
出費を重ねてしまう人がいる一方で、自分でしっかりとお金を管理して貯金できる人の違いは何だと思いますか? 実は、お金をどう使うかは、そのときどきの感情や心理状態と結びついていることも少なくないのです。
本記事では、貯金ができる人とできない人の心理的な違いを整理しながら、自分を本当の意味で満たすお金と心の付き合い方をお伝えします。
お金の使い方は心の状態の表れ!?
一見すると「欲しいものを買った」「無駄遣いを我慢できた」だけと思える行動も、その根底には自分でも気づいていない感情の扱い方が深く関わっている可能性があります。お金の使い方は、単なる金額の増減ではなく、日々のストレスや欲求にどう対処しているかという行動の違いにもよるものなのです。
どのような心の動きが支出や管理の違いとなって表れるのか、2つの視点から整理していきます。
孤独や不安との向き合い方が違う
寂しさや日々のストレスを感じたとき、どのような行動をとるかによって、お金の使い方や貯金の額は大きく変わります。
心が満たされないとき、買い物による一時的な満足感でその穴を埋めようとする行為は、心理学で「代償行為」と呼ばれます。購入した瞬間の刺激や興奮によって、一時的に寂しさや不安を紛らわせることはできますが、根本的な原因が解決しているわけではありません。そのため、しばらくすると再び虚しさが襲ってきたり、散財に対する罪悪感を覚えたりして、また代償行為として次の買い物を繰り返してしまうという悪循環に陥りやすくなります。
一方で、お金を安定して管理できている人は、自分が孤独や不安を感じていることに気づいたとき、買い物以外の方法で心を落ち着かせています。これは意識的な場合もあれば、無意識の場合もあります。
散財以外の例としては、温かい飲み物を飲んで一息つく、静かに本を読む、信頼できる人に話を聞いてもらうなどが、お金をかけずに感情を整える手段です。このような手段を持っているため、衝動的な支出を回避できているのです。
情報や他人の目線に対する意識が違う
他人との関係性や、周囲から入ってくる情報に対する姿勢も、支出に大きな影響を与えます。
世間の流行やお買い得な情報、SNSで見かける他人の華やかな暮らしに触れたとき、「自分も手に入れないと損をするのではないか」「置いていかれるのではないか」と焦りを感じて購入を決めてしまうことがあります。ここには、多くの人が選択しているものや流行に乗らなければと不安になってしまう「バンドワゴン効果」と呼ばれる心理が働いています。
周囲の動向に流されやすい状態にあると、自分の価値基準ではなく他人の目や比較による安心感を得るためにお金を使い、結果として手元の資産を徐々に減らしてしまうことになります。
一方で、自分の価値観や基準が明確になっている人は、周囲でどれほど魅力的な情報が流れていても、惑わされることはありません。他人の暮らしや世間の評価と比較して安心を得ようとするのではなく、自分にとって本当に必要なものか、心から価値を感じられるかを優先して判断できるため、無駄な出費に振り回されずに済むのです。
お金が貯まる人になるための心の整え方
衝動買いなどを抑え、無理なくお金を管理できるようになるためには、単に節約のテクニックを覚えるだけでなく、自分の心と向き合う習慣をつくることが大切です。感情の波に振り回されず、穏やかな状態を維持してお金と付き合うためのポイントを解説します。
1.感情の引き金に気づく習慣をつくる
無駄遣いを防ぐ第一歩は、自分がどのような感情になったときにお金を使いたくなるのかというパターンを知ることです。
イライラしたとき、仕事で疲れたとき、あるいは漠然とした不安を感じたときに買い物をしたくなる場合、お金を使うことは感情を紛らわせるための行動になっているということにまずは気づいてください。
そして次に、予定外の買い物をしたくなった瞬間に「今、自分はどんな気持ちなのだろうか」と立ち止まり、自分の感情を客観的に観察するクセをつけることです。例えば、「イライラを解消したいだけかもしれない」「疲れていて手軽にスッキリしたいだけかもしれない」と心の中で言葉にしてみたり、胸のざわつきに意識を向けたりしてみます。そうやって自分の状態を冷静に捉えることで、感情に流された衝動買いを未然に防ぐことができます。
