「耳鳴り」「難聴」は症状もさまざまなうえ、原因がわかりづらく、治りにくい病とされています。また、コロナ禍におけるマスク生活で、マスクがフィルターのようになり会話が聞き取りにくくなっており、耳の聞こえにくさに不安を感じている人が増えています。
そこで、国際医療福祉大学病院 耳鼻咽喉科の教授・中川雅文先生の『聴くだけで耳鳴り・難聴を治せる本!』(宝島社)から、耳や心身の調子を整えるエクササイズをご紹介します。
監修/中川雅文
朝は自然が奏でる音を感じられる時間帯
太陽が昇り、人々が活動を始める頃に街は喧騒に包まれますが、早朝は比較的、自然の奏でる「1/fのゆらぎ」のリズムを感じることができます。「1/fのゆらぎのリズム」とは、人の心身を深くリラックスさせ、脳を元気にさせるといわれる独特のリズムです。木々のそよぎ、小鳥のさえずり、波音、川のせせらぎ音などがそれに当たります。
「1/fのゆらぎ」を感じるには、朝起きたら、まずカーテンを開けて太陽の光を感じ、外の音に耳をすませる習慣をつけましょう。
朝、自然の音に耳をすませることで、生体のリズムも心地よい1/fのゆらぎに整えられます。たとえ雨の日でも、 雨音には1/fのゆらぎのリズムが含まれていますし、朝の風で木々がそよぐ音や小鳥の鳴き声からは普段の人との会話では感じることができない、比較的高い周波数も感じることができます。
また、朝の太陽の光を浴びることで、自律神経のスイッチが切り替わります。自律神経は、日中は交感神経が優位になり、夜間の眠っているときには副交感神経が優位になるのが理想的です。起床後すぐ優位になるのが理想的です。 起床後すぐは、まだ副交感神経が優位になっていますが、朝の太陽光を浴びることで、体内時計がリセットされて交感神経にスイッチが切り替わるのです。
その瞬間、目覚めもスッキリして、胃腸が動き出し、食欲が湧いてきて朝食もおいしく食べられるようになるでしょう。特に、ストレスの多い生活をしていたり、加齢が進むと、体内時計は狂いがちです。朝のたった1分の習慣が、 こうしたリズムまで整えてくれるのです。
さらに、朝日を浴びることで、体内時計がリセットされると、眠りにもいい影響があります。朝日を浴びるだけで、 太陽が沈むと体内で生成される睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌がうながされるため、寝付きまでよくなるのです。耳の健康だけでなく、1日の活力を呼び覚まし、食欲も増進、そして、いい眠りまでももたらしてくれる「朝の1分耳すまし」。ぜひ早朝のルーティーンに加えてください。
朝の1分耳すましをやってみよう
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TJMOOK『聴くだけで耳鳴り・難聴を治せる本!』 監修 中川雅文
宝島社
QRコードによる『耳トレ音源』付き。スマホさえあればどこでも気軽にトレーニングできます。直接的に脳や内耳を刺激し、耳の不調を改善してくれます。
中川雅文(なかがわ・まさふみ)
国際医療福祉大学病院 耳鼻咽喉科 教授・医学博士。1986年順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部講師、私学事業団東京臨海病院耳鼻咽喉科部長、順天堂大学医学部客員准教授を経て、現職。(一社)日本メイクリスニングセーフ協会理事、(一社)日本ニューロマーケティング協会代表理事。耳とコミュニケーション研究の第一人者としてテレビなどのメディアでも活躍。聴覚障害者の支援に関わる啓蒙や教育活動にも積極的に取り組む。著書に『「聞こえにくい」がなおる耳トレ』(大和書房)、『「耳の不調」が脳までダメにする』(講談社)。