「リードタイム」という言葉をご存じですか? マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」で、生産現場で重要な「リードタイム」の意味などについて学びましょう。

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生産現場で時間がかかりすぎる工程があり、悩んではいませんか。製品を製造する際に各工程の始まりから終わりまでにかかる時間を、「リードタイム」と呼びます。このリードタイムが長いと、コストが余計にかかったり、在庫を余分に抱えたりといった事態に陥りやすく、損失にもつながるでしょう。

この記事では、リードタイムの意味と短縮するメリット、および短縮する方法を紹介します。最後までお読みいただき、適切にリードタイムを短縮して企業の収益率を向上させましょう。

リードタイムとは? 数え方は?

リードタイム(Lead time)とは、各工程の始まりから終わりまでにかかる所要期間です。

物流においては、調達・製造・出荷・配達と、製品を受注してから納品するまでにかかる時間を指します。

他方で、IT業界では開発をリードタイムとして扱うなど、その意味は業界によって同一ではありません。

リードタイムは発注当日を起点として、翌日を「リードタイム1日」、その次の日を「リードタイム2日」と呼び、基本的に休業日を含まず、営業日単位で考えます。

例えば、9月1日に発注され、9月3日に納品された場合は「リードタイム2日」となります。

開発リードタイム

開発リードタイムとは、製品の企画から製品・工程設計までの期間です。開発リードタイムには、開発におけるコンセプトを実現するために計画・実験などを繰り返していく「詳細設計」や、生産ラインや型を作り込んでいく「生産準備」の過程、資材や調達先の選定、製造から出荷までのプランニング、図面の作成なども含まれます。

製品を開発する際には、自社や競合の分析や市場調査などに時間を要します。そのため、日頃から市場の変化や世の中のニーズを適切に把握しておくと、リードタイムの短縮につながるでしょう。

そうして、開発リードタイムを短縮できれば、企業の成長スピードが加速することも期待できます。

調達リードタイム

調達リードタイムとは、製品の生産に必要な部品や原材料を発注してから、工場などの生産現場に届くまでの期間を指します。

調達のリードタイムは、発注の時期や発注数、頻度のほか、新規または既存の取引先かによって変わってきます。ときには、調達先の選定や交渉も必要になるため、長期になってしまうケースがある点を心に留めておきましょう。

部品や原材料の発注先の生産リードタイムや配送リードタイムによっても、自社の調達リードタイムは異なります。多くの種類の部品を使っている製品は、あらゆる場所から材料を調達しているケースがあるため、多くの場合で調達リードタイムが長くなります。

生産リードタイム

生産リードタイムとは、材料を加工して完成した製品を発注先へ出荷するまでの期間です。

加工や組み立てといった作業そのものの所要時間だけでなく、発注されるまでの製品が倉庫にある時間や生産工程における待ち時間も含まれています。そのため、工程間の仕掛け在庫量に比例してリードタイムが増加します。それだけでなく、生産リードタイムでは製造ラインの不良による作り直しもすべてカウントしなければなりません。

製品ごとに製造ラインが大きく異なるため、各製品のリードタイムをあらかじめ把握しておくことが大切です。そうすることで、早期にエラーが発見でき、致命的な問題となる前に対応・対策することができるでしょう。

配送リードタイム

配送リードタイムは「物流リードタイム」とも呼ばれ、工場や倉庫にある製品の出荷依頼があってから発注先に納品するまでの期間を指します。

倉庫での出荷指示や検品・ピッキングなどの準備、トラックやフェリーなどによる輸送の工程が配送リードタイムに当たります。

こちらは納品先への距離や配送先のルート、配送方法や人員により影響を受ける部分です。受注を電話やFAXなどで行うと人的ミスや共有漏れにより、配送リードタイムが長くなる傾向にあります。

配送リードタイムが長くなると顧客を待たせしてしまうだけでなく、販売機会を逃して損失を招いてしまうこともあります。

リードタイムと納期の違い

リードタイムと納期は混同されやすい単語ですが、用語の意味は同じではありません。

リードタイムは発注から納品までの『期間』を指し「リードタイム〇日間」と表します。

対して、納期とは製品やお金などを納入する『期限』を指し、「〇月〇日〇時まで」と具体的な日にちや時間で表されます。

リードタイムを短縮するメリット

リードタイムを短縮させるメリットを知ることで、どの程度コストをかけるのかについても決まるでしょう。ここからは、リードタイムを短縮するメリットを3つ紹介します。

コストを削減できる

製造途中の在庫を管理するにも、場所や管理工数、人員が必要になります。リードタイムを短縮できると在庫の減少につながり、管理のための人員コストの削減が可能です。保管するためのスペースも削減できるため、空いた場所を有効活用できるでしょう。

