田先生はいいます。

「ウイルス感染には、『ウイルス単独』『ウイルスと細菌の混合感染』『ウイルス感染が終わった後の二次的な細菌性肺炎』の3型があります。コロナウイルスと、ウイルスのタイプは異なりますが、症状が酷似しているインフルエンザ肺炎では、100年前に流行したスペイン風邪で約5000万人、60年前にパンデミックを起こしたアジア風邪では100万人以上の方が命を落としました。多くの方が、ウイルス単独ではなく、細菌の混合感染や、二次性細菌性肺炎を起こして亡くなられたと推定されています。今回の新型コロナウイルスでも、この3パターンが当てはまっているように感じています」

混合感染や、二次性細菌性肺炎をより悪化させてしまうのが、体の味方である免疫が、暴走して突然敵にひるがえる現象です。

「新型コロナウイルスの重症化では、ウイルスから体を守るはずの免疫細胞サイトカインが過剰に作りだされ、正常な細胞までも破壊する『サイトカインストーム』現象が問題になっています。そして、サイトカインが暴走する原因こそが、歯周病菌の菌体成分であるLPS(エンドトキシン)という内毒素なのです」

歯周病菌がなぜ、新型コロナウイルスによる二次的細菌性肺炎につながるのでしょうか。

「スペイン風邪やアジア風邪の時代と違い、現代では、細菌性肺炎を抗生物質で容易に抑えられ、ウイルスに感染しても抗生物質を投与することで、一旦、危機を乗り越えられます。しかし、原則的に抗生物質は長期投与ができず、1週間ほど投与して中止となるため、投与をやめた後、ふつうなら肺を通過する細菌が、ウイルスで傷んだ肺の部分に定着し、症状がぶり返してしまうわけです。その細菌が一体どこからきたものか、現在、盛んに議論されています。腸内細菌に由来するLPSともいわれますが、生きた細菌が腸管から、肺に上がっていくのは容易ではありません。私は虫歯や歯肉炎といった歯周病が、LPSの発生源で、この毒素が、血液中に侵入して起こる歯原性菌血症だと考えています。口腔内で繁殖した細菌が肺に届く経路は、血管を経由して入るルートと、誤嚥によって直接肺房に入るルートの2通りあり、新型コロナウイルスに起因する二次的細菌性肺炎は、血管から入るルートを辿っていると思います」

細菌が虫歯の穴から血管の中に侵入

そして、口腔から血管へ細菌を送る入り口となるのが、虫歯の穴や歯の残痕です。

「歯の残痕からいきなり顎の骨にある血管へ、細菌が入るケースもあります。顎の骨には神経がなく、感染しても自覚症状はないのですが、食事でものを噛むたびに、知らぬ間にじわじわと、細菌が血管に入り込んでいくわけです。新型コロナウイルスに感染された2名の患者さんに関する報告があります。2名とも発症後40日経っても鼻腔からSARSコロナウイルスが消えず、いろいろと調べた結果、歯みがき習慣がないことに気づき、口腔ケアと歯みがきの指導をしたところ、50日で鼻腔からのウイルスが消滅し、退院できたといいます。歯みがきで、新型コロナウイルスの感染を防ぐことはできませんが、二次的な細菌性肺炎を防ぎ、重症化を予防することは可能だといえます」

LPSを血管に入れないためには、ルートとなる虫歯や歯肉炎を治療することが先決。そして、毎日歯みがきをすることで、二次的細菌性肺炎の予防になるというわけです。これからインフルエンザが流行る時季なので、感染すれば新型コロナと同様のことが考えられます。まずは口腔ケアをしっかりしていきたいですね。

【次回】新型コロナに負けないためにも虫歯・歯周病予防を!に続きます

お話を伺ったのは……

花田信弘先生
鶴見大学歯学部探索歯学講座教授
 
1953年福岡県生まれ。福岡県立九州歯科大学歯学部卒業、同大学院修了。米国ノースウェスタン大学博士研究員、九州歯科大学講師、岩手医科大学助教授、国立感染症研究所部長、九州大学教授(厚生労働省併任)、国立保健医療科学院部長を経て、2008年より鶴見大学教授。この間、健康日本21計画策定委員、新健康フロンティア戦略賢人会議専門委員、内閣府消費者委員会委員、日本歯科医学会学術研究委員会委員長を務める。現在、日本歯科大学、明海大学、東京理科大学の客員教授、長崎大学、新潟大学、東京医科歯科大学の非常勤講師、NEDO評価委員を併任している。

医師のインタビュー記事は、株式会社おいしい健康が運営するメディア「先生からあなたへ」でもご覧いただけます。
https://articles.oishi-kenko.com/sensei/

取材・文/安藤政弘 撮影/小山志麻 

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