千利休役に吉岡秀隆さん。

ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』で衝撃的なキャスティングが発表されました。千利休を吉岡秀隆さんが演じるというのです。羽柴小一郎(演・仲野太賀)が主人公の『豊臣兄弟!』における千利休の存在は、とても重要なポジションになりますよね?

編集者A(以下A):ふたりの没年月日を記せば、その重要度がわかってもらえるかと思います。羽柴秀長、千利休のふたりは、ともに天正19年(1591)に亡くなっています。秀長が1月22日、利休が2月28日です。利休は秀吉によって切腹させられるわけですが、その原因は諸説入り乱れて、今もって明らかにされていない戦国史の謎のひとつです。

I:もし秀長が亡くなっていなければ、利休の切腹もなかったのではないか、ということが言いたいのですよね?

A:利休が秀吉の勘気に触れて切腹を命じられるわけですが、前述のようにその理由は諸説あって、わかっていません。利休七哲と称される細川忠興などの門弟らが奔走して切腹だけは阻止したいと秀吉に対して運動したようですが、かなわなかったようです。ふたりの没年月日を凝視すると、もし秀長健在であれば――というぎりぎりのタイミングだったということに気づかされるはずですし、秀長の死が千利休の運命に影響を与えたという見方もできると思います。

千利休は過去の大河ドラマ12作で登場していますが、『黄金の日日』の鶴田浩二さん、『秀吉』の仲代達矢さん、『利家とまつ〜加賀百万石物語』の古谷一行さん、『江〜姫たちの戦国〜』の石坂浩二さんなど錚々たる俳優が演じてきた重要な役柄です。その千利休に、意外にも大河ドラマ初出演の吉岡秀隆さんを配するわけですから、「無駄遣い的な」登場の仕方はしないと思われます。戦国史の謎に斬りこむのか、斬りこまないのか注目ですね。

I:利休がお茶を点てる場面は登場するのでしょうか。秀吉(演・池松壮亮)らとの関係はどう描かれるのでしょうか。

A:描いてほしいですね。しかも利休を演じるのが吉岡秀隆さん。「大物」を配してきたことに深い意味があるとは思いませんか?

I:何か、ものすごい展開になるのかもしれないですね。

藤原氏以外はふたりだけ。

A:さて、『豊臣兄弟!』では、そのほかに秀吉・小一郎の甥で関白になった秀次を山田涼介さんが演じることが発表されました。

I:羽柴秀次といえば、第16回で人質含みで宮部継潤(演・ドンペイ)の養子になった秀吉の姉のともの息子万丸(よろずまる/演・小時田咲空)のことですね。

A:どのように成長した姿を見せてくれるのか。物語のキーマンともいうべき存在ですから気になりますね。宮部家に養子に入った後には三好家に養子に入る「養子人生」。それも悪くないと、朗らかに育ったのか、屈折してしまったのか、とても気になる存在です。

I:長い日本の歴史の中で、「関白」という官職は1000年近く続きました。もともと藤原氏のためにつくられたようなものですから、藤原氏とそこから派生した五摂家(近衛、鷹司、九条、一条、二条)が独占します。

A:藤原氏以外で関白になったのは、豊臣秀吉と豊臣秀次の2名のみということですから、秀次は、歴史上でも稀有な存在です。

I:山田涼介さんがどのように演じるのか、私は注目しています。

大河ドラマに帰ってきた谷原章介さん

I:小田原北条家の当主北条氏政のキャストも発表されました。

A:北条氏政といえば、武田信玄、今川義元とも同盟を結んでいた関東の雄です。1989年の大河ドラマ『武田信玄』では、杉良太郎さんが演じました。その北条氏政を谷原章介さんが演じることになりました。谷原さんといえば、大河ドラマデビューが2004年の『新選組!』。新選組に遅くに入隊した伊東甲子太郎を演じました。凛としたたたずまいの伊東甲子太郎の姿を記憶している方も多いのではないでしょうか。

I:以降、『風林火山』で今川義元、『龍馬伝』で桂小五郎を演じ、2014年の『軍師官兵衛』で竹中半兵衛を演じて、視聴者に強烈なインパクトを残したんですよね。『軍師官兵衛』の前半は、まさに「半兵衛と官兵衛」を軸に進んでいたといっても過言ではありません。死期が近いと悟った半兵衛が官兵衛にもろもろ伝えていく姿が感動ものでした。その後、『麒麟がくる』で三淵藤英を演じて以降、大河ドラマにはしばらくご無沙汰でした。

A:民放朝の情報番組のMCを担当していましたからね。それも終わって、満を持して大河ドラマに戻って来てくれたというところでしょう。

I:おかえりなさいと思っている視聴者も多いかもしれないですね。

A:小田原の陣は、秀吉にとっても重要な合戦です。北条氏政がどのように絡んでくるかわかりませんが、これは楽しみですね。

I:伊達政宗も登場するのでしょうか?

信長の偏諱を受けた長宗我部信親も登場

A:さて、新規のキャスト発表には、長宗我部信親が含まれていました。

I:おそらくしっかりキャスティングされての大河ドラマ登場は初めてのことだと思われます。演じるのは大河ドラマ初登場の林裕太さんです。2020年に俳優デビューを果たすやいなや、次々と映画やドラマに出演し、2023年の『ロストサマー』では小林勝也さんと共にW主演もこなしています。映画『緑のざわめき』『愚か者の身分』など、話題作も多く、まさに気鋭の若手俳優ですね。信親の父元親は、既にロックバンド[Alexandros]の磯部寛之さんが演じて登場済みです。

A:その嫡男の信親ですが、その名は、織田信長の「信」の字の偏諱を受けたといわれています。まだ信長が、元親の「四国は切り取り次第」を容認していた時期のことになります。ところが、『豊臣兄弟!』劇中でも描かれたように、信長(演・小栗旬)は元親と「反目」する三好康長(演・妹尾正文)と急速に接近し、長宗我部との関係を反故にします。そのまま本能寺の変に突入してしまって、「あれ? 長宗我部の四国説は?」と思った視聴者も多かったと思います。

I:にもかかわらず、『豊臣兄弟!』では長宗我部信親がキャスティングされました。

A:長宗我部ファンにとって、信親の登場は歓喜でしょう。いったいどんな登場のしかたをするのでしょうか。

谷原章介さんが北条氏政を演じる。

※近衛の「衛」は正しくは旧字体。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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