「介護の周辺環境が、本当に厳しくなるのは2035年です」と淑徳大学教授・介護問題の専門家である結城康博先生は指摘する。現在は、「団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になり、超・超高齢社会になる2025年」が問題視されているが、問題が深刻化するのはその10年後だというのだ。
「なぜなら、団塊の世代が85歳以上になると、認知症が増える要介護3~5の認定率が高まるからです」(※1)(結城教授)
2035年には、現在の50代も60~70代になり、80代以上の親を介護する“老老介護”も予想される。公的な介護保険制度ではカバーできなくなる可能性もあるだろう。
そこで、今、注目されているのは「民間の介護保険」だ。しかし、どれを選んでよいかわからない。選び方のポイントを、これからの介護の未来予想図とともに紹介していく。
■民間の介護保険に入っていますか? ~介護費用(月額)は平均約8万円(※2)! 初期費用は平均約69万円(※3)! 突然始まる介護に備えて~
※1 厚生労働省社会保障審議会介護保険部会「介護制度をめぐる状況について(資料3)」(2019年度)P53 参照。※2※3 生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2018年)参照。
平均寿命が延び、介護は早くから準備しておけば、慌てずに済むことを知る人が増え、民間の介護保険の保有契約件数は伸びている。上のグラフのように、保険研究所の『インシュアランス生命保険(統計号)』によると、2009年は234.2万件だったのが、2019年は347.8万件と、この10年で148%も伸長しているのだ。
「介護保障に対する意識は変わり、加入する年齢も、50代が多くなっています。親の介護が始まる人もいて、自らの介護について考え出す人も増えた結果でしょう」(結城教授)
『サライ』読者は予期せぬ介護の渦中にいる人が多い。
「地方で一人暮らしをしていた85歳の義母が認知症に。夫の希望で、東京の自宅に引き取ったのですが、リフォーム代などに莫大なお金がかかり、次女は私立の大学進学を諦めました。こんな迷惑を、娘の子供たちにかけたくありません」(55歳・女性・会社員)
「同居する88歳の父が家の前で転倒し、大腿骨を骨折。車いす生活になりました。介護は体力も必要で、仕事で忙しい私と息子、持病がある妻では十分に回せず、途方に暮れています。もっと貯えがあれば……と思う日々です」(56歳・男性・会社役員)
突然始まる親の介護で、パニックにならないためにどうすればよいのか。前出の結城教授は「今日始まってもおかしくないのが、介護です。一般的には、介護は10年を超えることも珍しくなく、お金もかかります。そのためには早くから備えておくことが大切なのです」
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■50代、今そこにある3つの危機
~親の介護、自分自身が要介護の可能性、自分自身の老後資金の確保~
知っておきたい「介護が必要となった主な原因」
グラフを参照にすると、要介護になる主な原因の4割は、生活習慣病をはじめとする疾病だとわかる。高齢による衰弱や転倒ではないのだ。ということは、50代も他人事ではないのだ。
現在、高血圧や糖尿病、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病の患者数は約1,830万人にも上り(平成26年「患者調査」より)、40歳以上の約4人に1人が生活習慣病と言われている。
「自分自身が要介護となってしまった時に、親が認知症や高齢による衰弱によって要介護状態になる可能性もあるのです」(結城教授)
これにより、子供が大学を辞めたり、キャリア形成の大切な時期に、介護がきっかけとなって躓いてしまうケースもある。子供が学業や仕事に邁進するためにも、備えは早い方がよいかもしれない。
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■介護のエキスパート・結城教授からの提言①
2035年以降の介護の未来像“介護難民”とは?
