火山灰土壌が広がる畑、黒潮の海、照葉樹の森―車窓の風景が変わるたび、土地の食も焼酎の味わいも変わっていく。九州を代表する3つの観光列車に揺られながら、「焼酎王国九州」の風土を飲み解く旅へ。


土づくりから始める全量甕仕込みの老舗
宮崎県の日南海岸を走る可愛い2両の列車「海幸山幸」。その列車をかたどったプレミアム焼酎を製造するのが、天保5年(1834)創業の京屋酒造である。代表銘柄は『甕雫』で、その特徴のひとつが原材料に華やかな風味のある紅芋を使うことである。
子会社の農園には有機栽培による芋畑が広がる。全量をまかなうことはできないものの、農業から始める焼酎造りを目指し、降り注ぐ陽光のなかで苗付けの作業が進む。丹精込めて育てた紅芋は皮を剥き、カットする。皮を剥くことで雑味のない味わいになるという。
京屋酒造では1時間ほどの予約制の見学コースを設けている。ここで目を奪われるのが、蔵内に埋められた大甕。一次仕込み・二次仕込みともこの甕壺で醪を仕込む。

「卵形の甕の形は自然な対流が起きて発酵を進めてくれますが、甕ごとに発酵の進み具合が異なるので見極めが大変です」
こう話すのは営業課長の仁木健視さん(42歳)。約100基の甕は、生きもののようにそれぞれ仕込みの表情が異なるという。
煙突のように伸びる蒸留器

蒸留場には細長く伸びる部分(立ち上がり)がある2基の減圧蒸留器が聳える。減圧蒸留は器内の気圧を下げ、沸点を下げることで低い温度で蒸留ができ、軽くクリアな酒質になる。さらに蒸留器の独特の細長い立ち上がりで、醪の匂いや雑味が抑えられる。こうして造られる芋焼酎はフルーティで気品のある味わい。料理との相性も良く、食中酒として最適だ。
蔵内には10年ほど前まで稼働していた貴重なコルニッシュボイラーもあり、190余年の歴史を随所に感じることができる。


●京屋酒造
住所:宮崎県⽇南市⼤字平野4299
電話番号:0987・22・2002
営業時間:9時~12時、13時~16時(売店)
定休日:土曜(隔週)、日曜、祝日(売店) 桜ヶ丘蔵見学は要予約。
交通アクセス:JR日南線油津駅より徒歩約5分
取材・文/関屋淳子 撮影/藤田修平
※『サライ』2026年8月号より








