
最新の『人口動態統計』(2025年・厚生労働省)によると、2025年に離婚した夫婦のうち、同居期間が20年以上という、いわゆる「熟年離婚」の割合が22.2%と過去最高となった。
この背景には、女性の社会進出があるが、2007年4月から離婚時の年金分割制度が始まったこともあるだろう。さらに2026年4月から、離婚後の財産分与の請求期間が、離婚後2年から5年に延長されたことも考えられる。
正和さん(65歳)は60歳で定年後、妻から「無職を続けたら離婚だ!」と言われ、今のNPO法人で働いている。正和さんは元地方公務員だ。前編では熱血教師だった両親について、正和さんが経験した90年代の不妊治療について詳述している。
【これまでの経緯は前編で】
キャリアの最後の15年で、仕事に燃えた
正和さんの妻は、45歳まで地方銀行に勤務していたが、退職する。そして、派遣社員をしつつ、ファイナンシャル・プランニング技能検定ほか、心理にまつわる資格を取得。さらに、友人たちと趣味や旅行を楽しむようになった。一方、正和さんは45歳から仕事に打ち込むようになっていた。
「僕は、45歳まで割とゆるい部署にいました。地域振興課、税務課、環境課、市民課、総務課などで、書類のチェックを中心にデスクワークをしていたのです。でもキャリアの後半戦で、激務の土木課や観光振興課に配属され、仕事の面白さに目覚めたのです」
地方公務員は異動が多い。通常、4〜5年で異動になるが、正和さんは土木課に異例の長さで10年近くいたという。
「道路拡張のための用地買収交渉などがあったからです。僕は年の功もあり、地権者さんから信用してもらえた。印象に残っているのは、『土地を売らない』と言っていたある地権者の男性です。僕と同年代のその人は、僕が名刺を差し出すと、『あなたは、〇〇中学校の先生の息子さん?』と言われました。そして『お父さんに似ていますね。先生は僕の恩人なんです。先生がいたから、今がある。あのとき、ぶん殴ってくれたから、悪い道に行かなかったんですよ』と父を思い出してくれた。亡くなったことを伝えたら、墓参りに行ってくれました。僕の苗字が珍しいので、思い出してくれたんでしょうね。
この土地買収で、母の足跡にも触れることができた。仕事をしていると、いろんな人と出会い、繋がっていくんですよ。これもまた仕事の醍醐味ですよね」
55歳からは観光振興課に異動になった。大規模イベントの運営、マスコミ対応、市の魅力を発信するための広告企画など、あらゆる仕事を行った。
「どこかの広告代理店が主催する勉強会に参加して、SNS運用を始めたのもこの頃。テレビ局や雑誌社の人、映画監督など、当時の僕からすると雲の上の人から相談され、頼られるんですよ。1日1日が濃厚で輝いていた。もっと若い頃にこういう仕事をしたかったけれど、若い頃は傲慢だったからできなかったんだろうな。
それにつけても、キャリアの最後の15年で、こんなに仕事に熱中できるとは思いませんでした。でも、新型コロナのせいで1年かけて仕込んできたイベントがパーになったり、他にも努力してきたことが無になる喪失感も味わいました。職員同士で励まし合ったのも今は思い出。
そして、迎えた60歳。公務員の定年延長制度は2023年から始まりましたが、僕の定年の年は2021年なのでスパッと辞めるしかなかった」
公務員は、年度末3月31日で定年になる。正和さんのことは後輩たちが集まって、送り出してくれた。
「男泣きしましたよ。あと5年、いや1年でいい。働きたかった。でもそれはできない。再任用もありましたが、給料は半額で裁量もないので辞退しました」
【再就職は楽勝だと思っていたが……次のページに続きます】











