「上人」の正しい読み方とは？「じょうにん」ではありません【脳トレ漢字206】

正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか？　適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。

Google 先⽣やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中⾝については⼗分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか？　もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。

「脳トレ漢字」第206回は、「上人」をご紹介します。「上人」は、高徳な僧侶に対して使われる称号で、平安時代中期頃から広く使われ出したそうです。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「上人」とは何とよむ？

「上人」の読み方をご存知でしょうか？　「じょうにん」ではなく……

正解は……
「しょうにん」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「知徳を備えている、すぐれた僧」「浄土宗・日蓮宗・時宗で、僧の敬称」と説明されています。

上人は「しょうにん」と読むほか、「うえびと」とも読みます。「うえびと」と読む場合は、昇殿を許された人のことを指し、殿上人（てんじょうびと）とも言い換えられます。

「上人」の漢字の由来は？

『大品般若経（だいぼんはんにゃきょう）』によると、下人（げにん）に対して「一心に阿耨多羅三藐三菩提（あのくたらさんみゃくさんぼだい）を行じて心散乱せざる、これを上人と名づく」とあり、徳行すぐれた僧の敬称に使われたことがわかります。

房号（ぼうごう）または僧名に「上人」とつけることによって、敬称になります。

空也上人の生涯

上人は、高徳な僧侶に与えられた称号であることが分かりました。平安時代中期から一般化した上人号ですが、人々から敬慕された最初の上人は「空也（くうや）」であると言われています。空也上人と言えば、口から６体の阿弥陀立像が現れ出る「空也上人像」が有名ですね。

一度見たら忘れられない、大変インパクトのある像ですが、これは阿弥陀仏の布教活動に熱心だった空也上人の生き様を表現していると言われています。空也上人は、自らの経歴を語らなかったため、出自については現在でも謎に包まれています。一説では、皇統（天皇家の血筋）の出身だと言われているそうです。

若い頃から、厳しい修行と布教活動に取り組んでいたとされる、空也上人。彼は専ら、庶民への阿弥陀信仰の布教に従事しました。空也上人が生きた平安時代中期は、疫病の流行や天災などで、社会が混乱していた時期にあたります。特に、庶民の多くは貧苦にあえいでいました。

そのような状況下で、空也上人は阿弥陀仏信仰を説きました。また、彼は諸国を巡り、道の整備や井戸の掘削などの社会事業にも熱心に取り組みました。多くの庶民の支えとなった空也上人は、「市聖（いちのひじり）」「市上人（いちのしょうにん）」と呼ばれ、慕われていたそうです。

その後、貴族層にも布教活動を行いながら、人々から浄財を集めて１丈の観音像と、６尺の梵天（ぼんてん）・帝釈（たいしゃく）・四天王像を造立し、応和３年（963）には、京都の東山に西光寺（後の六波羅蜜寺）を建立しました。

天禄３年（972）、70歳の生涯に幕を閉じるまで、布教活動と社会事業に従事し続けた空也上人。彼の教えや生き様は、貴賤を問わず多くの人々に影響を与えたのです。

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いかがでしたか？　今回の「上人」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか？　人々を苦難から救済するべく、様々な活動に従事した空也上人。世のため人のために尽くした空也上人は、まさに「上人」と呼ばれるにふさわしい人物だったと言えるのではないでしょうか？

文／とよだまほ（京都メディアライン）
HP：https://kyotomedialine.com　FB

参考資料／『デジタル大辞泉』（小学館）
『日本国語大辞典』（小学館）
『日本大百科全書』（小学館）
『世界大百科事典』（平凡社）