温泉湧出量、源泉数ともに日本有数を誇り、九州の温泉地のなかでも知名度の高い大分県の由布院。ここに新たな滞在を提案する温泉宿が開業した。
観光列車に乗り、棚田の自然とともに過ごせる『界 由布院』へ足を運ぶ。
特急「ゆふいんの森」
人の営みと調和する美しい棚田の風景
福岡県の博多から特急「ゆふいんの森」で約2時間10分。大分県の由布岳の麓に広がる由布院温泉。ここに「王道なのに、あたらしい。」を標榜する星野リゾートの温泉旅館ブランド『界(かい)』の『界 由布院』が開業した。
由布院の中心部から車で約10分。山の谷間にある棚田を有した、豊かな自然に囲まれた宿である。
設計・デザインを担当した建築家の隈研吾さんは、こう話す。
「この場所は農村を思わせ、由布院の原形のようなところ。施設の主役は棚田です。ここを訪れると別世界のように感じるでしょう」
棚田は季節ごとに表情があり、それが人間の営みのリズムと調和しているという。
この宿に到着すると、まず眼前に広がる棚田の景色の美しさに驚かされるだろう。棚田を見下ろすテラスに座り、鳥のさえずりや虫の音に耳を傾け、由布岳から吹き下ろす風を肌で感じながら、ゆっくりと時間が流れていく。朝昼晩と光景が変わっていく自然の中に身を置くと、心から寛げる。
客室は、棚田に臨む部屋と、くぬぎ林に面した部屋のほか、棚田に佇む離れもある。いずれの客室も、たたき、板の間、座敷で構成され、農家の建物のような感覚で過ごせる。そして、施設内の随所に、地元大分県の竹や畳の材料となる七島藺(しちとうい)などを用いた伝統工芸が取り入れられている。
ご当地部屋
由布院にはたくさんの源泉があるが、ここ『界 由布院』の温泉は、化粧品の成分として知られるメタケイ酸を豊富に含む、やわらかい泉質。湯上がりに肌がしっとりとするのが感じられる。
大浴場の露天風呂からの景色も素晴らしい。由布院の象徴的な存在で、豊後(ぶんご)富士とも呼ばれる由布岳の勇壮な姿が望める。
露天風呂
地元の食文化を生かした料理は、猪肉、鹿肉、穴熊肉など山のももんじ(獣)鍋のほか、海の幸を使った料理が、特徴的な幾何学模様で知られる小鹿田焼(おんたやき)の器などで供される。風土や歴史のなかで生まれた地元の麦焼酎も、各種飲み比べができる。
特別会席「山のももんじ鍋」
懐かしさを感じられる棚田の自然とともに豊かな気分になれる『界 由布院』。従来にはなかった新しい由布院の滞在スタイルとなるだろう。
界 由布院
大分県由布市湯布院町川上398
宿泊料金:1泊2食付き3万5000円~(2名1室利用時1名あたり)
交通:JR久大本線由布院駅より車で約10分(送迎あり)、大分空港より車で約60分。
客室数45室。
足を延ばして海を望む『界 別府』へ
大分県別府市北浜2-14-29
宿泊料金:1泊2食付き3万2000円~(2名1室利用時1名あたり)
交通:JR日豊本線別府駅より徒歩で約10分
●問い合わせ先/星野リゾート電話:0570・073・011(宿泊予約)