コンビニやスーパーマーケットで、「高たんぱく」「たんぱく質プラス」「プロテイン」を謳った加工食品を目にしたことはありませんか? 今や空前のたんぱく質ブームが到来。
筋力の向上や体づくりを意識する人が増えてきていることが、たんぱく質ブームの背景にはあるようです。
たんぱく質は体内でどのような働きをするのか、どのくらい摂ればいいのかなど、管理栄養士の視点から解説します。
いつまでも若々しくいるために必要な栄養素
高齢者の低栄養が社会問題になっていることを、知っていますか?
厚生労働省公表、平成30年国民健康・栄養調査結果によると、65歳以上の低栄養傾向の方の割合は、男性 10.3%、女性20.3%。年齢階級別にみると、男女ともに85歳以上でその割合が高いことがわかっています。
年齢を重ねるごとに、代謝は下がっていきます。自然と食事量が減ったり、活動量が減ってくるものです。活動量などが減ると食事量=エネルギー摂取量もだんだんと減り、エネルギー摂取量が減っていくと、活動するために必要なエネルギーが摂れていないため、さらに活動量が減るという、負のスパイラルに。知らず知らずのうちに、低栄養になっていることがあるのです。
そうならないためにも、食事から必要なエネルギー量を摂ること、とりわけたんぱく質をきちんと摂ることが重要になってきます。
「たんぱく質といえば筋肉」というイメージはありませんか?
たんぱく質は体を構成する重要な成分の1つで、筋肉はもちろんのこと、皮膚や髪の毛、爪など、体のあらゆる部位を構成しています。
皮膚や髪の毛は見た目にも年齢が出やすいもの。また、いい姿勢を保つには筋力が必要です。いつまでも若々しくあり続けるためには、たんぱく質を含む食事と、適度な運動が欠かせないといえます。
1日に必要なたんぱく質量は50〜65g
たんぱく質の重要性がわかったところで、1日にどのくらい摂取すればいいのかを解説していきます。
厚生労働省公表「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、50〜64歳・男性の推奨量は1日65g、女性は1日50gとなっています。
これを1日3食とすると、50〜64歳・男性は1食約22g、女性は1食約16gになります。
*上記はあくまでも目安であり、体格や年齢、性別によって必要量は異なります
ちなみに、卵1個(50g)あたりのたんぱく質量は6.2g、鶏むね肉(皮なし)100gに含まれるたんぱく質量は23.3gになりますので、1食の中にたんぱく質を多く含む食品を1つは取り入れるといいでしょう。
また、魚類、肉類、大豆・大豆製品、卵を、1日の中で複数組み合わせることをおすすめします。献立を考えるときには、以下の3点を意識してみてください。
- 朝食に納豆や豆腐などの大豆・大豆製品、卵料理を取り入れ、不足分を牛乳・乳製品で補ってみる
- 昼食には鶏肉や牛肉、魚などを取り入れ、夕食には昼食に食べなかった種類のたんぱく質源を選んでみる
- 1日を通してたんぱく質が不足している場合は、間食にヨーグルトを摂ってみる
良質なたんぱく質が効率的に摂れる食品
たんぱく質は、魚類、肉類、大豆、卵、牛乳などに多く含まれています。けれど、食品によって“質”が異なります。たんぱく質の“質”は、「必須アミノ酸」の含有割合で決まります。「アミノ酸スコア」が100に近いほど、良質なたんぱく質といえます。
食品名(アミノ酸スコア)
精白米/うるち米(93)
小麦粉(56)
大豆(100)
鶏卵(100)
牛乳(100)
あじ(100)
牛肉・豚肉・鶏肉(100)
※2007年FAO/WHO/UNUから報告されたアミノ酸評点パターンより算出
肉類や魚類は、種類や部位によってはたんぱく質が豊富ですが、同時に脂質も多く含んでいる場合があります。肉類の場合は、脂身の多い肉よりも、低脂質なもも肉を使うなど部位を選んだり、脂身の部分や皮を取り除くと効率よくたんぱく質を摂取できます。網焼きにしたり、一度湯通しして余計な脂を落すなど、調理にひと工夫するのもおすすめです。
脂質量が少ない順に並べてみました
●鶏肉の部位
ささ身 < むね皮なし < もも皮つき < むね皮つき < もも < もも皮つき < 手羽元皮つき < 手羽皮つき < 手羽先皮つき
●豚肉の部位
ヒレ(赤肉) < もも(皮下脂肪なし) < かた(皮下脂肪なし) < もも脂身つき < ロース(皮下脂肪なし) < かたロース(皮下脂肪なし) < かた脂身つき < かたロース脂身つき < バラ
●牛肉の部位
ヒレ < もも(皮下脂肪なし) < もも脂身つき < かた皮下脂肪なし < かた脂身つき < リブロース(皮下脂肪なし) < リブロース脂身つき < サーロイン皮下脂肪なし < かたロース(皮下脂肪なし) < かたロース脂身つき < サーロイン脂身つき < バラ
※文部科学省公表、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より
魚類の場合は、タラやカレイなどは低脂質。ただし、魚の脂には血中脂質のバランスを改善するといわれている不飽和脂肪酸が多く含まれるため、青魚などの高脂質な魚もバランス良く食べましょう。
豆腐なら絹ごしより、木綿の方がたんぱく質が豊富です。
また、たんぱく質の代謝に関わるビタミンB群(特にビタミンB6)と合わせて摂ると、たんぱく質が体内で利用されやすくなります。ビタミンB6は、にんにく、まぐろやかつおなどの赤身魚、牛レバーなどに多く含まれますが、動物性食品の方が体内での利用率が高いといわれています。
元気に動ける今だからこそ、たんぱく質を必要量摂ることを習慣にして、いつまでも若々しく過ごしたいですね。
編集/おいしい健康編集部
監修/おいしい健康管理栄養士
株式会社おいしい健康
「誰もがいつまでも、おいしく食べられるように」という理念のもと、ITを活用したヘルスケア事業や生活メディア事業を展開しています。主なサービスとして、病気の予防・管理、ダイエットなどを目的とした管理栄養士監修のレシピ検索・献立作成サービス「おいしい健康」を運営。社内には、サービスの監修や向上にあたる管理栄養士が複数在籍しており、食や健康に関する情報をエビデンスに基づき正確にわかりやすく発信しています。
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