
江上天主堂
タブノキの巨木に守られるように立つ江上天主堂。クリーム色の外壁が緑に映える。大正7年(1918)竣工。重要文化財。●住所:長崎県五島市奈留町大串1131-2 電話:095・823・7650(長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター) 開館時間:9時~12時、13時~16時(第3日曜は~14時30分。教会行事により見学不可の場合あり)(※) 定休日:月曜(祝日の場合は翌日) 交通アクセス:奈留港から車で約15分
※「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター」公式サイトより2日前までに事前連絡が必要。
奈留島は五島列島のほぼ中央に浮かぶ。島の北西部には森が広がり、そのなかにひっそりと江上天主堂が立っている。天主堂前の広い空き地は平成10年に廃校となった江上小学校の旧敷地で、そこから江上天主堂を眺めると、木々の間からクリーム色の板張りの壁や水色の窓枠がのぞく。

天主堂の前に立つと、建物が地面から浮いているかのような印象を受ける。これは、床下の柱が露出しているためだ。海や湧水による湿気から建物を守るために通風効果をもたせた床下空間を確保する必要があるからだろう。十字形に穴を開けた屋根の軒天井にも湿気対策を見ることができる。

正面入口にあしらわれた花模様。窓ガラスなど、建物には随所に花模様が施されている。

床下は地面から約1m高く上げられた。石敷きの玄関部分を除くと、床下はすべて周囲に開放されている。

屋根の軒裏には十字形の穴が規則的に開けられている。屋根裏への通風と意匠の二重の効果を狙ったもの。
江上天主堂は江上集落の信徒らが漁で得た収入を持ち寄って建設された。そのため予算的な制約もあった。ひとつの例が、内部の柱に木目を手描きで施していることだ。解説の山田さんは、木目の揃った材木を確保できなかったため、多様な材木の見栄えを統一するための工夫だったと話す。ほかにも、ステンドグラスに手描きで花が描かれているなど、限られた予算のなかで、知恵を絞りながら建設されたことが窺える。
江上天主堂を建てた大工棟梁
江上天主堂を手がけたのは、五島列島の中通島出身の大工棟梁・鉄川与助である。大工道具や工法に独自の工夫を凝らし、木造でリブ・ヴォールト天井を実現するなど、高い技術力を発揮した。その与助にとって、江上天主堂は木造教会堂として完成度が極めて高く、代表作と評価されている。
通気を確保したり、ガラスに花模様を手描きしたりしたのも、鉄川与助が信徒の思いに応えた結果なのだろう。
教会堂建築の父・鉄川与助
現在の新上五島町出身。大工棟梁の家に生まれ、若くして修業を積む。明治35年(1902)に五島列島の中通島の旧曽根教会堂の建設に関わって以降、教会堂建築も手がけるようになり、教会堂建築の技術をフランス人宣教師から習得する。その後、家業を継ぎ、設計から施工まで一貫して担いながら、長崎・五島を中心に28棟の教会堂を完成させた。中通島にある鯨賓館ミュージアムでは、リブ・ヴォールト天井の復元(左下写真)や、与助が用いた大工道具が展示されている。



住所:長崎県南松浦郡新上五島町有川郷578-36 有川港ターミナル内 電話:0959・42・0180 開館時間:9時~17時 定休日:12月29日~1月3日 交通アクセス:中通島・有川港から徒歩すぐ 料金:210円

解説 山田由香里さん(長崎総合科学大学教授)

取材・文/藪内成基 撮影/松隈直樹
※『サライ』2026年7月号より












