あなたの心を温かくしてくれた人、あなたの心が動いたコト、あなたの大切なモノ……人生を明るく照らす「人・モノ・コト」は、いい明日へと導いてくれる力がある。日常の中にある当たり前のことや、忘れてしまいがちな大切なことにスポットを当てるのが、今年から始まった「わたし大賞」だ。
あなたが伝えたいことを、「賞状」と「400文字以内のエピソード」にまとめるというのが、なんとも新鮮だ。ここでは三井住友信託銀行が主催する、「わたし大賞」の応募方法を紹介していく。
作品例を紹介 日常のありふれた物語が、人の心を打つ
あなたが「讃えたい」と思った人・モノ・コトに贈る「わたし大賞」。
例えば、安心をくれるパートナー、存在するだけで心を満たしてくれるペット、人生の相棒的存在のモノ、忘れられないコト……「あなたが讃えたい思い」をぜひ応募してほしい。
応募するためには、「賞状」と「400文字以内のエピソード」の両方が必要だ。文章に自信がない、讃えたいことが明確ではないと感じる人は、ぜひ賞状から書き始めるといいだろう。なぜなら、相手に面と向かって言えないこと、態度では伝わりにくい思いは、賞状をつくるうちに明確になっていくからだ。
まさにそれは、あなたの心の中にあるたくさんの経験や記憶の中から、ひとつを選びそれにスポットライトを当てることだ。賞状を書くうちに、相手の輪郭と陰影がくっきりと浮かび上がってくる。
それから文章を書くと、ふだんは意識しない相手の存在や思いが、心の中できらめきだす。その輝きはきっと文章に反映されるはずだ。
思いは伝わる……この経験は、あなたと相手にとって、いい未来につながるだろう。そしてまた、それを読んだ人の心のスポットライトのスイッチを入れる。それはきっと未来へとつながっていく。
応募方法は、郵送とインターネットによるものと2つあるが、公式サイトからインターネットで応募すると、入力した内容が反映されたオリジナル賞状画像をダウンロードできる。これを出力すれば、実際に相手へと贈ることもできるのだ。
ここでは「賞状」と「エピソード」の作品例と、ささやかなアドバイスを紹介する。
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「わたし大賞」は、賞状(賞の名称・讃える対象・文章・送り主)、と400文字以内のエピソードの2つが必要だ。ここでは作品例として、3つを紹介する。
最初の作品は、作者は20代の女性で、ペットへの讃える気持ちを綴っている。
タイトル「君がいる毎日にありがとう賞」
作者:太田美希代 (25歳)
【賞状】
【エピソード】
「わー!部屋に雪が積もってる!」その事件が起きたのは、私が小学生の頃。家族で外出し、家に帰ってきた時のことだ。犯人は、前の年に我が家にやってきたトイプードルのロコ。一人だけ留守番させられたのが、よっぽど不満だったのだろう。ソファに置いてあるクッションを噛んでビリビリに破り、中の羽毛を部屋中に撒き散らしていた。驚いて声を上げる私をよそに、ロコはなぜか誇らしげな顔。まるで「みんながいない間に、ひと仕事しておきましたよ」とでも言わんばかりに。遅れて部屋に入ってきた父も母も、ロコの無邪気な顔を見て、大笑いしてしまった。その後私が建築を学び、住宅の設計の仕事をしているのは、完全にロコの影響だ。たまに部屋に雪が降る家も楽しいけれど、人とペットが楽しく暮らせる家ならもっといい。すっかり歳をとり、一日中寝ているロコの顔を見て、いまもあの日の事件を思い出すたび、心の中で白い羽がフワフワと舞っている。
続いて「モノ」がテーマの作品を紹介する。作者は50代の女性で、父への思いと楽器について著している。
タイトル「いつか最高のグッジョブを!賞」
作者:木村夏子 (53歳)
【賞状】
【エピソード】
私には密かな夢がある。それは、父に関する小さなたくらみだ。今から3年前。父の喜寿にギターをプレゼントした。父が若い頃、職場の仲間とバンドを組んでいたと母から聞いたことがあったからだ。しかし、結婚して私や弟が生まれ、ギターを弾く機会もなくなり。そのことを、私はずっと気にかけていた。数十年ぶりにギターを手にした父は、「もう指が動かないよ」と言いながら、その後ずいぶん練習していたらしい。今では私が帰省すると、父の青春時代の曲を嬉しそうに弾いてくれる。しかし、私が本当に聴きたい曲は別にある。父が母にプロポーズした時に歌ったという、オリジナルのラブソング。母の前で、もう一度その曲を歌って欲しい! 父に趣味の楽しさを再び教えてくれたギターには、とても感謝している。けれど、いつか私の夢が叶ったあかつきには、ギターにも、ギターをあげた私自身にも、最高の「グッジョブ!」を贈ろうと思う。
