創業110余年日本橋で人気の蕎麦の名店が銀座で旨さを極める
師走になると無性に蕎麦が恋しくなる。熱々の「かけ」で温まるもよし、一杯やったあとに「もり」で締めてもこの上なく旨い。この楽しみは今も昔も変わらない。東京では江戸初期から、そば粉を面状にした蕎麦が食べられ始め、浮世絵などで散見されるように、時を経ずして江戸庶民の食文化の一つとなった。一説によれば東京の蕎麦は日本橋が発祥で、江戸にできた初めての蕎麦屋も日本橋にあったといわれる。そんなゆかりから、今でも日本橋には多くの老舗が残っている。中でも、明治35年(1902年)の創業から、四代百年以上にわたってのれんを守る「日本ばし やぶ久」は、長く蕎麦好きに愛されてきた日本橋の名店。当地にあった「やぶ」という蕎麦屋を初代店主・久次郎が引き継いだことで屋号を「やぶ久」と命名し、、現在も当時と同じ場所で商いを続け繁盛している。
初代より受け継がれた一家相伝の味が楽しめる新店として、今年、銀座レンガ通りに開店したのが「日本ばし やぶ久 銀座店」だ。
昭和の趣が残る本店に対し、銀座の街の華やかな賑わいを感じさせる、居心地のいい洗練された佇まいが特徴で、旬の素材を使った蕎麦や、銀座店だけの一品料理、蕎麦会席などちょっと贅沢な味もここでは堪能できる。
そば粉は、日本橋の本店と同じく、北海道産と茨城産のいいところだけをブレンドしたものを使った、そば粉10、つなぎの小麦粉2の割合で配合した、“外二(そとに)”というもの。芳醇な香り立ちと、切れにくく、のどごしなめらかな蕎麦の味わいを引き立てるつゆは、特注した1.2mmの厚削り本枯鰹節と宗田節をふんだん用い、添加物は使わず、水、醤油、味醂、砂糖とともじっくり時間をかけて煮出した風味豊かな濃い口。蕎麦好きが愛してやまない、“やぶ久”の伝統の味を楽しめる。本店の看板メニューである、上質な鰹節を贅沢に使用した出汁で作る蕎麦屋らしい『カレー南蛮そば』は銀座店でも味わうことができる。
友人・家族との年忘れは個室でいただく伝統の「鴨鍋」
この時期は、年の瀬に向けて忘年会も多くなるが、4名掛けの完全個室と、ゆったりと寛げる半個室のあるため、同僚や気の置けない友人と食べて、飲んで、語らう店としても最適である。おすすめ料理はこの季節のみ提供している「鴨鍋コース」だ。
蕎麦屋の品書きに「鴨南蛮」はなくてはならない一品であるほど、蕎麦と鴨肉の相性はいいものだが、上質な鴨肉だけを提供する“やぶ久”こだわりの鴨鍋は別格の味わい。煮ることでオリジナルの出汁がまんべんなく肉や野菜へ染み込み、しかも、この肉や野菜の旨いこと。会話をしながら箸がどんどん進んでいく。
主役となる蕎麦や鴨の美味しさを一層引き立てるお酒も、日本酒やシャンパン、ワイン、蕎麦ビール、オリジナルの焼酎と好みに応じて用意。料理との相性を考えて銘柄は厳選されている。板わさ、味噌、蕎麦がき、出汁巻き玉子など、熟練の板前が腕を振るう、一品料理をつまみに宴も最高潮に。鍋に舌鼓を打ったあとは、江戸っ子に倣い自慢のせいろもりで締める。年忘れにふさわしい贅沢な時間を過ごしていただきたい。
日本ばし やぶ久 銀座店
https://www.yabukyu-ginza.com/
住所/東京都中央区銀座3-3-6銀座モリタビルB1
営業時間/11:00~15:00(L.O.14:30)
17:00~22:30(L.O.22:00)
定休日/無休
アクセス/東京メトロ各線「銀座駅」より徒歩3分、東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」より徒歩3分、JR京浜東北線・山手線、東京メトロ有楽町線「有楽町駅」より徒歩5分
クレジットカード/VISA、Mastercard、JCB、AMERICAN EXPRESS、Diners Club、Discover Card、UC CARD、SAISON CARD、NICOS、銀聯。交通系ICカード、電子マネー使用可
文/安藤政弘 撮影/乾 晋也