「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」の俚諺にあるよう、色、香り、そして味のどれをとっても我々に雅を感じさせてくれるお茶。茶の湯はそのお茶を本格的に楽しむと同時に、優雅なひとときをも約束してくれる。茶の湯の作法と楽しみ方を見ていこう。

茶の湯の作法と楽しみ方

安土桃山時代、俗に戦国時代とも呼ばれる時代に千利休によりその様式が大成されたと言われる茶道。茶室の中央にある窯からは湯気が湧き、傍らでは亭主が静かにお茶を点てる。その独特な雰囲気に思わず背筋が伸びてしまう。

京都にあるいくつかの茶室では、初心者でも茶の湯を楽しめるという。茶室に入る前には蹲踞と呼ばれる水を張った石の鉢と柄杓により手と口を清めよと教えられるが、これは寺社仏閣にある手水と理屈はほぼ同じ。これが済むと茶室への入室が許される。

また入室の際には躙口と呼ばれる茶室の入口から両手を軽く畳みにつけては正座の体勢で入るなど茶道ならではの作法があるが、この辺は体験会などであれば教授してもらえるだろう。

茶室に入ると亭主により茶が振舞われる。茶釜から柄杓によって掬われた湯は、抹茶の入った茶碗へと注がれていくが、この一連の所作は流れるようで柄杓の持ち方・腕の角度からも雅を感じる。

茶点ては亭主自らが行なってくれるが、体験会によっては自らの手で茶を点てることも可能。その際は湯の注がれた茶碗を片手に持ち、利き手に持った茶筅を50回ほど振ると口当たりのよい抹茶が点てられると覚えておこう。

茶菓子の作法

また茶の湯では事前に茶菓子が出されるが、これは点てられたお茶を飲む前に口にするのが正しい。季節によって種類は違えども「甘い」という点では共通しており、その理由は「抹茶の味を引き立たせる」ため。匠の手により作られた和菓子は見た目も美しく、まずは目で楽しみ、続けて抹茶の味と香りを楽しむことにより、身も心も満たされていく。

豆知識として覚えておきたいのが湯の温度。茶釜で湧かされている湯は100℃近いのだが、柄杓で茶碗に注がれることにより90℃近くまで下がり、茶筅で点てているうちにさらに下がって丁度飲みやすい温度になる。雅に振舞う亭主の一挙手一投足には、そのいずれにも理由があるのだ。

茶の湯の楽しみ方は抹茶を飲むだけにあらず。目で見て楽しみ、空気を楽しみ、所作の美しさを楽しむ。茶室という現世から離れた空間だからこそ感じられる雅を体験すれば、普段丸まりがちな背中も、気がつけばぴんと伸びていることだろう。

文/田中十兄

 

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