最後に紹介するのは、「コト」をテーマにした作品だ。60代の男性が、ハワイへの思いと感謝を表現している。
タイトル「永年の友好に感謝する賞」
作者:菊池洋平 (66歳)
【賞状】
【エピソード】
人生は、「今」がいちばん若い。まさか自分が、この言葉を実感するとは思わなかった。私は現在、日本とハワイの友好を目的としたNPOを運営している。ハワイは、私が定年まで勤め上げた旅行会社での、初めての赴任先だ。40年以上前、拙い英語で現地のスタッフとなんとか意思疎通しながら、旅行の手配や州政府との調整など、山のような仕事をこなせたのは、ハワイの人たちのあたたかな人柄のおかげと言うしかない。日本とハワイの架け橋となる今の役割は、お世話になった方々への恩返しに他ならないが、おかげで若い頃以上に、充実した日々を送らせてもらっている。第二の故郷がくれたご褒美のような時間に心からの感謝を贈りながら、いちばん若い「今」を、とことん楽しんでやろうと考えている。 Mahalo e hawaii!(ありがとうハワイ!) A Hui Hou!(またお会いしましょう!)
あなたの「わたし大賞」を探してみよう
作品例を見て「私の人生、そんなドラマティックなことはない」と思う人もいるだろう。しかし、意外と物語は日常生活の中にあふれているもの。
そこで、『サライ.jp』読者のあなたに、書き方のヒントを紹介する。しかし、これはあくまで参考に留めておいてほしい。なぜなら、「わたし大賞」を決め、贈るのはあなたなのだから。
「わたし大賞」を綴るコツは3つ
●「今日あった嬉しいこと」を軽い気持ちで紙に書き出す
いきなり「大賞」を選ぶとなると悩ましいが、今日あった嬉しいことを、紙に書き出してみよう。例えば、心を和ませる道端の花、言葉をかけてくれる店員さん、あなたの毎日の生活に欠かせない食べ物や道具など、いろいろあるはずだ。加えて、あなたが最も長く持っているモノ、何度も読んだ本、なんだかんだと言いながらも一緒にいる家族や友達……そんな人への感謝の気持ちを軽い気持ちで「大賞」ならぬ「賞」にすることから始めてみてほしい。
●「未来につながる何か」を見つける
考えながら書いていると、記憶が連鎖的に引き出されてくる。そのうちに、未来の自分につながる何かが明確になってくる。大賞を贈り、これからも一緒に在り続けたい「人・モノ・コト」とはなんだろうか。それを決めるにあたり、童心に戻ってほしい。「わたし大賞」はあなたの気持ちが最も大切だ。「この人には世話になったから、書かなくちゃいけないだろう」ではなく、あなたの心に正直に大賞を選んでほしい。
●上手に書こうと思わないことが大切
あなたの物語である「わたし大賞」を書くために大切なことは、「上手に書こう」としないことだ。あなたの思いや、ストレートな気持ちが大切なのだ。小学生時代に友達に贈った「よくできましたで賞」などの「賞状ごっこ」のような軽い気持ちでいいのかもしれない。文章は最初の単語を書くと意外と次々と出てくるものだ。加えて文章は化粧をしないほど、素の魅力や熱量が伝わる。まずはあなたが楽しみ、リラックスしながら、書いていこう。
まとめ
「わたし大賞」を書いていくうちに、日々のいろどりと豊かな人生に気付いていくだろう。楽しい気持ちで、自分の人生とこれからの未来を考えるうちに、あなた自身が笑顔になっていくはずだ。それが、読んだ人の心も照らしていく。このつながりが広がっていくことが、「わたし大賞」の力なのかもしれない。
人生100年時代といわれ、わたしたちの人生を彩る出来事はこれからも続いていく。あなたの思いや愛情は誰かの心を打つ。それをぜひ、世の中に出してほしい。その思いは、時代を超え、形を変えて社会を温かく照らしていくはずなのだ。
「わたし大賞」の詳細について
早速、「わたし大賞」を綴ってみよう。一般応募はスタートしたばかりだ。作品例や応募方法は、下記サイトでチェックしてみてほしい。
「わたし大賞」Webサイトはこちら
構成・文/前川亜紀