腰痛で病院に行っても「骨に異常なし」と診断され、湿布・痛み止めといった対症療法、あるいは「年齢のせい」といった対応をされる。この痛みを抱えたまま何年も過ごすしかないと、慢性腰痛に悩まされる多くの人が諦めてしまっているのではないでしょうか。

理学療法士で「痛み改善」のスペシャリスト・松田圭太さんによると、その考えは古いといいます。日々進化する医学によって、腰痛の原因の研究も進み、治療法もアップデートされています。

松田さんの著書『腰痛は医者には治せない:2人に1人が「筋肉」「関節」が原因!理学療法士の神ワザ治療』(小学館)では、病院(画像診断)では見つけられない腰痛の本質的な原因と、本気で完治を目指すための具体的なメソッドを提示。理学療法士として医療現場の最前線で患者と向き合い続けてきた松田さんの経験と、最新の医学的エビデンスに裏付けされた完治を目指す治療法が紹介されています。

そこで、今回は『腰痛は医者には治せない』から、なぜ薬では腰痛が治らないのか、一般的な薬の効果についてご紹介。腰痛を治すためには薬だけでは難しいことがわかります。

指導/松田圭太

薬で腰痛は治らない…?

薬が効くのは「原因がわかる病気」

「薬で腰痛は治らない」なんて言ったら、怒られるかもしれません。でも、これは私の実体験や現場での感覚、そして今の医療のガイドラインに基づいた結論です。なぜ薬では腰痛が根本的に治らないのか? について説明しましょう。

薬が効果的に働く場合もあります。がんの抗がん剤、インフルエンザに効く「タミフル」、細菌感染に効く抗生剤など。これらは「原因」が特定されるので、治療法も明快。だから薬も的確に処方されて、効果を発揮します。原因がはっきりしている病気に対して、薬は非常に強い武器になります。

それに対して腰痛はどうでしょう? これまで述べたように、レントゲンを撮っても「異常なし」、MRIを見ても「特に問題なし」と言われることが珍しくありません。もし異常があったとしても、そこが原因かもわからない。腰痛の場合、検査をしても「特定できる原因」が出てこないことが多い。だから薬を出すにしても、痛みを一時的に抑えるだけの対症療法になってしまうのです。

痛みはどうやって起きるのか?

そもそも痛みとはなにか。痛みの伝わり方は、体の3つの段階で処理されます。

段階1 刺激が起きる(皮膚・筋肉・関節などの痛みを感じる組織)
段階2 末梢神経から中枢神経を通って脳へ刺激が送られる
段階3 脳が「これは痛い」と認識する

つまり、「痛みを感じるかどうか」は脳が決めています。同じ刺激でも、なんだかわからない怖い状況(お化け屋敷など)では強く痛く感じるし、スポーツに夢中になっているときは感じにくいもの。これは脳の「認知の違い」です。これは非常に大事なことで、痛みを「心の痛み」と「体の痛み」に分けるべきだと私は考えていて、そのような治療法を心と体に対して行っています。

痛み止めは一時的に効くものです

話を元に戻しますと、痛み止めは先の3段階のどこに効くのか。代表的な痛み止めを例に、作用ポイントを解説しましょう。

「ロキソニン」などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
段階1障害に効果的。体の中の痛みを感じる「炎症物質(プロスタグランジン)」がつくられるのを抑える。

「リリカ」などのプレガバリン(神経の興奮を抑える薬)
段階2障害に効果的。神経が原因で起きる“ビリビリ・ズキズキする痛み”(神経障害性疼痛)を抑えるのに特化し、痛みの強弱の程度は関係ない。

「トラムセット」などの弱オピオイド鎮痛薬
段階3障害に効果的。病院で処方される一番強い痛み止め。神経痛や慢性痛にも有効で、痛みを脳・脊髄レベルで抑える薬。脳を麻痺させて、脳で痛みを感じにくくさせる。

ブロック注射(局所麻酔薬)
段階2障害に効果的。末梢神経に作用し、痛みの伝わりを一時的に遮断する治療。炎症を抑える目的でステロイド薬を混ぜることもある。

それぞれが「痛みの通り道」にあるステップにアプローチしているのがわかりますよね。しかし、どれもが一時的に脳が痛みを感じにくくしているだけのこと。

皆さんが求めていることは、うまく自分の痛みと付き合いながら、根本治療をすることですよね。薬で治すことは短期的な解決法でしかないのです。2021年発行『慢性疼痛診療ガイドライン(厚生労働省推進事業)』でも、薬は短期的な効果は認められるが、長期的な服用は避けるべきと記されています。(※)

(※)慢性の痛み政策研究事業研究班(厚生労働省委託).慢性疼痛診療ガイドライン2021.厚生労働省,2021.

*  *  *

『腰痛は医者には治せない:2人に1人が「筋肉」「関節」が原因!理学療法士の神ワザ治療』
著者/松田圭太
小学館 1760円(税込)

松田圭太(まつだ・けいた)
理学療法士、整痛院ふっか総院長、慢性疼痛徒手技術「MSMメソッド(R)」指導者。
理学療法士として医療現場に長年携わった経験から、慢性腰痛・肩の痛みなど“3年以上続く痛み”に特化、運動療法と認知行動療法を組み合わせた「整痛院ふっか」を立ち上げる。医療機関や整体に通っても改善しなかった人が国内外から来院、のべ5万人を施術。さらに全国の医師・理学療法士・柔道整復師・整体師などの治療家が学ぶ慢性疼痛に特化した治療技術「MSMメソッド(R)」をのべ6万人に指導。科学的根拠(エビデンス)に基づいた運動療法と徒手療法を統合した独自アプローチは、整形外科クリニックのリハビリにも導入されている。自身が校長を務める、日本最大級の疼痛治療家コミュニティ「疼痛治療カレッジ」には4000名以上のプロの整体師・マッサージ師などが参加。治療家の間では「先生の先生」と呼ばれる。その医療福祉分野での活動が評価され、2025年「東久邇宮文化褒賞」を受賞。今春、初の著書『腰痛は医者には治せない』を上梓。株式会社Medical Book Japan代表。「MSMメソッド」は株式会社Medical Book Japanの登録商標です。

 

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