取材・文/坂口鈴香

「ママがボケた…!? 見つかったのは大量の薬だった」(https://serai.jp/living/1275790)で紹介した松兼恵理さん(仮名・61)の義母は、多くの睡眠薬や向精神薬の副作用で認知症のような症状が出ていた。このように、薬が原因で普段の生活に支障が出る状態を「ポリファーマシー」と言い、特に高齢者ほど薬の副作用が起こりやすくなるので注意が必要であると指摘した。
赤坂かおりさん(仮名・56)の母親(82)にも同様の症状が出ていた。赤坂さんや父親が、「薬の飲み過ぎだから減らそう」と言っても、母親は「眠れないつらさはあなたたちにはわからない」と言い、減薬を拒否していた。
(前編はこちら→https://serai.jp/living/1280579)
母が改善したのは「まるめ」のおかげ?
もどかしい思いをしていた赤坂さんだったが、その後母親が介護老人保健施設(老健)に入所すると、薬の過剰摂取や副作用は落ち着いた。というのも、入所するに当たって、施設の看護師が「薬の整理をしましょう」と、増えすぎた薬を整理して必要な薬のみに絞ったのだ。
「不安神経症」と診断されていた母親は、看護師が薬を管理し、毎食後服用させてくれることに満足したのか、減薬に抵抗することもなくおとなしく従った。減薬されたことに気づかなかっただけかもしれないが。
そして、看護師や医師が施設に配置されている安心感からか、母親が不眠を訴えることさえなくなり、減薬の効果で認知症のような症状も起きなくなった。その上、介護度も3から2に下がり、赤坂さんは施設に入所できてよかったと思っている。
このとき、赤坂さんは老健の費用の仕組みを詳しく知らなかったが、その後「看護師が薬を整理したのは、そういう仕組みだったからか」と腑に落ちたという。
その仕組みとは、老健の「包括払い」。「まるめ」とも呼ばれる定額システムで、医療費や薬代は施設が負担しており、月額入所費用に含まれているのだ。高価な薬を処方すると老健の経営が圧迫されるため、高度な医療ケアが必要な人や高額な薬を服用している人は入所を断られることもある。なお、老健には常勤の医師や看護師が配置されている。
「うちの母の場合は、『まるめ』のおかげで減薬でき、結果オーライなので不満はありません」と言いつつも、「そう言えば、以前短期間利用した別の老健で、『いつも使っている塗り薬がほしい』といくらお願いしてもくれなかったのは、そういうことだったのか」とも思い当たったという。
「そのときは、施設の看護師が意地悪なんだと腹を立てていたんですが、そういうわけではなかったんですね」
塗り薬がそれほど高価とも思えないので、真相はわからないが……。
車いすだから骨粗しょう症の薬は飲まなくていい?
同じように母親が老健に入所して1年になる間中百合子さん(仮名・62)は、老健からこの「包括払い」について説明があったので、理解し納得もしているという。それでも不満がまったくないわけではない。
「母は自宅にいるころ、骨粗しょう症の薬を長く服用していたのですが、老健に入所する際、この薬は高額だということで処方してもらえなくなりました」
明らかに「まるめ」が理由だ。ただ、その説明の仕方に疑問を感じている。
「施設側からは、『お母さまは車いすだから、転倒の危険も少ないので薬は飲まなくてもいいでしょう』と言われたんです」
母親は膝も変形性膝関節症で痛みがあるため、歩行リハビリもできていない。在宅復帰を目的としている老健なのにリハビリもできない、というジレンマはさておき、車いすに加えてリハビリもないとなると、確かに転倒のリスクは低くなる。
「だからといって、薬も飲ませてもらえないとは……。この施設に大きな不満はないし、自宅に戻して介護をする自信もないので、置いてもらえているだけでありがたいのですが」
間中さんの心境は複雑だ。
施設の支払いの仕組みがよくわからない人は少なくないだろう。明細を確認して、疑問があればわかるまで説明してもらうことからはじめてほしい。
取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。











