関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

***

今回の相談者は、不動産オーナーの神原正親さん(仮名・72歳)。働いた経験がなく、実家に住んでいる40歳の娘が「探さないでください」という意味の手紙を残して、家出してしまったことから、私たちに調査を依頼。

私たちはパソコンのメッセンジャー履歴から、娘さんが山奥で自給自足の団体に加わっているのではないかと踏んで、現地に向かったのです。

【これまでの経緯はその1で】

山奥の施設は、もぬけのからだった

私たちは、娘さんは山奥にある団体の施設にいると確信して、オフロード対応のクルマを手配し向かいました。てっきり、少々カルト的な団体なのかと思い、以前そのような仕事を行った時の資料を引っ張り出して、弁護士の先生にアドバイスをいただき、万全の態勢で向かったのです。

しかし、やっとのことでたどり着いたその施設には人の気配がなかった。これは拍子抜けというやつ。

娘さんがいると思うから、「この先進んでも大丈夫だろうか…」と細い山道を進んでいったのに、人気がない。これはかなり応えました。

夕暮れの山奥で、人がいないとうのは不気味で恐ろしい。早々に山を下りると、ペアの探偵が「あそこにキャンプ場の看板がある」と言うのです。それはよく見ないとわからない小さな標識でしたが、何かの手がかりがあればと、ひとまず私たちは行くことにしました。

キャンプ場は公立のもので、最低限のかまど、水道、排水設備しかないようでかなり古い。公式に受け付けているのは、夏の間だけ。

とはいえ、閉鎖をされているというわけではないので、チラホラとキャンパーがいる。多くは家族連れのようですが、場違いにグランピングっぽいテントがありました。男女2組のカップルがいるようです。望遠レンズで見ると、娘さんがいたのです。

娘さん以外のメンバーは、50歳くらいの筋肉質なイケメンと、芸能人っぽい雰囲気の男性とアラサー女性のカップル。とはいえ、ギラギラしているというのではなく、上質なナチュラル感があります。

彼らは焚火を起こし、大きな水盤を出して、そこに花を浮かべながら、月を水面にうつす。そして、月光浴をしながら、不思議な動きでダンスをしている。その様子を撮影していたのですが、みなさんうっとりと陶酔されていて、不思議な感じがしました。

【男性との関係は何なのだろうか……。次のページへ続きます】

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