【友人という病】「女友達はサレ妻だった…」略奪婚した過去を話してしまい、追い詰められる女性の憂鬱～その２～

女友達・倫子さんは、略奪婚された妻だった

ステイホームが叫ばれたコロナ禍中、リモートの飲み会が推奨された。亮子さんも倫子さんとZOOM飲み会を開催する。

しかし、どこにも行っていないので、話題は尽きる。酔いも手伝って、亮子さんは8年間、女友達・倫子さんに言っていないことを話してしまう。

「それは、私が今の夫を略奪婚したことです。当時、夫は43歳で高校生の子供がおり、高額な慰謝料を支払ったこと。それから約20年が経過し、現在36歳と38歳になった子供たちに孫がおり、私に隠れてこそこそと会いに行っては小遣いを渡していることなどを話してしまったんです」

亮子さんには子供がいない。元夫は、亮子さんと同じ年の42歳で離婚した。亮子さんはその後、現在の夫と再婚するも子供はいない。しかし、元夫は、それから2年後に15歳年下の女性と再婚。大企業に勤務するエリートの元夫は、その女性との間に3人の子供を授かり、よき父親として毎日を送っていることをSNSにアップしている。

「SNSって残酷ですよね。私がSNSを始めたときに、元夫の名前を検索したら、別人のように優しそうな顔をして、キレイな若い奥さんと賢そうな子供たち3人と写っている写真がアップされていたんです。しかも、子会社の社長になっており、かなり裕福な生活を送っていました。そういう悔しさや悲しみも、すべて倫子さんに話してしまったんです。倫子さんはいつものように聞いてくれているように感じていましたが、リモートの飲み会で、画面越しに話しているから変化がわからなかったんです」

そんな飲み会が2回ほど続いた後、倫子さんと連絡が取れなくなる。

「お母さんの介護をしているので、忙しいと思っていたら違ったんです。一方的に絶交されていたんです。慌てて共通の知人であるマンドリン仲間に連絡すると、“亮子さんに対して失望したと言っていましたよ”と教えてくれたんです。その人によると、倫子さんは離婚歴があり、その原因は、不倫していた夫が相手の女性と結婚してしまったこと。倫子さんはいわゆる“浮気サレ妻”だったのです」

そんなことを想像せずに、ベラベラと自分のことを話してしまった。しかし、口は災いのもと。浮気や略奪婚をする女性を憎悪する倫子さんは、亮子さんの略奪婚の顛末を記した文章を亮子さんの勤務先に送った。

「私を痛烈に批判する文章を送っていたんです。私が若い男性社員に色目を使っているとか、役員と肉体関係があるとか、事実と違うことばかり書かれていたそうです。それも1回だけでなく、毎日のように送っていた。こんな内容を送るのは、確かめたわけではありませんが、倫子さんしかいないと思います」

亮子さんが勤務していた会社は、コロナ禍で打撃を受けており、人員整理が必要になっていた。

「そこで真っ先にリストラされました。夫に話すとバカにされるので、母に相談したら“私はあなたは不幸になると思っていた。人のモノに手を出す泥棒は幸せになれないのよ”と言われたのです。母は年齢と共に、歯に衣着せぬ物言いをするようになっていましたが、こんなにもひどい言葉を受けるとは思いませんでした」

その後、体調を崩した亮子さんは、ワクチン接種が広がったことを機に、ドラッグストアで販売のアルバイトを始めた。

夫は孫に夢中で老後資金が目減りしている。自分の生活を守ろうにも、十分な貯金はない。そして、亮子さんには子供もいない。

60歳以上の求人は、清掃かサービス業しかなく、7時間の勤務を終えると、指で押して脚がへこむほどむくんでいるという。 恨むのは女友達か、SNSか、元夫か、今の夫か……最も恨むべきは、不倫をしたり、軽々しく秘密を話した過去の自分自身なのかもしれない。

取材・文／沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』（ともに小学館新書）がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』（小学館）、Webサイト『現代ビジネス』（講談社）、『Domani.jp』（小学館）などがある。『女性セブン』（小学館）、『週刊朝日』（朝日新聞出版）などに寄稿している。