また、取り扱う製品が、時間の経過とともに劣化してしまう性質の場合、受注してから出荷までの時間を短くすることで保管時間も短縮され、廃棄する製品を減らすことができます。これにより、収益率の向上につながるでしょう。

リードタイムが長い場合、倉庫内に在庫はあるものの企業には現金がない状態になります。リードタイムを短縮してなるべく早期に現金化できるようなシステムにすると、キャッシュフローの悪化を防げるのもメリットです。

消費者からのイメージが上がる

リードタイムが短縮されると、受注があってから顧客の手元に製品が届くまでの期間が短縮されます。現在、サービスの差別化として即日発送や即日受け取りに対応する企業も増えています。同じ価格であるならば、手元に早く製品が届く企業を利用したいと思う消費者も多いでしょう。特に品質が各社で似通っており、製品単体での差別化が難しい企業の場合、発送スピードが差別化のポイントとなります。

つまり、リードタイムが長くなると機会損失を生んでしまうということです。製造業においてはQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期の略)が重視されており、納期は競争優位性を獲得するためのポイントと位置付けられているのです。

市場の変化に対応できる

リードタイムが長いと発注に対して即座に対応できないため、ある程度の在庫を抱えることになります。しかし、現在は市場の変化が著しい時代に突入しているため、消費者の需要が変わり、抱えている在庫が売れなくなってしまう事態も起こりうるでしょう。

リードタイムを短縮して生産にかかる期間を短くできると、受注がきてからすぐに製品を作れるため、余分な在庫を抱えずにすみます。また、待ち時間を削減することで手の空いている従業員や機械を別の作業に充てられるでしょう。

同じ製品に関する作業にのみリソースを割くのでなく柔軟性を持たせられるため、顧客のニーズに応じて人員などを適切に配分できます。

リードタイムの計算方法と特徴

リードタイムを計算するための計算式として、フォワード法とバックフォワード法があります。それぞれ解説します。

フォワード法

フォワード法(Forward method)は、着手する日を決定してから納品までにかかる工程を明らかにし、完了までの全体的な日数を積み上げ式でカウントする方法です。なお、この際、ひとつの日程で複数の工程を作業できるのであれば並行して行う計画を立てましょう。

例えば、着手日が9月1日で工程が3つあった場合、以下のように表せます。

上記の場合、9月4日に工程2と3を進められるため、リードタイムは着手日からカウントして5日となります。

バックフォワード法

バックフォワード法(Backward method)とは、納品日から逆算してリードタイムを算出する方法です。納期や出荷予定日などの最終工程を起点として、納品日から逆算して調達や生産、出荷などの所要日数を見積もります。バックフォワード法は納期が決まっているときや、工程間で並行して作業できない際に有効です。

もし、こちらの方法を使う場合、工程にゆとりを設けないと、エラーが発生して遅延が起きた際に、間に合わなくなってしまうリスクがあるため、注意が必要です。

リードタイムの短縮方法

リードタイムを短縮させると、あらゆるメリットがあることを説明しました。ここからは、具体的なリードタイムの短縮方法を紹介します。

開発リードタイムの短縮方法

開発リードタイムを短縮するには、まず製造に使う部品や仕様を統一化するとよいでしょう。仮に、複数の製品で統一された部品や仕様が使われていれば、部品を製品ごとに管理・製造したり、製品ごとに製造方法を大幅に変更したりする必要がなくなります。見積もりの作成や手配などの管理もスムーズになるでしょう。

他にも、工程や部署ごとで使用システムが異なる場合も、統一させることでリードタイム短縮につながります。見積もり管理システムや資材の発注システムが一元で管理されていると、状況がわかりやすくなるでしょう。

調達リードタイムの短縮方法

調達リードタイムは取引先の都合があり、なかなか改善するのが難しい部分です。

例えば、海外から素材を調達する場合、その国の情勢によっては予定よりも大幅に素材が届くのが遅くなってしまうケースもあるでしょう。そのため、自社ではまず余裕を持ってスケジュールを立てなければならない点を心に留めておきましょう。

