皆さんは、漢方薬と聞くとどんな印象がありますか? 「苦いけど体によさそう」「葛根湯は知っているけど……」など、「そもそも漢方ってどんなもの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そんな基本的な漢方に関する疑問や基礎知識を、漢方の専門家にわかりやすく解説してもらいます。 第33回のテーマは、「腸に効く漢方薬」です。あんしん漢方(オンラインAI漢方)の薬剤師、竹田由子さんに教えてもらいました。
重要な「腸の働き」
腸は、胃と肛門の間にある消化器官のひとつです。小腸と大腸あわせて8メートル以上にも及ぶ器官で、「第2の脳」や「人体最大の免疫器官」とも呼ばれ、健康の要といえるものです。
生きていくうえで必要な栄養素を吸収するほか、体内に入ってきた病原から身を守るのも腸の役割です。今回は、そんな重要な器官である腸の働きについて解説します。また、不調になった腸の働きを改善し、サポートする漢方薬もあわせてご紹介します。
1.消化・吸収
消化と吸収は、腸の重要な仕事のひとつです。小腸は食物を吸収し、消化を行います。そして、大腸は消化吸収されたあとの不要なものを糞便にします。
”消化”は、食べ物からの栄養素を体に吸収されやすい形に変えることです。唾液や胃で、消化液によって分解されたものを、さらに腸で分解します。そして、消化された栄養素を腸の内側にある絨毛(じゅうもう)という部分からとり込んで”吸収”します。
消化・吸収を終えて残ったかすは、大腸で水分やナトリウムが吸収され、糞便となります。大腸での水分吸収が十分に行われないと水っぽい軟便になり、下痢を起こす場合があります。
2.免疫・脳神経
体内にとりこまれるものは、食べ物だけではありません。細菌やウイルスといった病原体も体内に侵入してきます。腸には、体を守る役割もあります。体に備わっている外敵を排除する免疫細胞のうち、半分以上が腸に集まっていることからも、腸の重要性がわかります。
また、腸には脳とのつながりもあります。自律神経系、内分泌系、免疫系と3つの経路から情報伝達を双方向で行っています。
たとえば、ストレスを感じたときに食欲がなくなり、トイレに行きたくなることがあります。これは、腸が神経を通じて脳と深くつながっており、ストレスを細かく感知することで腸内環境のバランスが乱れてしまうのが原因です。
腸の働きを整える漢方薬
体の不調を正し、バランスを整える漢方薬は、腸の不調改善にも有効です。腸の働きをサポートし、腸内環境のバランスを正常な状態に近づけてくれます。
腸の不調には、血流の改善で腸の動きを活発にしたり、ストレスで乱れた自律神経を整えたりして、動きを正常に導く漢方薬が使われます。
また、おなかを温めて胃腸機能を高めたり、痙攣を抑えて腹痛を和らげたりするなど、様々な原因による不調の改善が期待できます。
さらに、前述したとおり腸は「第2の脳」と呼ばれるほど重要で、栄養の消化・吸収などに大きく影響します。栄養が全身に届くことで、ストレスや疲労に負けない強い体を目指すこともできます。
それでは、不調別に効果のある漢方薬を紹介していきましょう。
1.便秘に効く漢方薬
便秘には「麻子仁丸(ましにんがん)」がおすすめです。機能性便秘と呼ばれる、生活習慣やストレス、大腸の筋力低下を原因とする便秘に向いています。体力が中等度以下の方向けの漢方薬で、便が硬く、排便がスムーズにできない場合や、腹部の膨満感を改善します。
2.下痢に効く漢方薬
下痢には「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」がよく処方されます。とくに、ストレスによる胃腸の不調に用いられる漢方薬で、消化不良をはじめ、吐き気や胸焼け、口内炎や神経症にも用いられます。体力が中等度の方向けです。
3.ガスだまりに効く漢方薬
おならがよく出る方で、便秘がちでおなかが張ってしまう場合は「桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)」、下痢や冷えに悩んでいる方は「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」がおすすめです。体力が比較的低下気味の方向けです。
漢方は体質との相性で正しく選ぼう
漢方を選ぶポイントは、体との相性です。漢方薬は、その人の体質を様々な“ものさし”で判断し、体のバランスを整え、不調を改善していきます。体質に合わない漢方薬を使うと適切な効果を得られませんが、正しい診断と処方を行えば、症状の改善への近道となります。
そのため、漢方薬は医師や薬剤師など、漢方を基礎から学んだ専門家の診断が重要です。まずは自分の体質を知ることから始めましょう。
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腸は健康の要! 不調を感じたらまずは漢方で改善!
腸は、栄養の消化吸収だけでなく、免疫機能にも大きな影響を与えています。腸が不調になれば体の様々な場所に影響が出て、病気の原因にもなります。便秘や下痢、ガスだまりに悩む場合は、まずは漢方薬で体質改善を目指しましょう。
さて、次回は「喉に効く漢方薬」です。ぜひご覧ください!
<この記事を書いた人>
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