「今までいちばん楽しかったことは?」「昔、よく使っていたモノとその理由を聞かせて」
そう質問されたときに心に浮かんだことがあれば、それはあなただけの物語。その物語は、誰かの心を動かし、その人の中で生き続けるかもしれない。
さて、あなたが未来に伝え残したい「人・モノ・コト」……それを400字のエッセイで綴る「わたし遺産」の募集が今年も始まった。
三井住友信託銀行が主催するこの取り組みは、今年で10回目を迎える。
人と会うこともままならない時代だからこそ、ささやかな記憶や温かな思いを多くの人に伝えてみてはどうだろうか。
あなたの心に生きている記憶を文章にすれば、誰かの心に運ばれていくだろう。そこで、その物語は芽吹き、根付いていくはずだ。それが未来へときっとつながっていく。
ここでは前回の大賞作品と、作品を書くときのささやかなアドバイスを紹介する。

大賞受賞作品紹介 日常のありふれた物語が、人の心を打つ

まず、2021年に応募が行われた9回目の「わたし遺産」の大賞作品を紹介する。時代や生活、価値観が変わっても、心にじわりとのこる「人・モノ・コト」を綴っている。
家族のこと、幼い頃の思い出、伝わっていくモノと想い……流れている時間の中でぬくもりを感じる物語だ。
選定委員も歌人・穂村弘さん、ライター・大平一枝さんと豪華だ。彼らが、丁寧に作品を論評するのも「わたし遺産」ならではではないだろうか。
では早速、作品を読んでみよう。

選定委員からのコメント
武骨ながら存在感あふれる3本のクギ。恒例の新年会のため女性たちが作り続けてきたお節。コロナ禍で会が中止され、あらためて「人・モノ・しきたり。みな昔から繋がってきた大切なこと」と気付く。話はそう紡がれていきます。

選定委員からのコメント

卒園してしばらく経つ子のために保育士が想いをこめて作った応援旗は、写真一枚でも強く心を打つ。その想いに救われ、感謝を忘れない書き手のあたたかな情にも惹かれる。肉親ではない他者の愛をテーマにした印象的な作品である。

選定委員からのコメント

家族の一員だった馬との関わりを通して、当時の暮しが生き生きと描かれている。その馬が亡くなってトラクターに変わった時、一つの時代が終わった。人間とともに生きたすべての馬たちへの「ありがとう!」に胸を打たれた。

あなたの「わたし遺産」を探してみよう

思い出は一つとして同じものはない。同じ体験をしても、感じ方は多種多様だ。
さて、ここで紹介した作例を参考に、あなたに質問をする。
これから、あなたは記憶の大海を潜っていくダイバーというイメージを持とう。浅いところにも深いところにも宝は眠っているはずだ。

さて、ここで質問。
「あなたが、最も長く一緒に過ごしているモノはなんだろうか? そしてその理由を聞かせてほしい」

記憶の海の中に眠る記憶の断片は、質問がきっかけとなり、その姿が見えてくる。
それを与えてくれた人、そのときの状況、自分の想いなどもわかってくるだろう。
そのときの匂い、人の雰囲気、ぬくもりや優しさ……誰にも伝える機会がなかったエピソードまで出てくるはずだ。
しかし、この思い出を文章にするとなると、なかなか難儀なものだ。
そこで、『サライ.jp』読者のあなたに、ちょっとした書き方のヒントを紹介する。しかし、これはあくまで参考に留めておいてほしい。なぜなら、「わたし遺産」を仕上げるのはご自身なのだから。

「わたし遺産」を綴るコツは3つ

●ノートを広げ、記憶の断片を文字にしていこう
物語のピースは、あなたの心という大きな海に存在する。水面に浮いていたコト、海底に沈んでいたコト、出会った人などを文字化してみよう。家族、友人、学友、先生、名前も忘れてしまった人との思い出、人と人をつなげたコト、もう一度手にしたいモノ……さあ書き出してみよう。

●ノートに書いた単語から、物語の「種」を探そう
ノートに書いたことの中から、「これを書いてみたい」と思う内容をマークしてみよう。それが物語の「種」になる。その種を眺め、触っているうちに、さまざまなことを思い出すはずだ。すると、種が芽吹き、枝葉が広がっていく。そして物語の輪郭がくっきりしはじめるのだ。

●思い出を「わたし遺産」にする
あなたの物語である「わたし遺産」を書くために大切なことは、「上手に書こう」としないこと。あなたの思い出、感じたことが大切なのだ。まずは最初の単語を書き、カッコつけずシンプルに綴っていこう。人間同様、物語も素顔であるほど、人の心をほぐしてくれる。まずはあなたがリラックスしながら、書いていこう。

まとめ

肩の力を抜き、自分の人生を振り返るうちに、きっと豊かな気持ちになっていくだろう。その物語が、誰かの心に響いていく……それこそが「わたし遺産」の醍醐味だ。
人生100年時代といわれている。あなたがこれまで生きてきた道には、忘れられない面影、思い出があるだろう。それをぜひ、世の中に出してほしい。
誰かがあなたの「わたし遺産」を読めば、想いや行動がうまれていく。それが誰かに影響を与え、時代を超え、形を変えて受け継がれていくのだから。

わたし遺産の詳細について

早速、「わたし遺産」を綴ってみよう。
今年も、応募がスタートしたばかり。その方法を始め、過去の受賞作品を下記サイトでチェックしてみてほしい。

「わたし遺産」Webサイトはこちら

「わたし遺産」 主催/三井住友信託銀行 後援/TBSラジオ 協力/朝日新聞社

構成・文/前川亜紀

 

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