ここで、冒頭で取り上げた、「2035年問題(※4)」について解説する。
「75~80歳で元気な人は多いですが、80歳を過ぎた頃から多くの人は足腰や脳の機能が低下し、認知症を発症する可能性も高くなってきます。そして、85歳を超えると約半数は要介護認定者となる話をしました。約800万人の団塊の世代が85歳以上になる、2035年は大きな問題だと感じています」(結城教授)
しかし、介護業界は慢性的な人手不足。少子高齢化も加速しており、“介護難民”も想定される。そうならないために必要なのはお金の備えだ。
「介護業界の人手不足はさらに深刻化し、介護を受けたくても受けられない可能性もあるのです。介護を受ける人は、介護職の方から選ばれる時代になる、ということです。介護職から選ばれ、介護を受けるためには、介護職への基本的な挨拶や感謝の気持ちを忘れず、『支えられ上手になる』努力をすることが大切です。そして、充実した介護サービスを受けるためには、何よりも受けられるだけの“財力”が必要です」(結城教授)
※4 2025年問題:1947年から1949年生まれの「団塊の世代」が75歳以上になる頃に起こると予測されるさまざまな問題。少子高齢化の加速により、労働力の供給が低くなるため、人口、社会、経済、医療の各方面でもたらす影響は大きいとされている
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■介護のエキスパート・結城教授からの提言②
50代から介護資金を備えれば、十分間に合う。民間の介護保険加入の検討を。
莫大な費用が予想される介護問題だが、結城教授は「50代から備えれば基本的に問題はない」と語る。
「まず、今、50代の方は、親がいざ要介護状態になっても慌てないために、元気なうちから介護やお金の使い方についても遠慮なく話し合うことが大切です。また、普段から親子で介護について話し合うことで、考え方や知識を身に付けていくことができます。その中で、今のあなたが、約30年後にどういう介護を受けたいかを考えることができるでしょう」(結城教授)
そして、50代になったら『残りの人生をどう生きようか』という観点で、本気で老後の人生設計を始めることが大切だ。
「50代から計画的に老後資金を貯蓄できるどうかで、80代のときに介護の『勝ち組』になるか、『負け組』になるかが決まります。例えば、毎年100万円ずつ貯蓄できれば、20年で2000万円が貯まります。目標をもつことが大事なのです。少額でもよいので、できる範囲の金額からでも、コツコツと貯蓄に励みましょう」
定年退職した後の、具体的な生活を考えることも重要だ。
「定年退職をした後は、現役時代の生活レベル(支出の仕方など)を見直さなければ老後資金が破綻する可能性があります。退職後、現役時代と大きく変わるのは、時間があるということ。時間を有効活用する意識を高め、積極的に再雇用制度やアルバイトで働くことをおすすめします。働くことは収入を得られるだけでなく、人とのネットワークができるし、“介護予防”にもなります」
とはいえ、サライ世代は、まだ子供に学費がかかったり、思うように貯金ができない人も少なくない。そんな人も負担なく、老後に備えられるのは、民間の介護保険だという。
「貯蓄が十分でない人や、年金に不安がある人、介護状態になったときに家族に負担をかけたくない人、充実した介護生活を送りたい人は、民間の介護保険への加入が有効です。特に認知症になると、介護度合いにもよりますが、通院やデイサービスを利用する頻度も多くなる可能性があります。そうなると、公的介護保険だけではカバーできない費用負担が出てくるのです。例えば、デイサービスでの食事費やおやつ費、レクリエーション費、通院のための交通費などが負担になってきます」
そういう介護の「現実」を知り、今から備えることで、充実した介護生活が送れるのだ。
「民間の介護保険による一時金や年金の給付は、自己負担で受けられる介護サービスの選択肢が広がります。在宅介護が難しくなってきた場合も、施設介護(老人ホームなど)の入居資金などにも使え、より充実した介護生活が送れることにつながります」
介護を他人事としないことも大切だ。
「介護を受ける可能性は誰にでもあります。高齢になり、介護される生活が目前に迫ってから慌てるよりも、今から着々と情報を集め、家族で話し合うなどして、余裕のあるうちにライフプランをじっくりと立て始めましょう。そのようなときに、民間の介護保険は有望な選択肢の一つになるはずです」
民間の介護保険には、さまざまな認定基準があるが、公的介護保険制度の認定と連動したものはわかりやすく、また「要介護1以上の認定でその後の保険料の払込みが不要」といったような明快な特長があるものは、加入時の選ぶポイントになっているようだ。
では、どの介護保険に入ればよいのかと迷ったら、民間の介護保険の中でおすすめなのは「あんしん介護」シリーズ(朝日生命)だ。公的介護保険制度の「要介護1」以上の認定で、その後の保険料の払込みが不要になる。また、支払事由が公的介護保険制度と連動していてわかりやすいのがメリットだ。
介護保障は保険料が割安な50代のうちから加入しておいた方が安心だ。また、同シリーズは、年金(終身)と一時金の組み合わせも可能。将来像に合わせて、計画を立てられる保険なのだ。
老後を考えたときに、なによりも避けたいのは、“負け組高齢者”となり、貧困の中、生活をしなければならないことだ。それに、子供や孫がいる人なら、彼らに負担をかけるのも絶対に回避したい。そのために、今から介護とお金について、真剣に考えてみてはいかがだろうか。
●朝日生命の介護保険「あんしん介護」のスペシャルサイトはこちら
構成・文/前川亜紀 イラスト/たばやん グラフ/平沢 剛