
この1年ほど、“おぢアタック”という言葉がニュースやSNSを賑わせている。この言葉は、男性が、10歳以上年下の女性に、食事や遊びに誘うことを揶揄したスラングだ。使われ始めたのは、2025年夏ごろ。結婚相談所やマッチングアプリで、35歳以上の男性が年の離れた若い女性に、見合いやアプローチをする行為をいい、一気に広まった。
晴美さん(62歳)は「定年直後、私は“おばアタック”をしていましたね」と苦笑する。彼女は生活資材を扱う企業で、新卒から38年間勤務し、1年前に定年退職したが、その直後メンタルのバランスを崩した。
彼女は、有名女子大卒業後、就職し5年目に男女雇用機会均等法の黎明期に総合職で仕事を続けた。仕事はハードで、セクハラの嵐のなか、「私は特別」という仕事への自信と共に生きてきた。
【これまでの経緯は前編で】
恋愛はしたが、結婚しなかった理由が今ならわかる
晴美さんは総合職の仕事をしていた時代に、学生時代の友達を失った。夫や義実家、子供や住宅ローンの話ばかりをする彼女たちを見下してしまったのだ。関係は自然に疎遠になり、消えてしまったという。
「恋人もそうです。“男に負けてたまるか”という気持ちがあり、いつも相手と私を比べていたのですから、長続きはしませんよね。恋愛はたくさんしました。アメリカやフランスの男性と交際していたこともあります。私、自分の意見をはっきり言うから、海外の人からモテていたんです」
若い頃の晴美さんがパートナーに求めていたのは、お互いを高め合う関係性だったという。
「新しい知識や世界を見せてくれる人が好きでした。私は仕事もしていたけれど遊んでもいたので、出会いはたくさんありましたよ。“三高(高身長・高収入・高学歴)でなければ、男ではない”くらいの感覚でした。本当に傲慢だったんですよね」
思念はなぜか相手に伝わってしまうものだ。「この人なら結婚してあげてもいい」と思っても、そこまで至らなかったという。
「交際していた男性が、私と別れた後に、容姿も能力も自分より劣る女性と結婚していくことは、正直悔しかった。私が40歳くらいの頃にSNSが広まってきて、元彼たちからも友人申請が来て、繋がったりしました。でもみんな風貌が変わっていて“こんなにオジサンになるなら、結婚しなくて良かった”と思いました。
ただ、SNSは日々の生活も伝えてきます。元彼たちの家族旅行などのイベント、子供の受験合格など、家族がいる人の人生がその頃からうらやましく感じました。“私が毎日一人の生活を繰り返している間、この人たちは家族の関係を積み上げていったんだ”と孤独を感じてしまうのに、見ることがやめられない……。それでも、最終的には“私には仕事があるから大丈夫だ”と思いこんでいたのです」
疎遠になっていた大学時代の友人からの申請はなかったという。
「私は関係を切られた側だからいつまでも覚えているけれど、向こうは私の存在を忘れているんでしょうね。私も悔しいから、こちらから検索したことはありません」
仕事をしていると40歳からの20年はあっという間だ。気がつけば定年のカウントダウンが始まっていた。
「私は課長止まりだったのですが、その頃から会社の定年研修みたいなものが始まります。趣味やコミュニティ作りについてなど、心構えと実践方法を教えてくれるけれど、ピンと来ないんですよ。数年先のことなのに、遠い未来に思ってしまう。38年間通ってきた会社を離れることの想像がつかなくて」
晴美さんは、個人的に貯めていた老後資金もあり都内にマンションも買っている。再雇用は考えなかったという。
「同期は20人。子会社の社長とか役員ができるのは、男性ばかり。女性はお情けで雇っていただいているような仕事しかなくて。それなら潔く、スパッと去るのが私らしいと思いました」
【定年して気づいた、極度の仕事依存……次のページに続きます】











