プロ顔負けの料理の腕をもつ加山雄三さんが教える、手軽にできる家庭料理
文／鈴木拓也
俳優、歌手、作曲家、画家など、多彩な才能と旺盛な活動で知られる加山雄三さん。
実は、料理の腕前もプロ級。公私で親しい人たちを招いては、自慢の手料理でもてなしてきたという。
そんな加山さんが、このたび上梓したのがレシピとエッセイを綴った初の料理エッセイ『食べた人が笑顔になる それが最高の喜び 幸せの料理帖』（KADOKAWA）。
本書は、加山さんの料理遍歴のなかで、特に好評であったものなどを選び出し、エピソードとともに１冊にまとめたもの。眺めているだけで、作ってみたくなるレシピが満載だ。そこで今回は、本書から３レシピを紹介しよう。
バラバラにしたハンバーグ「バラハン」
加山さんが本格的に料理をするようになったのは、自身が設計したプレジャーボート・光進丸が進水した1964年からだという。長期の航海に出たときは、試行錯誤しながら料理を作っては乗組員にふるまった。また、結婚してからは家庭料理にも力を入れた。仕事で多忙を極めるなか、毎朝家族全員の分を作ると決めていたという。
そうして料理の腕は上がっていったが、作るものすべてが手の込んだものというわけでなく、シンプルに手早くできるレパートリーも多い。「バラハン」はその１つ。「ハンバーグを丸めるのが面倒くさい、それならこのまま炒めればいいやって」発想で生まれたそうだ。
【材料（作りやすい分量）】
・牛ひき肉：300g
・玉ねぎ：１個
・顆粒コンソメ：大さじ1/2
・粉チーズ：大さじ１
・しょうゆ：大さじ1/2
・塩、こしょう：各適量
・サラダ油：大さじ１
【作り方】
１ 玉ねぎは粗みじん切りにする。
２ フライパンに油を熱し、ひき肉を炒め、色が変わったら玉ねぎを加えて炒める。
３ コンソメ、粉チーズ、しょうゆで調味し、塩、こしょうで味をととのえる。
周富徳さんの看板メニューにもなった「揚げえびのオーロラソース」
加山さんの料理のうまさが光る、とっておきのエピソードがある。
お店に行っているうちに仲良くなった中華料理人の周富徳さんを、加山さんは自宅に招いて料理対決をすることになった。ビュッフェスタイルでパーティーをしたが、加山さんの作った料理ばかりがどんどんなくなる。周さんはふてくされて、紹興酒を飲んで悪酔いしたという。
加山さんが、「ほら、こんなのはどうだ」と周さんに教えたのが「揚げえびのオーロラソース」。昔通った中国飯店のメニューをヒントに、加山さんが考案したもので、周さんの店の看板メニューにもなった。
【材料（２～３人分）】
・えび：大10尾
・酒：120ml
・溶き卵：１個分
・片栗粉：適量
・揚げ油（できれば米油）：適量
◎たれの材料
・マヨネーズ：大さじ２
・トマトケチャップ：大さじ２
・エバミルク：大さじ1/2
・コンデンスミルク：大さじ1/2
・ジン：小さじ１
【作り方】
１ えびは殻、背わたを除き、酒に浸ける。たれの材料はよく混ぜ合わせておく。
２ えびの水気を拭き、溶き卵にくぐらせてから片栗粉をまぶし、170℃の揚げ油で揚げる。
３ 油をきったらすぐにたれにからめ、器に盛る。
バーベキュー後の定番として人気の「ガーリックライス」
本書では「光進丸のまかない料理」が、まる１章もうけられている。３代目の光進丸は2018年に火災で失われたが、それまでの約50年間、加山さんは「みんなを飽きさせないよう普段以上に知恵を絞って毎日の食事を作った」そうだ。
船上ではバーベキューがよく作られたが、残った牛肉を使って、最後にガーリックライスを作るのが定番となった。これが「すごく好評」で、加山家の代表的なごはん料理となっているほど。
【材料（２人分）】
・牛肉：100g
・ごはん：300g
・にんにく：１片
・青じそ：４枚
・バター：大さじ２
・塩、こしょう：各適量
・しょうゆ：大さじ１&1/2
【作り方】
１ 牛肉は小さく切る。にんにくはみじん切りに、青じそはせん切りにする。
２ 鉄板にバターを溶かし、にんにく、牛肉を炒め、ごはんを加えて炒め、塩、こしょうをふる。
３ しょうゆを回し入れて炒め、青じそを散らす。
※肉を焼いた鉄板（またはホットプレート）で作るとよい。
今年86歳になった加山さんは、人前で料理をもてなすことには一区切りをつけた。それでも、生ある限りは、世の中の役に立ちたいという気持ちは大きく、本書のレシピで料理を作り、幸せな時間を過ごしてくれる人が一人でも増えてくれればと記す。料理好きなら、ぜひおすすめしたい１冊だ。
【今日のおいしい１冊】
『食べた人が笑顔になる それが最高の喜び 幸せの料理帖』
KADOKAWA
文／鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube（Mystical Places in Japan）に掲載している。
