世界的補聴器ブランド「フォナック」を展開する、補聴器のリーディングカンパニー『ソノヴァ社』と『サライ』は、共同で、補聴器による生活の質の向上を目指す「アクティブ ライフ プロジェクト」に取り組んでいる。

『サライ.jp』では、その一環として、これまで『ソノヴァ社』の補聴器ブランド、フォナックの製品を使い、豊かな人生を生きる人たちをクローズアップしてきた。

今回は、日常生活には特に不自由はないものの、ライフワークにおける“きこえ”に悩まされているという、野鳥写真家の叶内拓哉(かのうちたくや)さんに密着。初めての補聴器にチャレンジするところから、実際に製品を装用することで体感できた、暮らしの変化などを伺った。

ヤブサメの声をもう一度聴きたい、その気持ちが後押しに

叶内さんは昭和21年生まれ、今夏80歳を迎える。東京農業大学農学部卒業後、野鳥撮影をはじめ、北は北海道から南は沖縄県まで、全国の探鳥ポイントを旅しながら、くまなく撮影を続けてきた。そんな叶内さんが“きこえ”に異変を感じたのは、72歳の時だったという。

「毎年、春の訪れとともに聞こえてくるのがヤブサメという鳥の鳴き声です。鳥仲間の間では、ヤブサメの声を聴いたかどうかというのが、春の決まり文句となっています。それが、72歳になった年に、ヤブサメの声が聞こえてこなくなった。今年はヤブサメがいないんだなぁ、と思っていたら、実は周りの鳥仲間には聞こえていたんで驚きました。ヤブサメは鳥の中でもかなりの高周波(8000ヘルツともいわれる)で鳴くので、高い音が聞こえにくくなったのが原因じゃないかと思います」

翌年にはキクイタダキ、2年後にははホオジロやエナガと、高い声を出す鳥たちの声が徐々に聞こえなくなっていったという。

「年のせいだから仕方ないかな……と半ばあきらめていたんですけど、今年も春を迎え、やっぱりヤブサメの声を聞きたい、という想いが膨らみ、補聴器を使ってみたいと思うようになりました」。そこで、ひとりひとりのきこえに真摯に向き合うフォナックの補聴器を試してみることになった。

自分の補聴器と巡り合うための手立て

初めての補聴器ということもあり、少々緊張の面持ちで現われた叶内さんを、ソノヴァ・ジャパン オーディオロジー担当の鈴木宏明さんが笑顔で迎えた。鈴木さんの実家は補聴器専門店を営んでおり、自身も言語聴覚士の資格を持つ。

カウンセリングは一対一で問診形式で行われる。

まずは補聴器を作るにあたり、日常生活での“きこえ”の状態や悩みなどのカウンセリングを行う。叶内さんは補聴器を作るにあたり、事前に耳鼻科で検査を行った際のオージオグラム(聴力検査結果)を持参した。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、耳の聞こえの不調原因が治療可能な疾病や怪我による可能性もあるため、一度耳鼻科に罹ってから補聴器の購入を推奨している。

「日常生活で困ったことは特にないんですよ。人の話し声も聞こえるし、テレビの音量が大きくなったわけでもない。ただ、高音の鳥の声だけが聞こえないんです」(叶内さん)。

スピーカーの正面に座り、音が聞こえたかどうかを合図していく。

では、実際のデータではどのような傾向が見えてくるのだろうか。

完全防音室で、補聴器の調整に向けた追加の測定を行った。まずは両耳での聞こえを確認するため、スピーカーから電子音を提示し、どの程度の音が聞こえているのか丁寧に測定していく。あわせて、ことばの聞き取りの測定も実施した。

叶内さんが特に気にされていたのは、「高音域の鳥の声を聞き取りたい」という点だった。鳥の声のような高い音が聞き取りにくい場合、日常会話におけることばの聞き取りにも影響がみられることが多いとされている。

一方で、ご本人の自覚としては大きな支障を感じていない場面であっても、測定を通じて確認すると、ささやき声ほどの小さな音量になるとことばの聞き取りが難しくなる様子がうかがえた。

