文/鈴木珠美

最後の1年は介護の日々。もしかしたら、ずっとペットロスなのかもしれません|【愛犬との別れ、ペットロス体験記】
愛犬が天国に旅立ち、辛いペットロスを体験した飼い主さん。それぞれどのようにペットロスと向き合ってきたのでしょうか。

【CASE2】最後の1年は介護の日々もしかしたら、ずっとペットロスなのかもしれません

小学校から17年ともに過ごした愛犬を亡くした智子さん(仮名)。ちょうど結婚する1年前のことでした。愛犬を飼うきっかけは、小学校のとき、智子さんが犬を飼いたい!、と熱望したことがはじまり。親戚の家で生まれた子犬を引きとることになりました。

小学校から帰ってくるとすぐに犬と散歩。食事や風呂場でシャンプーも担当しました。当時、両親が共働きだったこともあり、小学校、中学校は智子さんと4つ上の姉とお世話していたそう。

「家族旅行も犬と一緒に行ける場所。アルバムを見ると犬が中心。姉も私ももちろん、両親も。とにかくかわいがりましたね」

高校生になると部活動や塾通いがはじまり、小、中学生の頃のようには犬と一緒に長くは過ごせなくなりましたが、それでも散歩は交替で行い、犬と触れ合う時間はとっていました。さらに犬と過ごす時間が短くなっていったのは、大学、社会人となってから。このころは散歩もままならなくなり、散歩担当は両親が主だったそうです。

亡くなる前は家族総出で介護の日々
本当にやるべきことはやれたのか?

犬もシニアになり、少しずつ散歩の距離も短くなり、家でのんびりと寝ている時間が増えていきました。

「この子もすっかりおばあちゃんだもんね」
「15才だから、人間年齢で換算すると、80代だよ」

それから1年が過ぎ、少し認知症状が出てきて夜中に鳴くようになりました。視力も低下し、だんだんと寝ていることが多くなっていき、家族で交替して介護をする日々が始まりました。

「すでに愛犬は16才。シニアであることはもちろんわかっていたものの、……結局のところ、愛犬が弱っていく状態を目の当たりにして初めて、死んじゃったらどうしよう!!、という現実に立たされる。頭では理解しているんです、16才でしたから。でもずっとずっと長生きしてほしいと願っている。そんな1年が続きました」

仕事が終わると一目散に帰宅。智子さんは時間が許す限り愛犬に付き添いました。ときには会社を早退、有給休暇も愛犬と過ごす時間にあてました。そして1年が過ぎる頃、愛犬は偶然にも家族がみんな揃った日に眠るように亡くなったそうです。

「本当にちゃんと愛犬のためにやるべきことはやれたのか。まだ出来ることがあったんじゃないかと、毎日悲しくて自問自答する日々が続きました。心の準備もあったはずなのに、亡くなってからは、心がぽっかりと穴が空いたように無気力になってしまって。半年……1年くらいでしょうか。いわゆるペットロスの状態が続きました。動物病院の先生からは犬生を幸せにまっとうできたと思いますよと励まされたのですが、心の穴は埋まらなかったですね」

結婚し新しい家族ができ、愛犬がいなくなってから10年の月日が流れました。でもいまだに犬は飼えないという智子さん。

「飼いたいなとは思うんです。でも何となく踏み切れない。公園でお散歩している犬を見たり、友人の犬と遊ぶこともありますが、そんなときは愛犬のことを思い出して、ああ、あの子をぎゅぅっと抱きしめたいなって思うんですよね。いまだにぬくもりは忘れられません。もしかしたら、ずっとペットロスなのかもしれませんね」

文・鈴木珠美
カーライフアドバイザー&ヨガ講師。犬とドライブ、犬の健康づくり等、愛犬のための編集ライターとしても活動中。出版社を経て車、健康な体と心を作るための企画編集執筆、ワークショップなどを行っている。女性のための車生活マガジン「beecar(ビーカー)https://www.beecar.jp/ 」運営。

 

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