
「楽しみにしていた年金の支給日! でも、いざ口座の振込額を見てみたら、思っていたより少ない…」そんな経験はありませんか?
実は、現役時代の給料と同じように、年金からも税金や社会保険料が天引きされています。何がどれくらい引かれているのか分からないと、「国に多く取られているのでは?」と不安になってしまいます。今回は、年金から差し引かれるものの正体や、人によって金額が違う理由、そして自分の「実際の手取り額」を正しく確認していきます。
100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、LIFEBOOK(R)を提唱する、独立系ファイナンシャルプランナー藤原未来がわかりやすく解説します。
年金から引かれるものは何?
年金生活が始まると、現役時代とはお金の引かれ方の仕組みが少し変わります。まずは、額面と手取りの違いや、具体的に何が引かれるのかの全体像を掴んでいきましょう。
年金の「額面」と「手取り」は違う
年金における「額面」とは、国から支給される本来の年金総額を指します。一方、「手取り」は、そこから税金や社会保険料が差し引かれ、実際に銀行口座に振り込まれる金額です。天引きされる割合は人によって異なりますが、税金や社会保険料が差し引かれるため、額面より少ない金額が振り込まれます。
年金から引かれる主なもの一覧
年金から天引きされるものは、大きく分けて「税金」と「社会保険料」の2グループ、主に4つに分けられます。
<図表1>年金から天引きされる項目と特徴

すべての人が同じ金額を引かれるわけではない理由
引かれる金額は「前年の所得」「お住まいの自治体(税率や保険料率)」「家族構成(扶養家族がいるか)」などによって、一人一人の状況に応じて計算される仕組みになっています。
年金から引かれる税金
ここからは、引かれる項目の一つである「税金」について詳しく見ていきます。
年金にも税金がかかる場合がある
「年金は老後の生活費だから税金はかからない」と思われることもありますが、日本の税法上、年金は「雑所得」という収入の一種として扱われるため、税金の対象となる場合があります。
所得税が引かれる人・引かれにくい人
「基礎控除」や「公的年金等控除」があるため、一定額までは公的年金等控除や基礎控除などが適用されるので、所得税がかからない人もいます。目安として、扶養親族等申告書を提出している場合は、年金額が以下の基準以下の人は所得税がかかりません。
・65歳未満:年間の年金受給額が164万円未満のケース
・65歳以上:年間の年金受給額が214万円未満のケース
※扶養親族等申告書を提出している場合の目安です。
これらはあくまで目安であり、基準を超えた場合でも、各種控除を差し引いた課税所得に応じて所得税が計算されます。※令和8年6月17日時点
令和8年分の公的年金における源泉徴収額の計算に用いる基礎的控除額は引き上げられており、次の表のとおりとなっています。
<図表2>令和8年分の公的年金における源泉徴収額の計算に用いる基礎的控除額

基礎控除が引き上げられたことで、扶養親族等の所得要件も改正されました。
<図表3>扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件

