火山灰土壌が広がる畑、黒潮の海、照葉樹の森―車窓の風景が変わるたび、土地の食も焼酎の味わいも変わっていく。九州を代表する3つの観光列車に揺られながら、「焼酎王国九州」の風土を飲み解く旅へ。

苗付け後2か月ほどたった子会社の芋畑で。営業課長の仁木健視さん(左)と農場長の川崎秀徳さん(右)。芋の収穫が終わったあとは、蕎麦焼酎用の蕎麦を植える。
例年3月~5月まで行なわれる苗付け作業。近年、さつま芋の収穫に深刻な被害を及ぼす基腐病が問題になっているという。

土づくりから始める全量甕仕込みの老舗

宮崎県の日南海岸を走る可愛い2両の列車「海幸山幸」。その列車をかたどったプレミアム焼酎を製造するのが、天保5年(1834)創業の京屋酒造である。代表銘柄は『甕雫』で、その特徴のひとつが原材料に華やかな風味のある紅芋を使うことである。

子会社の農園には有機栽培による芋畑が広がる。全量をまかなうことはできないものの、農業から始める焼酎造りを目指し、降り注ぐ陽光のなかで苗付けの作業が進む。丹精込めて育てた紅芋は皮を剥き、カットする。皮を剥くことで雑味のない味わいになるという。

京屋酒造では1時間ほどの予約制の見学コースを設けている。ここで目を奪われるのが、蔵内に埋められた大甕。一次仕込み・二次仕込みともこの甕壺で醪を仕込む。

醸造の全工程を行なう大甕。70年ほど前の甕もあり、修理しながら使用している。容量は1基800~1000ℓと小さい。

「卵形の甕の形は自然な対流が起きて発酵を進めてくれますが、甕ごとに発酵の進み具合が異なるので見極めが大変です」

こう話すのは営業課長の仁木健視さん(42歳)。約100基の甕は、生きもののようにそれぞれ仕込みの表情が異なるという。

煙突のように伸びる蒸留器

特別注文で作られた立ち上がりが細長い減圧蒸留器。常圧蒸留器もあり、芋・麦・蕎麦など焼酎の種類により使い分けている。

蒸留場には細長く伸びる部分(立ち上がり)がある2基の減圧蒸留器が聳える。減圧蒸留は器内の気圧を下げ、沸点を下げることで低い温度で蒸留ができ、軽くクリアな酒質になる。さらに蒸留器の独特の細長い立ち上がりで、醪の匂いや雑味が抑えられる。こうして造られる芋焼酎はフルーティで気品のある味わい。料理との相性も良く、食中酒として最適だ。

蔵内には10年ほど前まで稼働していた貴重なコルニッシュボイラーもあり、190余年の歴史を随所に感じることができる。

煉瓦造りで炉筒が1本のコルニッシュボイラー。100年以上前の貴重なもので、かつては芋や米を蒸す蒸気を起こしていた。
左は『海幸山幸プレミアム焼酎ボトル』25度500㎖、3300円。黒麹仕込みと白麹仕込みの芋焼酎の原酒をブレンド。軽くまろやかで芳醇な味わい。右は『甕雫』20度1800㎖、5940円。紅芋の華やかな香りが際立つ白麹仕込み。和食や鮨に合う。

●京屋酒造 

住所:宮崎県⽇南市⼤字平野4299 
電話番号:0987・22・2002
営業時間:9時~12時、13時~16時(売店) 
定休日:土曜(隔週)、日曜、祝日(売店) 桜ヶ丘蔵見学は要予約。
交通アクセス:JR日南線油津駅より徒歩約5分

取材・文/関屋淳子 撮影/藤田修平

※『サライ』2026年8月号より

8月号特集は「本格焼酎」は風土で味わう

 

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