取材・文/鈴木拓也

画像はイメージです。

総務省の調査によれば、2023年時点での空き家の数は約900万戸。全住宅のおよそ7軒に1軒が空き家というから驚きだ。

放置された空き家は、外壁落下や倒壊、悪臭や害虫の近隣被害、犯罪拠点としての悪用など様々なリスクの温床となりえ、社会問題となっている。

サライ世代なら、親から継いだ誰も住まない実家のことで悩んでいる方も、少なくないだろう。ただ、一つ言えるのは、「とりあえず、そのままにしておく」という考えは悪手だということ。上記のリスクだけでなく、固定資産税や都市計画税が増大するといった金銭的な負担も発生しうるからだ。

有効な解決策の一つが売却。これなら、物理的に手が離れ、お金も入って言うことなし。しかし、「何の知識もなく不動産会社に飛び込んで売却をお願いするのは危険」と言うのは、一般社団法人不動産売却支援機構の代表理事、山中英紀さんだ。

山中さんによれば、実家を売って後悔する人の大半は、不動産会社に全部お任せというスタンスだったという。後になって、「本当は別の選択肢もあったのではないか」という、モヤモヤした気持ちに付きまとわれることに…。

そこで山中さんは、必要な知識を網羅した書籍『先送りして後悔しない 実家の売り方、準備の仕方がぜんぶわかる本』(新星出版社 https://www.shin-sei.co.jp/np/isbn/978-4-405-10466-2/)を世に出した。

では、どんな知識・準備が必要なのだろうか。その一部を紹介しよう。

大手の不動産会社だから安心とは限らない

ほとんどの人にとって、実家の売却は、一生に一度あるかないかのことだろう。だから、いざ売却となった時、右も左も分からないのは当然のこと。

山中さんによれば、まず把握すべきは「おおまかな流れ」。実家の相場価格の調査に始まり、引き渡すまでの流れは、以下のようになる。

実家を売却するまでの流れ(本書53pより)

初動できわめて重要なのが、不動産会社探し。不動産会社は全国に約13万社あり、選択の基準がないと、いたずらに迷ってしまう。

最初のポイントは、売却に力を入れている不動産会社かどうかの見極めだ。そこで、不動産会社のホームページを見て、家を売りたい人向けの内容になっているかを、まず確認。例えば、不動産の売却実績や売主に役立つ情報が掲載されているかをチェックする。

また、その不動産会社を利用した人の評判も参考にする。山中さんは、Googleマップのクチコミ欄のチェックをすすめる。クチコミはそれなりの数があるか、コメントの内容に具体性があるか、評価点に著しい偏りがないかを見る。ただ、ポジティブな口コミがたくさんあるからというだけで、その会社に決めるのは早計だ。最終的には、その営業窓口と面談した上で判断する。

不動産会社選びで注意したいのは、「大手だから安心」とは限らない点だ。もちろん、大手は、実績に基づいた安心感や信頼感がある。他方、1人の営業担当が多くの物件を担当しているため、こちらが売りたい実家に対して、時間をとって対応してくれないかもしれない。また、営業ノルマを達成すべく、利益重視で契約に持ち込もうとしてくる可能性もある。これが中小の不動産会社の場合、地域密着という地の利があり、親身に応じてくれるといったメリットがある。この点については、どちらが絶対良いと言うことはなく「一長一短」。営業担当が優秀かどうかも判断材料にして、見極めよう。

完全に任せっぱなしにはしない

不動産会社が決まっても、売主本人がすべきことは少なくない。例えば、親が亡くなった後に実家を売る場合、名義が親のままだと売却はできない。そこで、名義を相続人の名前に変更する手続き(相続登記)が必要となる。

他にも、登記識別情報通知書、固定資産税納税通知書、印鑑証明書、建物図面なども、不動産会社に依頼する時点で用意しておかねばならない。さらに売買契約時までに、亡くなった親の戸籍謄本、遺産分割協議書、抵当権抹消書類といった書類も必要になってくる。この中には、ケースに応じて実際は不要であったり、省略できる書類もある。そのあたりの情報は営業担当に聞いてみるとよいだろう。

必要書類を提出し、不動産会社と契約したら販売活動がスタートする。

例えば、専任媒介契約をすると契約から7日以内に物件の情報をレインズ(全国の不動産会社間で共有できる物件サイト)に登録、SUUMOなどの不動産情報サイトへの登録、自社のホームページへの掲載、チラシの配布など、実家を売るために様々な活動をしてくれます。また、2週間に1回以上は、担当者から売主のあなたに販売活動の内容と経過、問い合わせ件数などの報告がメールなどで送られてきます。
(本書94pより)

至れり尽くせりだからといって、完全に任せっぱなしにするのは禁物。活動内容に疑問点があれば相手に尋ね、問い合わせ件数が少なければ今後の戦略を相談するなど、イニシアチブをとることも必要だ。

気になる売却までの期間だが、中古住宅の場合、買主が現れるまで約3か月が目安。なので、それまでの期間は焦らないことが肝心。もし、3か月を過ぎても反響が思わしくなければ、売り出し価格も含め、販売戦略を見直す必要があるかもしれない。山中さんは、「売れるまで1年以上かかる場合もあります」と述べている。条件を下げてでも短期決戦でいくか、長期戦で頑張るかの判断も重要だ。

売買契約の前後にもすべきことは多い

めでたく購入希望者が現れた後の手続きについても、本書で詳しく解説されている。

手始めに購入申込書が届く。そこには、購入希望価格、手付金の額、住宅ローンの利用、引き渡し日など、買主からの様々な条件が記されている。価格交渉が生じることもあるが、それは互いの不動産会社の担当者同士を通してなされ、売主と買主が直接交渉することはない。

そうした条件を詰めていき、合意に達したら売買契約へ。ここで、上で触れたようなさまざまな書類を用意しなくてはいけない。さらに、(法律上の作成義務はないが)提出したほうが望ましい書類として物件状況報告書、付帯設備表というものがある。前者は、「雨漏りやシロアリ被害、給排水管の状態、リフォーム履歴などを記載」したもので、後者は、「家に残す設備内容(照明器具など)や、その不具合の有無を記載した」ものである。これらには引き渡し後に、「契約で約束した状態と違うのではないか」と、指摘されるリスクを減らす目的がある。書類自体に売主責任を問われる表現が紛れ込むことのないよう、作成したら不動産会社に事前確認をとろう。

買主と売主が顔を合わせるのは、売買契約を締結する当日である。この時、不動産会社の担当者と宅地建物取引士が同席する。売主は物件状況報告書と付帯設備表を提出し、内容の説明を行い、宅地建物取引士からは重要事項の説明がなされる。その後で、売買契約書に記名・捺印となり、売主は手付金を受け取る。

それらの手続きが無事済んだら、売主は不動産会社に仲介手数料を支払うという流れになっている。そう、売主は、支払いもあることを忘れてはならない。事後の決済に立ち会った司法書士への報酬、国に払う譲渡所得税など含め、負担は多岐にわたるので、事前にどれぐらいかかるのかはしっかり把握しておこう。そうした点についても本書では、漏れなく解説されている。「よく知らなかった」で後悔しないためにも、しっかり読んで理解しておきたい。

【今日の専門知識を高める1冊】
『先送りして後悔しない 実家の売り方、準備の仕方がぜんぶわかる本』

山中英紀監修
定価1870円
新星出版社

取材・文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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