住民税が年金から引かれる仕組み
住民税は、お住まいの市区町村に納める税金です。原則として住民税が課税される人で、一定の要件(65歳以上・年金18万円以上など)を満たす場合は年金から特別徴収されます。
非課税世帯の場合はどうなる?
収入が一定以下で、家族全員の住民税がかからない世帯を「住民税非課税世帯」と呼びます。この場合、年金から住民税が引かれません。また、多くのケースでは所得税も課税されませんが、株式の譲渡所得や不動産所得がある場合など、所得の内容によっては課税される場合もあります。
社会保険料はどのくらい引かれる? 介護保険料・医療保険料を確認
税金と同様に、手取り額に影響を与えることが多いのが「社会保険料」です。
介護保険料はいつから年金天引きされる?
介護保険料は40歳から払う仕組みですが、65歳になると納め方が「年金からの天引き」へと順次切り替わります。ただし、65歳になった当月からいきなり引かれるわけではなく、自治体の準備が整うまで(半年〜1年ほど)は、一時的に納付書や口座振替で自分で払う期間が生じます。その後、自動的に年金天引きが始まる流れです。
国民健康保険料・後期高齢者医療保険料との違い
自営業や退職後に会社の健康保険を脱退した人は、国民健康保険に加入しているケースが一般的です。しかし、75歳になると全員が「後期高齢者医療制度」という別の仕組みに移ります。どちらも年金から天引きされる医療保険料ですが、75歳を境に、保険料の計算方法や窓口での負担割合の基準が変わります。
75歳以上になると何が変わる? 後期高齢者医療制度の注意点
75歳になって後期高齢者医療制度に切り替わると、それまで会社員の子供の扶養に入っていて「自身の保険料負担が0円」だった人でも、全員が独立した加入者となり、自分の年金から保険料が引かれるようになりますが、所得に応じて軽減措置が適用される場合があります。「急に手取りが変わった」と驚かないよう、事前にこの仕組みを把握しておくことが大切です。
「引かれすぎ」と感じるときに確認したいこと
「今月、なぜかいつもより多く引かれている気がする……」と感じたら、以下の点を確認してみると原因が分かるかもしれません。
1.前年の所得の変動:前年に不動産を売却した、パートでの収入が増えたなどの理由で所得が増えると、翌年の税金や保険料が高くなる場合があります。
2.天引きの調整時期:保険料は10月などに金額の見直しや確定が行われるため、時期によって引かれる額にバラつきが出ることがあります。
年金から引かれる金額はいくら? 手取りの見方
では、実際にご自身の手取り額がいくらになるのか、確かめる方法を整理します。
「いくら引かれるか」は年金額・所得・自治体で変わる
天引きされる額は全員一律ではありません。特に介護保険料や国民健康保険料は、「物価や医療費の状況」などによって自治体ごとに保険料率が異なるため、住んでいる場所によって差が生じる場合があります。
夫婦で引かれる金額が違う理由
「夫と妻で、引かれている社会保険料の割合が全然違う」というケースはよくあります。これは、それぞれの年金額や所得、加入している医療保険制度などが異なるためです。
年金振込通知書・公的年金等の源泉徴収票の見方
毎年6月頃に日本年金機構から届く「年金振込通知書」を確認することで、1回あたりの振込額(手取り)が分かります。
・「額面」(支給額)から、記載されている「所得税」「住民税」「介護保険料」「健康保険料」の各金額を差し引いた結果が、一番右側にある「差引支給額」(=手取り)です。
・また、1月に届く「源泉徴収票」は、1年間でトータルいくら引かれたかの証明書になります。

シミュレーションで手取りを確認するときの注意点
厚生労働省のサイトにも公的年金シミュレーターがあり、受給額の目安を確認できますので、実際に試算してみるのもいいでしょう。ただし、本来の年金制度の仕組みを簡単にして計算しているため、実際に受け取る金額とは違う場合がありますので注意してください。
よくある疑問Q&A
最後に、多くの方が抱きやすい疑問に一問一答でお答えします。
年金から引かれるものは毎年同じ?
毎年変わる可能性があります。あなたの前年の収入が変われば税金や保険料も変わりますし、収入が変わらなくても、自治体が保険料率の改定を行えば、引かれる金額は変動します。
介護保険料はなぜ年金から引かれる?
確実に保険料を回収し、高齢者の方の手間を省くためです。高齢になると、毎回銀行やコンビニに納付書を持っていくのが大きな負担になります。また、払い忘れを防ぐ意味でも年金から引かれます。
後期高齢者になると手取りは減る?
人によりますが、減るケースもあります。75歳になって現役並みの所得があると判定されたり、それまで家族の扶養に入っていたりした場合は、新しく保険料の天引きが始まって手取りが減ることがあります。
夫婦の年金からそれぞれ引かれるのはなぜ?
社会保険や税金は、原則として「個人ごと」に計算されます。夫婦であっても、年金はそれぞれが納めてきた個人の権利です。そのため、お互いの年金口座から、それぞれの所得に応じた税金や保険料が別々に差し引かれます。
まとめ
まずは毎年6月に届く「年金振込通知書」を保管し、何にいくら払っているのかをご自身の目で一度確認してみることから始めてみてください。お金の仕組みを正しく知っておくことが、安心な老後生活への確かな第一歩です。
さまざまな金融商品が出回っている世の中だけに、あなたの味方になって守ってくれる信頼できる相談相手を持つことも大切な時代になっています。ご自身のライフプランを考えるときには、生命保険や金融商品の販売をせずに中立的な立場からコンサルティングに徹する独立系のファイナンシャルプランナーへの相談をお勧めします。
●構成・編集/京都メディアライン(HP:https://kyotomedialine.com FB:https://www.facebook.com/kyotomedialine/)
●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)

株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
株式会社SMILELIFE project(https://www.smilelife-project.com)











