中学生記者、選挙現場を奔る!
『こちら日本中学生新聞』 川中だいじ著

もし、なんの事前情報もなく、川中だいじ記者の取材のやりとりや書いた記事を目にしたとしたら、その視点の鋭さに思わず舌を巻くに違いない。なにせ彼は、執筆当時、14歳の「中学生記者」なのだから。
例えば2024年秋の兵庫県知事の出直し選挙。斎藤元彦知事へのパワハラ告発をめぐって、不信任を突きつけられた斎藤知事は、辞職・出直し選を選んだ。この知事選の模様を、川中記者は追う。しかも候補者全員の演説会場に足を運び、同じ問いをぶつけた。
「他の候補者の公約の中で、知事になったら推し進めたいと思う政策はあるか」
同じ問いだけに、候補者の誠実さ・不誠実さも浮かび上がる。公平でもあり、見事な問いだ。
同年の京都市長選挙の時には、自宅から電車で1時間かけて現場に通った。選挙があるといてもたってもいられないのだ。
川中記者は、市長選のポスターに目をとめる。そこには、若い男女の写真の上に、「推し選」と大きく書かれていた。
《候補者を「推し」「選ぶ」、確かに選挙はそれくらいポップであっていい。だけど、政治は生活に直結しているのだからポップなだけでは怖い》
このことは、その後の選挙によって明らかになっていくと川中記者は続けるのだが、まるで未来を予見しているようではないか。
若者が政治に無関心な理由
本書は川中だいじ記者の活動記録でもある。小学3年生の時に参院選を目の当たりにして興味を覚え、大阪の都構想住民投票の際は、小学校でアンケートをとった。同年代の関心度を計るためだ。だが先生からは頭ごなしに「政治の話をするな!」と叱られる。
川中記者は折れない。自分でネットを検索し、国連総会で採択された国際条約「子どもの権利条約」に「意見表明権」が記されていることを知る。政治などについて意見をいう権利を認めていたのである。先生や大人たちのほうが間違っていたのだ。「若者の政治への無関心」は常套句だが、こうした状況を生み出していたのは、学校や社会だった。
川中記者の行動力には目を見張る。広島G7サミットを取材するために外務省と何度も掛け合い(このやりとりが興味深い)、中学校生活では、1年生から生徒会長選挙に打って出、当選も落選も経験する。大阪万博、大阪IR構想、森友事件……地元大阪を中心に、現場に足を運び、人に話を聞く。ジャーナリズムの原点がここにあった。
マンガを読むように絵巻を楽しむ
『絵巻の楽しみ』 山本陽子著

中国から伝わり、日本で独自の発展を遂げた絵巻は、平安から室町までが全盛期で、『鳥獣戯画』や『信貴山縁起』など多くの傑作が生まれた。字の読めない人にもわかるように絵を入れたのが始まりなので、いわば現代のマンガと同じ読まれ方をしていたと著者はいう。絵巻は、楽しんだもの勝ちなのだ。本書は、18の絵巻をオールカラーで紹介、見方のコツを伝える。例えば、国宝『源氏物語絵巻』の登場人物は全員、そら豆のような輪郭の白塗りの顔に糸を引いたような目と小さな口、見分けもつかず良さもわからない、と手厳しい。だが、あるポイントから著者と一緒に絵巻を見ていくと……。ガラッと印象が変わり、読者は魅力に気づき始める。鮮やかな手法だ。
時間旅行の謎解きに出かけよう
『タイムトラベル基礎講座 時間のしくみからタイムリープの実現性まで』 ブライアン・クレッグ著 柴田譲治訳

アインシュタインを信じるならば、タイムトラベルは実現可能だ。相対性理論によって理論的に証明されている。「本当?」と疑ったあなた。本書を手に取ることを勧める。この本は、英国の名誉博士号を持つ科学ライターの著者が、10のレッスンを通じて、「タイムトラベルを実現させる旅」に連れていってくれる科学読み物だ。どんな理屈で時間旅行が可能なのか。何が必要なのか。数式も難解な理論も用いず、タイムトラベルそのものを解き明かしていく。著者はいう。人類は約120年前に空を飛び始め、50年ほど前から他の天体に到達できるようになったのだから、例えば小型の探査機を未来に送ることは夢物語ではない、と。
選・文/角山祥道 ※文中、敬称略。
※『サライ』2026年7月号より












