
骨太で迫力があり、凛とした姿が印象的な一龍斎貞鏡さん。七代目一龍斎貞山を祖父に、八代目一龍斎貞山を父に、さらには六代目神田伯龍を義理の祖父に持つ。世襲を前提としない講談界で三代続く講談師は初の存在だ。
人生経験を講談に
父・貞山さんはシャイな人柄で、家族に高座を観られることを嫌がっていたため、貞鏡さんがはじめて講談を聴いたのは二十歳のとき。
「怪異談『牡丹灯記』でした。ふだんの父の姿とのギャップ……カッコよさに惚れ込み、“父ちゃんの跡を継ぎたい”と、すぐさま弟子入り志願しました」
入門当初は“貞山の娘”としてお利口さんでいなければならぬ、父の顔に泥を塗ってはならぬ、という考えに囚われていたそう。だが、「ざっくばらんな自分でよい」と思うに至り、今や『浪花のお辰』など毒婦伝への評価も高い。
「お父さんを大好きで愛されて育ったことがわかる。鯔背ななかにも、優しさと柔らかさを備え、母性が滲み出ている」と橘蓮二さんが評する。5人の子を抱え、「自分の人生経験をまるっと講談に生かしたい」と意欲的に高座に挑む。
この演目を聴きたい
源平盛衰記の内 青葉の笛
源義経の軍勢が平家一門の拠る一ノ谷を攻撃。「青葉の笛」の物語は源氏の熊谷直実が、笛の名手である平敦盛を討ち取った悲話。武士の一分、情が詰まっていると貞鏡さん。
「熊谷の花も実もある 武士道の
香りや高き 須磨の浦風」
「令和の名人」推薦者(特集内の評論を担当)
佐藤友美さん(演芸専門誌『東京かわら版』編集人)
幼少期から伝統芸能に親しみ、『東京かわら版』編集部へ。寄席演芸の普及に尽力。4月に『東西寄席演芸名鑑3』を刊行予定。
杉江松恋さん(作家・文芸評論家・演芸プロデューサー)
推理小説の書評や小説執筆のかたわら、落語会や浪曲会を主宰。夢枕獏『陰陽師』を天中軒すみれさんのために脚本化。著書多数。
橘 蓮二さん(演芸写真家・演芸プロデューサー)
落語、講談、浪曲を中心に漫才、神楽など演芸全般の舞台や楽屋、ポートレートを撮り続ける。落語会のプロデュース、著書多数。
取材・文/山﨑真由子 撮影/橘 蓮二
※『サライ』2026年4月号より