叶内さんにぴったりな補聴器が決定

耳にひっかけ、スピーカー部を耳の穴にしっかり入れる。

鈴木さんが叶内さんと相談し、最適な器種として選んだのが、フォナック補聴器の最上級モデルである耳かけタイプの「フォナック オーデオ インフィニオ スフィア補聴器」。補聴器としては世界初*となるサウンドプロセッシング専用AIチップを搭載。ことばと雑音を切り離し、雑音を最大限に除去することで、明瞭なことばを届けることを可能にしている。

*2024年8月ソノヴァ社調べ

聞こえづらい周波数の音が画面上に表示される。

今回、叶内さんのリクエストは、鳥の高音を聞き取ること。

そこで今回鈴木さんは、日常生活でのことばの聞き取りを重視したセッティングと、鳥の声の聴取に配慮したセッティングという、2つの異なるプログラムを補聴器に用意することとした。鳥の声を捉えるために高音域を強調すると、食器の触れ合う音などが鋭く、大きく感じられてしまうこともあるためだ。

さらに調整では、ハウリングの発生状況や、実際に鼓膜に届いている音の状態を測定し、その結果をパソコン上にリアルタイムで表示しながら音質を整えていく。補聴器を装用した状態での聞こえを一つひとつ確認しながら、最終的には叶内さんの感覚に寄り添う形で、細かな調整を重ねていった。

フィールドに足を運び、鳥の声を聞いてみる

野鳥の観察は、早朝から10時ぐらいまでがおすすめだ。

1日3〜4時間、基本的にフィールドワークの際に装用することからはじめた叶内さん。装用していて不快になるような感覚は一切なく、自然に使用できたと話す。

「つけているときもつけていないときも、会話などの聞こえかたはほとんど変わらないのがいいですね。野外だととくに、周りの雑音はしないのに、普通の会話はできる。これは感動しますね」

期待に胸を膨らませ、都内の公園に野鳥観察に出かけた。

鳥は早朝か夕方に活動的になる、ということで朝いちばんの散歩も兼ねて、野趣豊かな公園を歩く。

補聴器は軽くコンパクトで、つけているのを忘れる。

「昼間はおそらく、エサを食べて休憩しているんでしょうね。雨の日や風の強い日もなかなか出会えません。写真を撮るなら、薄曇りの日がいいですね。晴れていると、枝や葉が影になり、意外と撮影が難しいんですよ」

頭上から、賑やかな鳥の声が降ってくる。

「鳥の声は2種類あって、繁殖期にオスがメスへの求愛や縄張り宣言で長く歌うのが、“さえずり”。季節や性別を問わず、仲間との連絡や警戒など短く単発に発する声が“地鳴き”。この地鳴きが聞こえにくいんです」

目を瞑り、集中して鳥の声に耳を傾ける。

「ほら、いまの“ホー ホケキョ”はウグイスでしょ。この“チー、チュルチュル”はメジロ。あ、ヤマガラもいるね。このうるさいのはガビチョウだよ」。声が聞こえるたびに解説してくれる叶内さん。1時間ほど歩いただけで、18種類もの鳥の声が聞こえてきた。

すると、叶内さんの足が止まる。

「ちょっと待って。今、“ ツィー  ”っていってなかった? キクイタダキだ!」

ゆっくりと顔に笑みが広がっていく。

「7、8年ぶりかなぁ。あっっ“ チチッ チチッ”って鳴いたでしょ、これはホオジロ」

久々に聞き覚えのある声を聴き、感動ひとしお。

思わず双眼鏡を出し、その姿を探す。

「方角がちょっと定かじゃないなぁ。こっちからだと思うんだけど」

「そう先生、こっちから聞こえましたよ!」 

一緒にいた、探鳥仲間が、うれしそうに答える。

「先週来たときはヤブサメもいたんですけど……」

「ヤブサメはね、シィシィシィって、虫の鳴き声みたいな高い声で鳴くんですよ。落ち葉の中を、ネズミみたいにチョロチョロとして生活している鳥だから、探すのは鳴き声頼みで、なかなか姿を見られない。早朝、スギの木のてっぺんに上がって鳴いてから、下に降りて、しばらくチョロチョロしてエサを探して、たまに、地上1mほどの枝にぴょこんと上がることがある。それがシャッターチャンス」

