決して、人生「順風満帆」とは行かぬものです。若い頃と違って、壮年期を過ぎてからの不幸な出来事や災難は、精神的にも大きなダメージとなります。そんな時でも、顔を上げ、前に進まなければならないのが人生ではないでしょうか? 何気ない友人や知人が掛けてくれた言葉が、深く傷を負った心を癒し、勇気づけてくれる場合もございます。

また、先人が残した言葉を紐解けば、幾つもの教訓や悟りが残されており光明となることもあります。そんな言葉の一つとなることを願い、第5回の座右の銘にしたい言葉は「一生懸命(いっしょうけんめい)」 です。

目次
「一生懸命」の意味
「一生懸命」の由来とは
「一生懸命」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に

「一生懸命」の意味

「一生懸命」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「命がけで事に当たること。また、そのさま」と説明されています。この言葉は、単に努力すること以上の深い価値と精神を象徴しています。シニア世代の方々にとって、この言葉は年齢を重ねた今でも夢を追い続け、情熱を持って生活することの重要性を思い出させてくれます。

それは、仕事でも、趣味でも、また、家族のため、自己実現のためでも、全ての活動に真剣に取り組むことの重要性を教えてくれます。特に退職後の人生を豊かに生きるためには、新しい趣味や興味を一生懸命に追求することが、生活に活力を与え、精神的な満足感を高める鍵となります。

「一生懸命」の由来とは

元々は、「一所懸命(いっしょけんめい)」からきていると言われています。「一所」とは、お上から賜った一か所の領地のこと。「懸命」とは、それを命を懸けて守ることを意味します。一所の領地で、死活にかかわるほど重視した土地といった、武士階級の領地意識から出た言葉です。「一か所の領地を命を懸けて守ること」から転じて、物事を命がけでやることのたとえとして使われるようになりました。

江戸時代に入って「領地を守る」という意味が薄れ、「物事を命がけでやる」という意味だけが残りました。また、「一所(いっしょ)」という発音が「一生(いっしょう)」とされ、「一生を懸ける」という意味に捉えられ、「一生懸命」という言葉ができたと考えられます。

「一生懸命」を座右の銘としてスピーチするなら

「一生懸命」を座右の銘としてスピーチするなら、言葉が持つポジティブなエネルギーと、人生のあらゆる挑戦において私たちを前向きに鼓舞してくれる力を伝えることができます。一生懸命に生きることは、単に成功を目指すこと以上に、そのプロセスを全うすることの美しさと、努力すること自体に価値があるという信念を示しています。

人生は予測不可能で、挑戦に満ちていますが、「一生懸命」の精神を持つことで、どんな困難も乗り越えられるという自信を持つことができるでしょう。以下に「一生懸命」を座右の銘にしたスピーチ例を三つあげます。

1:努力の価値を再発見するスピーチ例

「『一生懸命』という座右の銘を胸に、私はかつて困難なプロジェクトに挑みました。当時、目の前の課題は山積みで、成功の見込みはありませんでした。しかし、この言葉を思い出すたびに、私は諦めることなく、毎日、可能な限りの努力をしました。数か月後、そのプロジェクトは想像以上の成功を収め、チーム全員の努力が認められました。この経験から、『一生懸命』に取り組むことの真の価値を深く理解することができました。」

2:全力投球の日常を語るスピーチ例

「私の祖母は、『一生懸命』を生き方のモットーとしていました。彼女は自分の庭を手入れすることに情熱を注ぎ、毎日夜明けとともに起きては、草花の世話をしていました。彼女の庭は四季を通じて美しく咲き誇り、訪れる人々をいつも喜ばせていました。祖母から私は学びました。どんな仕事であれ、全力を尽くすことで、それがいかに他人の心を動かし、喜びをもたらすかを。祖母の『一生懸命』な姿を見て、私もこれを座右の銘としています。」

3:趣味を仕事に変えるスピーチ例

「高校時代の恩師は、生物学の教師でありながら、写真撮影に対する深い情熱を持っていました。退職後、彼は『一生懸命』を座右の銘とし、自然写真を撮り始めました。最初は趣味の延長でしたが、彼の作品は徐々に評価を集め、国際的な写真展で賞を受賞するまでになりました。先生のストーリーは、どんな年齢であっても、『一生懸命』に情熱を追求することで、新たなキャリアを開花させることが可能であることを私たちに示しています。」

最後に

「一生懸命」という言葉は、シニア世代の方々にとって、人生のどの段階においても、情熱を持って生きることの大切さを思い出させる強力なメッセージを持っています。この言葉を座右の銘にすることで、毎日を意味のあるものに変え、どんな挑戦にも前向きに取り組む勇気を得ることができます。

「一生懸命」は、ただ努力すること以上に、自分自身と向き合い、人生を全力で楽しむことの価値を伝えています。この言葉を心に留めておくことで、私たちは日々の挑戦に勇敢に立ち向かい、人生をより豊かに生きることができるでしょう。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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