中川清秀「裏切り場面」の衝撃

中川清秀(左/演・すがおゆうじ)を殺す利家。(C)NHK

I:さて、与力として柴田勝家の配下にいた前田利家が、秀吉陣営に与することを決断しました。なんと中川清秀(演・すがおゆうじ)を斬るというびっくりの流れになったのです。

A:中川清秀は、もともと池田勝正配下として、本国寺合戦にも出陣している武将でした。

I:本国寺合戦とは、上洛したばかりの将軍足利義昭が三好三人衆に襲われた合戦ですね。『豊臣兄弟!』では僧に扮した小一郎(演・仲野太賀)が時間稼ぎをしていました。あの合戦に、中川清秀が従軍していたのですね。

A:その後は、同じ摂津の荒木村重(演・トータス松本)と行動を共にしていましたが、いろいろあって、この時点では秀吉に与して出陣していたわけです。ところが『豊臣兄弟!』劇中では、柴田側に寝返るという設定で、前田利家に殺害され、首級をとられるという展開になりました。桶狭間合戦を描いた『豊臣兄弟!』第4回では、丸根砦を守備していた佐久間盛重(演・金井浩人)が今川方への寝返りを画策していたという設定で、梁田政綱(演・金子岳憲)に討たれ、その首を今川義元(演・大鶴義丹)の陣に持参するという体で義元本陣の場所を把握し、勝利に導いたという流れでした。賤ヶ岳で柴田側に寝返りを画策して前田利家に討たれた中川清秀は、通説では柴田勝家陣営の佐久間盛政に攻められて討ち死にしたことになっています。

I:ややこしい話ですね。『豊臣兄弟!』の物語上では秀吉を裏切ったことになった中川家は、その後どうなったのでしょう。

A:賤ヶ岳で討ち死にした功を以て、嫡男秀政が秀吉に取り立てられますが、朝鮮出兵の際に、鷹狩の最中に攻められて討ち死に。その不作法を隠ぺいした咎で減封させられましたが、清秀次男の秀成の系統が豊後岡藩主として幕末まで存続します。居城の岡城(大分県竹田市)は「日本100名城」に選定された名城。標高325mの岩山に築かれた山城で、断崖絶壁の石垣からの眺望が美しいのです。「100名城」に選定されているので、当時小学生だった息子とも行きましたが、断崖から眺望を楽しむ息子が落ちやしないかとはらはらしたことを覚えています。

賤ヶ岳七本鑓

I:加藤清正(演・伊藤絃)が鑓を手にして戦う姿が描かれました。有名な「賤ヶ岳七本鑓」ですね。

A:合戦場で躍動する若き秀吉家臣の面々になります。福島正則(演・松崎優輝)、加藤清正、加藤嘉明、脇坂安治、平野長泰(演・西山潤)、片桐且元(演・長友郁真)、糟谷武則の面々になります。合戦後彼らには秀吉から「感状」が与えられています。前述の『秀吉の天下統一戦争』には、感状の一文が掲載されていますので、引用します。三七殿というのは織田信孝のことです。

今度、三七殿謀反に依って、
濃州大柿(大垣)に居陣せしめ候ところ、
柴田修理亮、柳瀬(やながせ)表に至って罷(まか)り出候条、
一戦に及ぶべきため、
一騎懸に馳せ向かい候のところ、
心懸け深きに付いて、はや懸着け、
秀吉眼前に於いて一番鑓を合わす。
その動き比類なく候。
その褒美として三千石宛行(あてが)いおわんぬ。
いよいよ向後奉公の忠勤に依って、
領地を遣はすべきものなり。
仍って件の如し。
(福島正則のみ五千石)

I:感状をもらった若者たちの喜びは半端なかったのでしょうね。でも小一郎の家臣たちも頑張ったはずですよね。舞台裏で小一郎の家臣たちが「なんで俺たちはもらえないの?」とひがんだりすることはなかったのでしょうか。

A:7人以外にも感状をもらった武将がいて、その中には秀長家臣も含まれていたともいわれます。でも、秀吉家臣と小一郎家臣のいがみ合いはあったかもしれないですね。こうした中で、後に小一郎重臣になる桑山重晴(演・住田隆)が登場しました。小一郎家臣団、もっともっと活躍してほしいですよね。せっかく藤堂高虎(演・佳久創)がキャスティングされているわけですから。

I:桑山重晴、なんだか謎のキャラですが、どんな流れになるのでしょうか。

A:さて、劇中では描かれませんでしたが、この時、柴田勝家は備後国鞆の浦(広島県福山市鞆町)にいた将軍足利義昭に共闘を呼びかけていたそうです。こうしたくだりは過去の大河ドラマで描かれたことはありません。『豊臣兄弟!』で足利義昭を演じた尾上右近さんが好演していただけに、「その後の義昭」も登場させてほしかったと思っています。

I:2020年の『麒麟がくる』は明智光秀(演・長谷川博己)の最期まででしたからね。

A:しかし、展開が怒涛の如くですよね。次週、勝家とお市(演・宮崎あおい)の方の運命はどのように描かれるのでしょうか。なんだか今までみたことのない「勝家最期」が見られるような気がします。

I:見逃せないですね。

「つわもの」「頼りになる男」として秀吉から小一郎(左/演・仲野太賀)に託された桑山重晴(右/演・住田隆)。

※高嶋政伸の「高」は正しくは「はしごだか」。

※宮崎あおいの「崎」は正しくは「たつさき」。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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