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マネジメント課題解決のためのメディアプラットフォーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。

はじめに

10月から下半期が始まるという企業も多いと思います。「今期こそチーム全員で成果を上げたい」と考えながら、前期と同じように未達のまま期末を迎えてしまう。そんな繰り返しに悩むリーダーは少なくありません。原因の多くは、メンバーの能力や意欲ではなく、期初に設定した目標そのものにあります。

本記事では、下半期にチームが迷わず動き、確実に成果を刈り取るための目標の立て方を、識学の観点から解説します。

下半期の成果は実は9月に決まる

秋は収穫の季節ですが、実りは収穫の時期の頑張りによって生まれるものではありません。何をいつ植え、どの状態まで育てるかを決めた時点で、その年の実りはおおよそ決まっています。組織もまったく同じです。下半期の成果は10月以降の努力量ではなく、9月にどのような目標を設定したかで大半が決まります。

期初に設定した目標は、その後の半年間、チーム全員の判断基準として機能し続けます。日々の業務のなかで「どちらの案件を優先すべきか」「今日はここまでで良いのか」を判断しているのは、上司ではなく現場のメンバー本人です。その判断の基準が曖昧であれば、メンバーは半年間ずれた方向に走り続けることになります。期末に気付いて軌道修正をしても、そのときにはもう時間が残っていません。

逆に言えば、目標設定はリーダーが半年分のマネジメントをまとめて先払いできる、最も費用対効果の高い仕事です。9月にこの時間を惜しんだリーダーほど、下半期の途中で細かな介入や叱咤激励に追われることになります。まずは、目標設定を「期初の事務作業」ではなく「半年間の成果を左右する意思決定」として捉え直すことから始めていただきたいと思います。

曖昧な目標が部下を迷わせる

未達に終わるチームの目標を確認すると、多くの場合「新規顧客の開拓を強化する」「顧客満足度の向上に努める」「業務効率化を推進する」といった表現が並んでいます。一見すると前向きで立派な目標に見えますが、これらはいずれも達成できたかどうかを判定することができません。識学では、こうした目標を「不完全結果」と呼んでいます。

不完全結果の何が問題かというと、部下が自分自身を正しく評価できなくなる点です。「強化する」という目標であれば、訪問件数が前期より1件でも増えていれば「やった」と言えますし、増えていなかったとしても「努力はした」と言えてしまいます。人は自分に対して甘い評価を下すものですから、判定の基準が曖昧な状態では、実際には大きな不足があるにもかかわらず「自分はやれている」という錯覚に陥ります。

そして厄介なことに、この錯覚は上司にも伝染します。部下から「頑張っています」「手応えを感じています」という報告が上がってくれば、上司も現状を問題視しません。両者が問題を認識しないまま数か月が過ぎ、期末になって初めて数字の未達が発覚する。多くの組織で毎期のように繰り返されているのは、この構図です。

識学では、成長を「できなかったことができるようになること」と定義しています。その出発点は、自分に何が不足しているのかを本人が正確に知ることにあります。曖昧な目標は、部下から成長の出発点そのものを奪ってしまうのです。部下思いのつもりで負荷の低い曖昧な目標を掲げることは、決して優しさではありません。

「完全結果の目標」を設定する

では、どのように設定すればよいのでしょうか。識学では「いつまでに」という期限と、「どのような状態になっているか」という状態、この二つが明確になっている目標を「完全結果の目標」と呼び、完全結果の設定を目標設定の絶対条件としています。

先ほどの「新規顧客の開拓を強化する」であれば、「3月31日までに、新規顧客との契約を12件獲得している状態」とすれば、完全結果の目標になります。「顧客満足度の向上に努める」であれば、「12月末までに、既存顧客の継続率を95パーセント以上にしている状態」と置き換えられます。達成したかどうかの判定に人の解釈が一切入り込まないのであれば、それは完全結果の目標だと言えます。

完全結果の設定がもたらす効果は、期限が近づくほど発揮されます。「12件」という状態が明確であれば、11月末の時点で4件しか獲得できていない部下は、誰に言われなくても自分の不足を認識します。上司が「もっと頑張れ」と発破をかける必要はありません。不足が見えれば、人は自分で対策を考え始めるからです。反対に、不足が見えていない部下にいくら精神論を投げかけても、行動は変わりません。

ここで一点、注意していただきたいことがあります。完全結果の設定を行う際に、部下から納得を得ようとしないことです。「この数字で納得できるか」と問えば、部下は当然低い数字を望みますし、達成できるかどうかは誰にも分からない未来の話ですから、事前に完全な納得を得ることは原理的に不可能です。納得は経験の先にしか生まれません。現場の事実情報はメンバーから集めるべきですが、最後に決めるのは責任を負っているリーダーの役割です。この順序を崩してはいけません。

期限までの現在地を確認し続ける

完全結果の目標を設定したら、リーダーの仕事は期限までの管理へと移ります。ここで重要なのは、行動のプロセスに細かく口を出すことではなく、「今どの位置にいるのか」を定期的に確認することです。

半年という期間は、放置するにはあまりに長すぎます。3月末の目標だけを置いて、月に一度雑談のような進捗確認をしているだけでは、気付いたときには挽回不可能な差になっています。四半期、月次、週次と期間を区切り、それぞれの時点であるべき状態を設定しておきましょう。「1月末までに8件」という中間の完全結果の目標があれば、そこで不足が出た時点で対策を打つことができます。

確認の場でリーダーがすべきことは、事実の確認と、部下自身に対策を考えさせることの二つです。「なぜできなかったのか」を分析させ、「次の期限までに何をするのか」を本人の口から言わせてください。上司が代わりに対策を考えてしまうと、部下は考えなくてよい状態に慣れてしまい、成長の機会を失います。加えて、現場の正確な情報も上がってこなくなります。

期末の完全結果の目標は、一度決めたら期末まで動かさないことが大前提です。

一方で、中間目標については、期の途中で修正しても構いません。ここで言う修正とは、期末に達成すべき目標そのものを引き下げることではなく、そこへ至るまでの通過点を置き直すことです。中間目標は期初に立てた仮説にすぎません。「1月末までに8件」という配分が妥当なのかどうかは、実際に走り出してみるまで誰にも分からないものです。実態と合っていないことが分かった時点で、より適切な数字に置き直し、残りの期間の精度を高めていけばよいのです。

ただし、置き換えた先も必ず期限と状態が明確な完全結果の目標でなければなりません。未達が続いたからといって「できるだけ早く」「可能な範囲で」といった曖昧な表現に戻してしまえば、部下は再び自分の不足を認識できなくなります。

まとめ

下半期の成果は、10月以降の頑張りではなく、9月の目標設定の精度によって大きく変わります。本記事の要点は、次の5点です。

1.下半期の成果は、期初の目標設定でほぼ決まる
2.曖昧な目標(不完全結果)は、部下から不足の認識を奪う
3.「期限」と「状態」が明確な完全結果の設定を徹底する
4.チームの目標は一人ひとりの完全結果の目標まで細分化する
5.中間の完全結果の目標を置き、期限までの現在地を確認し続ける

ご自身のチームの下半期目標を書き出し、「いつまでに」と「どのような状態か」が明記されているかを一つずつ確認してみてください。そのうえで、それが一人ひとりの目標にまで割り振られているかを点検してください。判定に解釈の余地が残っている項目があれば、それは10月以降にチームを迷わせる火種になります。

目標を明確にすることは、部下を厳しく縛ることではなく、部下が迷わずに動ける環境を用意することにほかなりません。迷いのない半年を過ごしたチームだけが、期末に確かな実りを手にすることができるのです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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