最新の『人口動態統計』(2025年・厚生労働省)によると、2025年に離婚した夫婦のうち、同居期間が20年以上という、いわゆる「熟年離婚」の割合が22.2%と過去最高となった。

この背景には、女性の社会進出があるが、2007年4月から離婚時の年金分割制度が始まったこともあるだろう。さらに2026年4月から、離婚後の財産分与の請求期間が、離婚後2年から5年に延長されたことも考えられる。

正和さん(65歳)は妻から定年後に「無職を続けたら離婚だ! と言われて、今の就職先を決めました」と話す。正和さんは元地方公務員で、現在は人の心や、人の困難に寄り添うNPO法人で働いている。

バリバリ働きたくないから公務員になった

正和さんは都内の私立大学を卒業した後、首都圏のある市に地方公務員として就職した。生まれ育った首都圏の地域の隣の市だという。地方公務員を選んだのは「満員電車に乗るのとバリバリ働くのが嫌だったから」だ。

「大変なのが嫌だったんです。これには激務だった両親の姿を見ていて、『僕には無理だ』と。僕の母は小学校、父は中学校の歴史の先生でした。2人とも熱血教師で、『子供のためなら』とすぐに動くタイプです」

母は育児放棄されている子供を連れて帰り、1か月以上も面倒を見ていたことが何度もあった。父は生徒と向き合い、ケガをして帰ってきたことが2度や3度では済まなかった。

「今じゃ考えられませんよね。両親のような人々の圧倒的なおせっかいが社会の根底を支えていたんだろうなって。そうそう、父は2024年に流行したドラマ『不適切にもほどがある!』の主人公・小川市郎にそっくり。調べたら父と同じ昭和10年生まれという設定だった。主人公に父を重ねて、泣きながら観ていたのは僕くらいじゃないかな」

父が勤務していた中学校は、学校の廊下をバイクが走り、窓ガラスが割られ、警察が出動したりすることもあった。父は生活指導担当の教師で、喫煙した生徒のタバコを取り上げ、髪を脱色した生徒がいれば、男女問わずその場で切ることもあったという。

「そんな時代だから父は僕と妹を中学受験させたんですよ。僕は大学附属の中高一貫校に入ったのですが、父には毎日のように学校のことを聞かれました。そして、僕の使っている教科書を見ては『ずいぶん、レベルの高い教科書だな。いいな』とため息をついていた。父は勤務校をいい学校にしたかったんでしょうね。

卒業式が中止になった年があり、その日、父は肩を落として帰宅し、『「仰げば尊し」を聞きたかった。本当はみんないい子なんだよ』と母に泣きながら話していました。母も『あなたはよくやったわよ』と父の手を握って励ましていました。

僕は中学生くらいだったから、『変な親』と思っていたけれど、今思えば理想的な夫婦だったんだと思う」

正和さんの妻は中学校の同級生で、結婚35年になる。現在は派遣社員をしているという。

「両親が激しめなタイプだったので、穏やかな人がよかったんです。妻とはお互い29歳のときに再会。離婚歴がある妻は苦労人で、結婚当時は地方銀行勤務。常識的で冷静なところに心惹かれて、猛アタックし、OKしてもらいました。当時すでにバブルは崩壊していた。だから、地方公務員の僕を評価してくれたのでしょう。妻の前の夫は証券マンでしたから」

【不妊治療を拒否した負い目がある……次のページに続きます】

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