
2026年9月、木原稔官房長官は記者会見において、「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」などが関与する特殊詐欺被害について、「1日あたり約10億円の被害が発生しており、異常事態とも言える状況だ」と強い危機感を示した。政府はこの事態を「治安対策上の最重要課題」と位置づけ、被害撲滅に向けた対策を一層強化していく方針だという。
真由さん(63歳)は定年直前に、SNSで知り合った男性に300万円を振り込んでしまったという。「定年は、会社という大きな船から放り出されることと同じ。私のようにメンタルがおかしくなる人もいるだろうから、支え合いのネットワークは作っておくべき」と言う。
前編では、短大卒で比較的大きな建設会社に入ったこと、20〜50代の仕事について詳述した。
【これまでの経緯は前編で】
強みも培ってきたスキルも社内でしか通用しない
真由さんの会社に役職定年はない。55歳のときに、役員になれなかった同年代の社員が集められ『人生100年時代、これからの人生』という研修を受けて、リアリティを持って定年を感じたという。
「確かに、この年齢になると満員電車の通勤や会議が辛くなる。そんな頃に定年研修があると『とうとう捨てられるんだ』という被害者意識が芽生えてきました。研修で教えられるのは、管理職から一般社員やサポート役に立場が変わる際のマインドチェンジ、年下の上司やメンバーと良好な人間関係を築くための意識改革についてです。『いよいよ来たな』と背筋が寒くなったのです。
講師から『あなたの強み、スキルを棚卸ししましょう』『これまで培ってきた業務を整理し、60歳以降も会社や社会にどう貢献できるか、どんな業務なら意欲を持って取り組めるかを言語化してください』とチームでワークショップをさせられましたが、何も頭に浮かんでこない。強みも培ってきたスキルも社内でしか通用しないことがわかっただけでした」
定年を恐れたり、会社にしがみついているように周囲から見られたくないので、明るくふるまったという。
「死ぬまで同じように仕事をするか、定年するかの2択だったら、定年を選びたい。旅行もしたいし、自由な時間も欲しいから。私が避けたかったのは、再雇用で働くこと。子供がいるなら『お金のために』という大義名分があるけれど、私にはない。1人で生きるには十分すぎるお金があるのに、後輩のお荷物になっている感じがするし、プライドもあるから。子会社の役員になれるのは男性社員だけ。それだって、65歳になれば追い出される。
定年後に備えて、せめて趣味に力を入れようと、前から好きだった写真に力を入れSNSに投稿を始めたのは、とても良かったことだと思っています」
建物の写真を中心に、野鳥や花などをアップした。SNSを介して友達ができ、近郊に撮影旅行にも行った。
「写真の他に少女漫画が好きという共通点があるんです。今は出会ってから8年、半年に1〜2回会っていますよ。メンバーは48歳の専業主婦、54歳の会社員、そして私。SNSで知り合ったゆるいつながりが心地よい。スペックでマウントを取り合うような意識がないから、楽しいのです」
写真を通じて、SNSで人脈がどんどん広がっていくのが楽しく、定年のカウントダウンによる気持ちの落ち込みを忘れることができたという。真由さんのフォロワーが1000人くらいになった59歳のある日、40代半ばの日仏ハーフのイケメンからフォローされた。
「プロフィール写真がとにかくカッコよく、写真も素晴らしい。パリ在住で母親が日本人だという。彼の作品に“いいね”していたら、向こうからメッセージが来たのです。彼のフォロワーは1万人近くおり、私みたいなおばさんになんで連絡をくれるのだろうと思いました」
彼は日本語で「あなたの世界観は素晴らしい」「友達になってほしい」などのメッセージを送ってきた。
「私も写真には自信があったので、お礼してフォローバックをしました。毎日連絡が来るようになり、やがてハーフとしての苦悩や写真家として世間に理解されない葛藤などの弱みを打ち明け『僕を理解してくれるのは真由だけだ』と。そんなことを言われたら、好きになっちゃいますよね。向こうからも『真由を愛している』とメッセージが来ました。
それから1か月後、『パリの有名ギャラリーで個展が決まったが、100万円の保証金が急きょ必要になった』と連絡があり、『少しなら助けられるよ』と相手が指定する海外口座に50万円を送金したのです」
【300万円送ったところで「これは詐欺だ」と気づいた……次のページに続きます】











