新型コロナウイルスの流行により社会が大きく変容したという見方は、今や改めて言及するまでもなく一般化しています。その中でも私たちは21年度卒の就活生に焦点を当て、コロナ禍の就活の実態とはどのようなものだったのか、採用関連の事業を行っているイチミ株式会社(https://ichimi13.com/)が上半期を振り返るヒアリング調査を行いました。
定量調査
・調査時期:2020年10月
・調査方法:Googleフォームによるヒアリング
・調査対象:21年度卒の大学生
1.就活を続けている21卒に聞いた、その理由と考察
「内定がまだ出ていないため」「納得のいく内定がまだ無いため」「内定承諾はしたが、より行きたいところを探しているため」というものが主な答えとしてあがりました。2020年10月5日時点の内定獲得率は84%(出典:学情「内定獲得状況や内定承諾」に関する調査) となっており、やはり例年に比べて苦戦した就活生は多いようです。
21卒就活がこのような苦戦を強いられた理由として、次のようなものが挙げられるのではないかと考えました。
・新型コロナウイルスという未知のウイルスの情報が錯綜し、混乱を招いたこと
・コロナの影響が出始めたのが1月末、そして緊急事態宣言が発令されたのが4月頭と、早期選考から情報解禁、本選考開始の時期と丸かぶりしてしまったこと
・状況があっという間に悪化してしまい、企業も就活生も急な対応を求められたこと
一方で22卒就活生は就職活動が新型コロナウイルスの影響を受けるということがあらかじめわかっており、感染防止対策も確立されつつある分、この状況に早めに適応しようとする様子が分かっています。
2.内定承諾した企業は、何経由で応募したのか
続いての質問は「内定承諾をした企業は何経由でエントリーしましたか?」
※内定承諾とは…内定をもらった会社に対し、入社の意思を表明すること
選択肢としては、
・就活媒体
・就活イベント
・企業訪問
・企業サイト
・その他
を用意しました。
最も多かったのは就活媒体で57.1%で、その内訳として最も多いのがマイナビ(50%)、次に多いのがリクナビ(39.3%)となりました。次に多かったのは企業サイト(18.4%)で、就活媒体を経由せずに直接応募するという人も2割近くいました。内定承諾をする企業はもともと志望度が高く、媒体で検索するという手順を踏むまでもなく企業サイトから直接エントリーするという流れがあるのだと考えられます。就活のオンライン化の影響を受け、Webサイト経由の応募が大多数を占めました。
3.新型コロナウイルスは就活にどのような影響を与えたのか
次にピックアップするのは「就活はコロナの影響を受けたと思いますか?」という質問です。
73.1%もの学生が「受けた」という回答でした。すこし詳しく見ると、全体の半数の21卒生が「とても受けた」「まあまあ受けた」と答えています。一方で「全く受けなかった」と回答した21卒生も11.5%ほど存在しており、受けた業界や職種、居住地やオフィスの場所によって影響の大きさに差があったようです。
「受けた」と答えた学生の詳しい回答内容としては、「面接が9割以上オンライン化」「合説や就活イベントの中止」といった対面機会の減少から、「選考中断」「新卒採用がなくなった」等の理由で就職職業を変えた、という声までもあがりました。新卒採用の幅が狭まり、選考通過率が下がったという回答も多く見られました。
4.22卒へ伝えたいこと
最後に、上半期の就活を経験した21卒学生が22卒の後輩たちへ伝えたいことについてヒアリングしました。
最も多く聞かれたのが、「この状況下でも就活の本質は変わっていない」ということです。選考がオンラインになり、採用人数が減っても、基本的に就活生がやるべきことは平年と変わらない。だからこそ必要以上に臆病にならず、早めに動き出すことが必須であるという意見が多く上がりました。
他には、「選考フェーズはコロナの影響を受けると思うので、どんな選考にも対応する力を身につけるといいと思う」「採用自体がコロナに影響を受ける業界もあると思うので、どういう風に影響を受けているのか、必ず調べて」というように、事前準備を念入りに行うことを推奨する声や「オンライン化によって地方就活生は格差が是正されつつあると思う」というポジティブな回答も見られました。
コロナ禍の就活において失われたものだけに囚われるのではなく、自分がこれまでと変わらずできることや、新たに得たメリットに目を向ける重要性を21卒就活生は感じているようでした。
調査からわかってきた、学生目線の就活のリアル
2020年度上半期就活実態調査から、新型コロナウイルスの影響を受ける一方でファーストキャリアの選択には妥協せず冷静に自分や社会と向き合ってきた21卒の姿が読み取れます。企業が22卒の採用戦略を立てるにあたっては、こういった21卒学生の傾向が引き続き見られることを考慮する必要があると考えられます。コロナウイルスによって会社がどのような影響を受けているのかの開示や、オンラインでもできる限り会社の空気感が伝わるような工夫など、色々な情報をよりオープンに、よりクリアにしていくことが求められるのではないでしょうか?
※出典:2020年度上半期就活実態調査を公開(2020.10)