【家族の秘密】「母が食いつぶす父の遺産…」買い物と恋愛依存の先にあった母娘の闇とは～その２～

分厚い封筒を渡した相手の正体

土曜日、朝10時に家から出てきた母は、都内の高級ホテルのティーラウンジに入っていきました。すると、50代くらいのふくよかな癒し系の美人が待っていました。彼女は「ウエの人が、今日ここで会いなさいと言っていましたからね」などと話しており、その佇まいや雰囲気からスピリチュアル系の人だとピンときました。

母は孤独がつらいこと、娘・史織さんにバカにされていること、息子のことなどを相談しつつ、自分の恋愛相談もしています。

母の本命の恋人は、小学校（名門私立大学付属）の同級生でした。できればその男性と再婚したいと思っている。しかし、相手の男性は妻が病気になったことを理由に、母と距離を置くようになってしまった。そこで彼にやきもちを焼かせようと、俳優志望の男性と一緒にいるところを見せつけてもなびいてこないことをその女性に話しています。

母は「この年で、こんなに苦しい思いをするとは思わなかった。娘（史織さん）は、生きがいを見つけろと言い、歌舞伎や宝塚やオペラのチケットをくれたり、ワインや英会話や紅茶教室に申し込んでくれるんだけど、私、全然興味ないの。行かないと怒るから行くけれど、眠くて寝ちゃうのよ。でも、夜寝るときは睡眠薬が手放せないの」と苦しそうに語っています。

女性は「ウエの人が、あなたを許してくれるわよ」と言い、母の頭を優しくなでていました。1時間程度かけて話をし、母は分厚い封筒を女性に渡し、タクシーで自宅へ帰って行ったのです。女性は開運指南をしており、オンラインセミナーを頻繁に行い、SNSで情報発信もしていました。実現性がない社会貢献事業計画を立てて、そこで寄付も募っていたのです。

以上を史織さん報告すると「これは大変！　母と話に行きます」と出ていきました。

その直後、史織さんは頭ごなしに母を叱りつけました。その剣幕に母はショックを受けて一時的に母は入院。

その後、史織さんが夫を連れて、私たちのところに来ました。史織さんは私に「ありがとうございます」と小さく言い、「いろいろなことは、主人が説明してくれます」と続けました。

史織さんの夫は、「史織はお義母さんから“愛される女性になりなさい”と育てられたんです。史織が嫌いなピンクの服やワンピースを無理やり着せ、“あなたはブスで似合わないわね”と笑われたそうです」と語ります。

その内容は、虐待とも言えるほどでした。ただ、史織さんが健やかに育ったのは、父が守ってくれたから。

「そのお義父さんは亡くなる前に、“お前がママを守ってやれ”と言い残したんです。責任感が強い史織は、1人で苦しんでいました」

父が亡くなってから、母はお酒におぼれたそうです。失禁した後始末をしたり、急性アルコール中毒で入院したり……史織さんは母の介護者のようになっていたそうです。

「私と結婚するとき、私はお義母さんに“あんたみたいな貧乏人に嫁に行かせるために娘を育てたんじゃない”と食器を投げつけられましたからね。僕は同居してもよかったのですが、史織が家を出たいという。その後、義母は当てつけのようにホストクラブに数千万円のお金を使う。義弟はそこから距離を置くために、海外に住んでいます。いびつな人間関係が重なった結果が今なんです」

調査後、史織さんの夫は、母を心療内科に連れて行きます。大暴れして嫌がったそうですが、なだめすかしたそう。すると、心の病のほかに、認知症の疑いもあると判明。さらにさまざまな体の不調もわかり、母は実家が一度、引き取ることになったそうです。

「母の両親は健在です。私はこの祖父母も好きではなく、祖父からは“親不孝者が”と怒鳴られました。母のことは好きですが、やはり見ていると辛い。これから財産の管理や母の治療のことなど山積なのですが、主人と協力しながらやって行こうと思います」

史織さんは母を愛しているのに、母は自分のことしか愛していない。史織さんも母のことを思うとパニックになるなどさまざまな症状が出ているそうですが、夫婦で乗り越えるとのことでした。

今、このように、親の素行調査を依頼する30～50代の方々が増えています。その結果、親の浮気、誰かに貢ぐ行為、宗教活動へののめり込みなどさまざまな事実が出てきます。

その背景には、さみしさや生きがいのなさがあることが多いです。親子のかかわりを今後どうとらえるか、それは社会全体の問題になっていくのではないかと考えています。

探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社　http://www.ritztantei.com/