静岡県の山間を流れる気田川沿い、豊かな自然のなかにあるのが2005年竣工の『程々の家』だ。この家に暮らすのは結婚29年目の石川裕次郎さん、則子さんご夫妻。ともに48歳で、昨年、二人目の子どもが巣立ち、改めて夫婦二人暮らしが始まったという。
パンフレットで一目惚れ
カナダの山奥にあるようなログハウスに憧れていた石川さんご夫妻。17年前のある日、『程々の家』のパンフレットを目にする。
「ジャパネスク(日本風)という言葉が添えられて、『こういうログハウスもあるのか』という驚きと同時に、日本の風景との一体感に納得も覚えて、二人とも一瞬で心を奪われました」と裕次郎さんは振り返る。結局、実物を見ることなく、購入を決定したという。
建築にあたり、湿気防止のために基礎を20cm高く設計。これにより広縁下は絶好の薪置き場となった。また両親の来訪時に不自由がないようスロープを装備した。
居間の窓には建具職人である知人特製の格子戸を取り付けた。格子戸は1段ごとに取り外しできるはめ込み式の障子が付いている。
また予定地には築200年超の古民家が立っていたそうだが、長きにわたる経年で見事に変化した支柱や自在鉤などを譲り受け、居間に装飾として活かしている。
家が“自由”をもたらす
『程々の家』で暮らし始めて、裕次郎さんにはパンを焼くという趣味ができた。二人の子どもたちは焼きたてのパンを食べて登校した。そんな背中を見送りながら、もっと美味しいパンを求めるうちに窯づくりに目覚めたという。そして試行錯誤を重ねて独自の窯を開発し特許も取得。こうした創作意欲をもたらす最大の要因が、この家での暮らしにあると裕次郎さん。
「この家の良さは手を入れる余地が残されていること。そして家も手を加えられることを嫌がらない。“未完成”さが、僕の心に自由をくれていると感じます」
住み始めてから手を入れ続けているが、いまだに“次”が見つかる。ゆえに「家を使いこなしていると実感し、暮らすほどに家との関係が深まっている」と二人は感じている。子どもの巣立ちと同時に2階の彼らの部屋を整理して、仕事部屋に変更。家中を使いこなしてやろうという気概が見えてくる。
夫婦二人になっても、家族の歴史は居間の床に残る。家族が何度も行き来した無垢の床材は時間とともに磨かれて、いまや陽の光を浴びて艶やかな表情を見せる。キズも味わいのうちと「特別な手入れはしていません」と則子さん。古民家から移した部材とも馴染み、石川邸の一部となっている。
「しなやかで威張らず、さり気ないのに格好いい、そんな“和”の味わいが『程々の家』に“程々”にある。その絶妙な塩梅がいいですね」と二人は笑顔を見せた。
「程々の家」 をもっと知りたい
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