文/永松茂久
悩んでいる人から相談を受けた時、せっかく相手のコトを考えて答えたのに、なぜか余計に相手を怒らせたり、失望させたりしてしまうことがあります。では悩んでいる人にどのようなアドバイスすればいいのか? どのような方法で相手に喜んでもらえるのか? 相談を受ける方が余計に悩んでしまいますよね。
悩んでいる人にポジティブアドバイスはいらない
あなたは人から相談されることが多いほうでしょうか? それとも少ないほうでしょうか?
いずれにしても人から相談を受けた時に、今から話すことを覚えておくと大変有効なので、ご紹介いたします。
相談に来る人というのは、結局のところ、
「とにかく話を聞いてほしい」
「自分のことをわかってほしい」
「共感してほしい」
という思いが強いのです。
実のところ、解決策を求めて相談に来ている人はほとんどいません。
また、相談事というのは、ポジティブ、ネガティブで分けると多くの場合ネガティブな要素が多い。
だからといって、
「ダメだよ、そんなネガティブじゃ。ポジティブに考えようよ」
と、ポジティブ論をすぐ持ち出すようなことはやめましょう。
その時点で、相談者はそれ以上あなたに話をしなくなります。
相手が求めていることは、「わかってほしい」「共感してほしい」であって、必ずしもプラス方向に転換したいと思っているわけではありません。
また、感情的にネガティブになっている時に、ポジティブ論を展開すると、「説教されているの?」と捉えてしまう人もいて、効果的ではありません。
つまり良かれと思って話をすればするほど、相手はあなたの思いとは逆方向に気持ちがいってしまうのです。
アドバイスする時は、意見を押しつけないよう慎重に
時には、相手があなたにアドバイスを求めてくることもあるでしょう。
その時は、あくまで客観的、かつ謙虚に応えることがベストです。
例えば、
「絶対にこうすべきだよ!」ではなく、
「これはあくまで私の一意見だけど……」
「こんな考え方もあるんだと思って聞いてね」
というところから始めると、相手の心にスッと言葉が入ります。
あくまで、結論を決めるのは相手です。
どんなにあなたが「こうすればいいのに」と思ったとしても、そこはグッとこらえましょう。
あなたの意見を押しつけすぎると、相手はあなたに対して感情的になってしまい、結果的にあなた自身が後悔することになってしまいます。
「これが正しい」は、相手にとっては押しつけに感じてしまうことも多いということを覚えておくといいと思います。
悩んでいる人は、あなたが側にいてくれるだけでいい
悩んでいる人と向き合った時に一番相手に寄り添う言葉。
それは、
「一緒に考えよう」
です。
解決策を提示するのではなく、共に悩み、共に考える。
これだけで相手にとっては、大きな勇気になります。
「つらかったわね。大変だったね。どうすればいいか一緒に考えましょう」
「お気持ち、わかるわ。しんどかったでしょう。どうしたら解決できるか一緒に考えますね」
こうした言葉がけによって心が落ち着いてくると、人は自然とポジティブな方向に話を運び始めます。ポジティブな話が必要になるのはこのタイミングです。
谷を下り終えて、再び山を登り始める、この時に、あなたがそっと相手の背中を支えていく形が一番の応援になるのです。
永松茂久(ながまつ・しげひさ)/株式会社人財育成JAPAN 代表取締役。大分県中津市生まれ。2001年、わずか3坪のたこ焼きの行商から商売を始め、2003年に開店したダイニング陽なた家は、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店になる。自身の経験をもとに体系化した「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で多くの講演、セミナーを実施。「人の在り方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累計動員数は延べ45万人にのぼる。2016年より、拠点を東京麻布に移し、現在は執筆だけではなく、次世代育成スクールである永松塾、出版コンサルティング、イベント主催、映像編集、ブランディングプロデュースなど数々の事業を展開する実業家である。著作業では2020年、書籍の年間累計発行部数で65万部という記録を達成し、『人は話し方が9割』の単冊売り上げで2020年ビジネス書年間ランキング1位を獲得(日販調べ)。2021年には、同じく『人は話し方が9割』が「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にて、「特別賞/コロナ禍を支えたビジネス書」を受賞。著書に『喜ばれる人になりなさい 母が残してくれた、たった1つの大切なこと』(すばる舎)、『在り方 自分の軸を持って生きるということ』(サンマーク出版)、『30代を無駄に生きるな』『20代を無難に生きるな』『影響力』『言葉は現実化する』『心の壁の壊し方』『男の条件』『人生に迷ったら知覧に行け』(きずな出版)、『感動の条件』(KKロングセラーズ)など多数あり、累計発行部数は200万部を突破している。