2.お金を使わないストレス解消法をつくる
お金を使わずに心を落ち着かせる自分なりの方法を、あらかじめつくっておくことも効果的です。
心が波立っているときに使える代替手段がないと、手軽に快感を得られる買い物に頼りがちになります。その手段とは、例えば、温かいお茶を飲む、軽く散歩をする、好きな音楽を聴く、ノートに気持ちを書き出すなど、日常の中で手軽にできることがおすすめです。
お金をかけずに心を整える選択肢を増やしていくと、自然と衝動的な支出に頼る機会は減っていきます。
3.物欲と上手に付き合う仕組みをつくる
ストレスや感情の乱れとは関係なく、純粋に「これが欲しい」という気持ちから買い物をしたくなることも当然あります。物欲自体はごく自然な感情であり、無理に押し殺す必要はありません。大切なのは、欲しい気持ちを否定するのではなく、納得して購入できる仕組みを持っておくことです。
物欲が湧いたときは、すぐに購入せず「3日間だけ待ってみる」といった冷却期間を設けてみます。時間を置いても欲しい気持ちが変わらなければ、それは自分にとって価値のある買い物です。
また、毎月の予算の中に「自由に使っていいお金」をあらかじめ設定しておくことで、ストレスや罪悪感を抱くことなく満足感を得られるようにもなります。
具体例:買い物がやめられなかったEさんのケース
ここでは、プライバシーに配慮し、複数の事例を統合・再構成したモデルケースをご紹介します。
都内の会社に勤めるEさんは、連日の残業や職場の人間関係で強いストレスを感じていました。夜遅くに帰宅する途中、疲れや漠然とした虚しさを紛らわせるようにオンラインショップを開いては、服やインテリア雑貨を次々と注文する日々が続いていたと言います。
注文した瞬間や、届いた箱を開けて品物を手に入れたときは胸が躍り、心が満たされる感覚があったそう。しかし、そうして手に入れた物に囲まれた生活も数日が経つと高揚感は消え去り、やがて届くクレジットカードの利用明細の金額を見ては、深い罪悪感と自己嫌悪に苛まれるという悪循環を繰り返していたとのこと。
転機となったのは、毎月のカード支払いが追いつかなくなり、いよいよ足りない分を補うために消費者金融へ申し込まざるを得なくなったときです。一度も使っていない服や未開封の雑貨が部屋に溜まっている現実と、借金してまで買い物をしようとしていた自分の状況に愕然とし、藁にもすがる思いで区が実施している無料のお悩み相談窓口を訪ねます。
相談員との対話を通して自身の行動を振り返る中で、Eさんは本当にその品物が欲しいから買っているのではなく、仕事の疲れや孤独感を紛らわせたいからお金を使っていたのだという事実に初めて気づくことができました。
それからはまず、夜遅くの帰宅途中にスマホで通販サイトを開く癖を断ち切るため、お気に入りのサイトからクレジットカード情報の保存を削除しました。買い物の画面に進むまでに手間がかかる状態をつくったのです。そして画面を開きたくなったときには「今、職場での苛立ちを買い物で消そうとしていないか」とスマホのメモ欄に今の気持ちをそのまま打ち出すように。さらに、お金を使う代わりの習慣として、お気に入りのラジオ番組を聴きながら10分間だけストレッチをする夜のルーティンをつくりました。最初は物足りなさを感じる夜もあったものの、少しずつ心が落ち着く感覚を掴んでいったと言います。
心地よくお金を使うために
お金の使い方は単なる計算や節約の技術ではなく、日々のストレスや不安、孤独感といった心の状態と深く結びついています。
大切なのは、無理に欲しい気持ちを押し殺すことではなく、自分がどのような感情からお金を使おうとしているのか、そのパターンに気づくことです。
自分の心理状態を正しく把握できるようになれば、不必要な支出はおのずと減り、本当に自分を満足させるものだけにお金を使えるようになっていきます。
文・構成/藤野綾子
精神保健福祉士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定II種の資格を持つ。大学に通い直し、心理の国家資格取得に向けて勉強中。教育施設、就労移行施設などでカウンセラー研修、実務も続けている。











