『〇〇世代』という言葉に仕込まれた企み
『「いまどきの若者」の150年史』パンス著

今どきの若者は──。昔からあるお決まりの世代批判だ。戦前の男たちは戦後生まれの若者を〈日本男児も軟弱になったものだ〉と嘆いた。その戦後世代は平成生まれの若者に〈何を考えているか理解できない〉と匙を投げた。
本書によると、このような世代間断絶の背景を整理するために生み出されたのが『〇〇世代』というネーミングだったという。
つまり、今どきの若者たちの習性や行動様式を知りたい人たちのために書かれた解説のタイトルが、○○世代なのだそうだ。
思い返せばいろいろな世代名があった。団塊の世代、しらけ世代。暴走族や竹の子族、新人類やおたくも、時代を象徴した世代名だという。ロスジェネ世代に、ゆとり・さとり世代。直近ではZ世代という言葉が有名である。
ところで、社会が注目するのはなぜいつも若者なのか。それは、流行や新文化、最新テクノロジーを積極的に受け入れ使いこなすのは、どの時代も若年層だからだ。
古今東西、社会は若者が変える。若くない世代は時代の変化を受け止めきれなくなる。なるほど、〇〇世代とは便利な用語である。
老害は世代用語ではない
そうした視点で著者は150年に及ぶ若者文化の歴史を整理していくが、途中で重要なことに気づく。〇〇世代という分析が、ある時期からマーケティングの中に取り込まれ始めたことだ。
世相の転換点を明示する指標だったはずの言葉が、消費の方向を占う商業用語にすり替わっていく。サブカルチャーと関連付けた世代論が活発化した’80年代以降に顕著になった傾向だという。
若者気質の分析は、おのずと異世代をカテゴライズすることにもなる。本書で注目されている現象が『老害』だ。以前の老害は若い世代に対し尊大に振る舞う大人を指した。世代間対立を煽る二分法だが、今は年齢とは関係のない言葉に変わりつつあるそうだ。
かつて『世代』は政治や経済の状況、文化・価値観、生活意識などの違いで説明ができたが、そうした定義はもう解体されていると著者はいう。若者を含む“大人像”が単純に分類できないためだ。
老害とは年齢のことではなく「更新が止まった価値観」だという指摘には頷くばかりである。
酒と歴史の関係を多角的に掘り下げた論考集
『日本史のなかの酒』『日本歴史』編集委員会編

日本酒造りの歴史に触れた本は少なくないが、日本史の中で酒がどのような政治的・社会的・文化的役割を果たし、また誰とどのように飲まれ、その関係性が歴史をどう動かしたかにまで言及したものは珍しい。本書は、麹を使った日本の伝統的な酒造りがユネスコの世界無形文化遺産に答申されたのを機に、24人の歴史研究者によって執筆された。「古代の禁酒令と政変」「延喜一一年の大納涼会」「伊達政宗と酒」「江戸の贋銘柄酒と直し酒・薬酒」「幕末の動乱と酒」「黒田清隆の乱酔と内閣制度」など、興味深いタイトルがずらりと並ぶ。いずれも短い時間で読み切ることのできる論考なので、晩酌をしながら気軽にページをめくるのもよい。もちろん、下戸にも大いに楽しめる内容だ。
奄美群島の自然を撮り続けた写真家の集大成
『サンクチュアリ 奄美 生きものたちの息吹』浜田太著

特別天然記念物・アマミノクロウサギの営巣や授乳といった貴重な生態を、何年にもわたる撮影で解き明かす。巨大なヒカゲヘゴが太古さながらに茂る深い森の存在を、一枚のポスターで世に知らしめ、地域観光に大きな貢献を果たしたこともあった。近年は奄美大島にあるとされてきた幻の滝の撮影に挑み、それが落差181mの九州最大級の滝であることを紹介。奄美群島の自然の撮影を天職としてきた著者の、40年に及ぶ写真人生の集大成が本書である。世界自然遺産・奄美の魅力をあますところなく紹介。上質紙の上に再現された鳥、花、森、空、海の姿は、いずれも格調高く躍動感にあふれる。島旅のよき伴侶になるはずだ。
選・文/鹿熊 勤 ※文中、敬称略。
※『サライ』2026年7月号より