調達リードタイムは発注漏れや、発注していても仕入れ先による連携ミスなどで長くなる可能性があります。そのようなエラーをなくすために、事前に社内で発注漏れが起こりやすいケースの把握や、チェック体制の強化、仕入れ先との情報共有をしましょう。

生産リードタイムの短縮方法

生産リードタイムでは、材料の在庫を切らすことによって待ち時間が発生してしまうため、まずは調達リードタイムを短縮させましょう。

その他にも、システムや機械が古く、生産を効率化できていないようであれば最新版の導入を検討したり、人員が足りていないようであれば人件費とのバランスを考えて補充したりすることも解決策のひとつです。従業員によって強み弱みが異なるため、それぞれの人員の特徴を把握し、適切に人員配置することも有効です。

なお、生産リードタイムは出荷までの工程も該当し、倉庫内での作業も含まれます。倉庫までの動線を改善したり、ピッキングやラベリングを効率化したりといった方法も検討できるでしょう。

配送リードタイムの短縮方法

配送リードタイムの短縮を考える際には、まず自社で配送をしているかがポイントとなります。自社で輸送まで行う場合は、ルートを見直すとリードタイムの短縮が期待できます。

ベテランの配送員が輸送できるケースばかりではなく、ときには不慣れな従業員が配送するときもあるでしょう。その際に、どうしてもルートを読むのが難しく、効率的に配送できなくなってしまうこともあります。

そのような際は、配送ルート最適化ツールを検討するのもよいでしょう。これは、AIで配送のための最適なルートを作成できるというツールで、リアルタイムの規制情報や交通状況を考慮したルート案内ができるようになります。

配送を業者に依頼している場合は、業者や輸送方法の見直しも有効です。例えば、トラックなどの陸路のみで輸送している場合は船やフェリーなどの海路、飛行機などの空路を利用することも検討しましょう。

リードタイム短縮の注意点・リスク

リードタイムの短縮は重要ですが、活動するなかで注意しなければならない点もあります。順に紹介します。

工程を削減しすぎない

リードタイムを削減するために工程を省いた結果、その工程が実は品質の維持や事故の防止に必要な工程であったとわかる可能性があるでしょう。

工程を洗い出し、統合できる作業や省ける工程を見直す際には、現場で働く従業員の声を十分に聞き、工程を削減したあとに想定できるリスクも把握しておく必要があります。必要な検討時間を省いた結果、品質が低下する可能性があるため注意が必要です。

ミスが起きてしまった場合、企業の信頼に影響が出たり、作業工程が増えてリードタイムが伸びてしまったりする可能性があります。そのため、人員や他の工程とのバランスを考え、無理のない計画で徐々にリードタイムを短縮していくようにしましょう。

費用対効果を確認する

リードタイムを短縮すると、生産性の向上や収益率の増加を期待できることは事実です。しかし、「リードタイムを短縮する」という手段にとらわれるがあまり、本来の目的である顧客満足度や収益率の向上がおろそかになってはいけません。

例えば、最新の機械や情報を一元管理できるソフトの導入、人員の増加には多くの費用がかかります。たしかに、リードタイムは短縮されるかもしれませんが、利益がコストを上回らないようでは本末転倒です。あくまでも目的を意識し、コストをかけた際にはどのくらいのリターンがあるのかを見積もりましょう。

仮にコストをかけても成果が出ていない場合、改善した方法や削減した工程が適切ではない可能性があります。計画に対して行動が遅れている場合、施策自体を見直して別の対策を検討しましょう。

まとめ

収益の拡大や顧客満足度の向上が期待できる点が、リードタイム短縮のメリットです。ただし、やみくもに工程のみを削ってしまっては、逆にリードタイムが増えてしまったり、事故が起こったりしてしまう恐れがあります。

リードタイムを短縮する際には現場の意見を聞いて懸念点を洗い出し、コストのバランスも検討することで効果を最大化できます。無理なく適切にリードタイムを短縮し、企業のビジネスを拡大させましょう。

【この記事を書いた人】
識学総研 編集部/株式会社識学編集部です。『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作中。3,000社以上に導入された識学メソッドも公開中です。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/
コンサルタント紹介はこちらから https://corp.shikigaku.jp/introduction/consultant

 

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