ブロッコリーが森に? ピザがクリスマスツリーに? 日常にあるものを、別のものに「見立て」た作品を毎日発表し続けているミニチュア作家・田中達也さん。驚き、笑顔にもなる「見立て」作品は多くの人の心をつかみ、Instagramのフォロワーは400万人を突破。
国内外で開催中の展覧会『MINIATURE LIFE展 田中達也 見立ての世界』の来場者数も累計320万人を超えました。作品は世界中に広がり、グローバル企業とのコラボレーションも多数手がけています。今回は新刊『MINIATURE LIFE 365 田中達也の今日の1枚』(小学館)の話を中心に、言葉や文化を超え、ファンを増やしている田中さんの作品の制作背景などを伺いました。

ミニチュア写真家・見立て作家。1981年熊本生まれ。2011年ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を開始。以後、365日欠かさず、作品を発表し続けている。2020年ドバイ国際博覧会 日本館展示クリエーターとして参画、など。Instagramのフォロワーは400万人を超える(2026年1月現在)。著書に『みたてのくみたて 見るだけでひらめくアイデアの本』(ダイヤモンド社)、『めだまのスポット ふたりでさんぽ』(福音館書店)ほか多数。公式サイト
会社員と兼業しながら作家活動
――作品集を見ていると、「こんなふうに見えるのか!」「こんな手もあったのか」とたくさんの驚きがあります。「見立て」という新しいジャンルのアートが生まれた背景についてお聞かせください。

出典:『MINIATURE LIFE 365 田中達也の今日の1枚』
きっかけは、Instagramでした。最初は趣味で風景写真を撮っていたのですが、やはり人や動物など被写体が欲しいと思うように。そこで、子供の頃から好きで集めていたミニチュア⼈形を被写体に、写真を撮り始めたのです。
Instagramは反応がダイレクトに「いいね」として現れます。ミニチュアの作品を撮っているうちに、多くの人がいいと思ってくれる作品は、背景に物語があることに気づきました。それをどう表現していくかを考えるうちに「見立て」という作品につながっていったのです。
――作品を投稿し始めた当初は広告制作会社に勤務し、デザイナーとして働いていたと伺いました。
はい。そもそも、写真を始めたきっかけも仕事でした。デザイナーの目線から「こういう写真が欲しい」とカメラマンに指示しているうちに、カメラを手にするようになったのです。写真のいいところは、構図、配色、バランスなど、自分が考える世界をすぐに表現できること。さらに、空気感や雰囲気、個性や思いも表現することができます。
最初は、会社員と兼業していたのですが、やがて退職し、作家としての活動に専念することになりました。

――田中さんの見立て作品は、「言い得て妙」なタイトルとセットになっています。その言語センスも、広告制作会社の会社員時代に培われたものでしょうか。
それはあります。広告の使命は、商品やサービスのいいところをわかりやすく伝えること。誰もが親しめて、わかりやすい内容の広告は、多くの人に届きます。また背景の時間の流れや、蓄積した思いが表現できると、共感をいただき、ファンになってもらうことにもつながっていく。
僕の仕事は、そういう表現を考えることだったので、今こうして振り返ってみると、仕事で身につけたスキルが、作品制作に役立っているとわかりました。
見立て作品の制作の流れは、季節やニュース、記念日などテーマを決め、そこにモチーフを決めていきます。モチーフは、単に形が似ているだけでなく、「なぜそれを選んだのか」という理由付けが重要。無関係なものは使いません。

出典:『MINIATURE LIFE 365 田中達也の今日の1枚』
作品名は必ず作品を撮り終わった後に考えています。まず、見⽴てる前のモチーフに関係する⾔葉を20〜30ほど出して、見⽴てた後の風景に関係する⾔葉を20〜30ほど出す。そして、その言葉同士を比べていくと、似ている言葉が見つかるのです。これらを掛け合わせて、作品のタイトルを決めていきます。

出典:『MINIATURE LIFE 365 田中達也の今日の1枚』
日本特有の「言葉の文化」が作品に生きている……【次のページに続きます】