どんな鳥たちなのか、叶内さんの写真でご紹介しよう。

●ヤブサメ (ウグイス科 全長:11cm)
夏鳥として九州以北の平地から山地に渡来し、特に下草が繁茂している林を好んで生活している。沢沿いの藪や、込み入ったササ類の中を歩いて移動することも多い。

枯れ葉などと同系色なので、地面にいるときは姿を見つけにくい。撮影/叶内拓哉
虫の声のような”シィシィシィ…”。と、徐々に高くなる尻上がりの声でさえずる。撮影/叶内拓哉

ウグイス (ウグイス科 全長:オス16cm メス14cm)
留鳥または漂鳥として、ほぼ全国に生息するが、北海道では夏鳥。有名な”ホー ホケキョ”というさえずりは、人間の言葉に置き換えた聞きなしで、「法法華経」と聞かれている。また、警戒声の”ケキョ ケキョ…”という遠くまで響く鳴き声は、「鶯の谷渡り」と呼ばれている。

春から夏の繁殖期は”ホー ホケキョ”。秋から冬の非繁殖期は”チャッ チャッ”と鳴く。撮影/叶内拓哉

●キクイタダキ(キクイタダキ 科 全長:10cm) 
留鳥または漂鳥として、九州以北の針葉樹林帯で繁殖する。年によっては都心の公園などでも見られる。頭頂には黄色い部分があり、オスにはその黄色の中に赤色の部分もある。

繁殖期の鳴き声は早口で複雑に”チュチュッチィー”などと鳴き、冬には”ツィー”という高い声を出す。撮影/叶内拓哉

●ホオジロ(ホオジロ科 全長:17cm)
留鳥または漂鳥として、九州以北の灌木がある草原や農耕地などに生息する。ホオジロという名前は、頬線と呼ばれる部分が白いことから名付けられたという。オスの顔は白と黒の線がはっきりしている。

”チュピン チュチュッチュー”などと複雑な声でさえずり、非繁殖期には”チチツ”と3音などの高い声で鳴く。撮影/叶内拓哉

残念ながら、今回の野鳥観察では、ヤブサメの声を認識することはできなかった。

「でも、キクイタダキの声もホオジロの声もわかったから、次はきっとヤブサメにも出会えるはず。そう思うと期待が膨らむね」

後日、新潟市内の里の公園に、ヤブサメがいないかと、同年代の友人たち5人と野鳥観察に出かけた叶内さん。なんとそこで……

「実に9年ぶりにヤブサメに出会えました! ちなみに、一緒に行った同年代の5人中、ヤブサメに気づいたのは僕ともうひとりだけで、あとの3人は気づかなかったそうです。ヤブサメは2羽いました。20mくらいは離れていたんだけど、ちゃんとわかりましたよ。久しぶりに春を実感できたな。うれしかったねぇ…」

叶内拓哉(かのうちたくや)さん
1946年東京生まれ。子供のころから鳥や植物に興味を持つ。東京農業大学農学部卒業。卒業後9年間、造園業に従事し、その後野鳥写真家として独立。カルチャースクール、自治体主催の自然観察会などで、バードウォッチング や野鳥写真の撮り方などを指導する。(財)日本野鳥の会会員。著書・共著書に、『山渓ハンディ図鑑 新 日本の野鳥』『くらべてわかる野鳥』(山と渓谷社)、『野鳥と木の実ハンドブック』『フィールドガイド 日本の野鳥』『野鳥手帳』『原寸大写真図鑑 羽』(文一総合出版)、『鳥に会う旅』(世界文化社)ほか多数。

「フォナック オーデオ インフィニオ スフィア」とは

フォナック補聴器の最上位モデル。本体に2つのチップを搭載。周囲の声をとらえことばをクリアに届ける。IP68(*電子機器の防水・防塵性能を示す国際的な規格)を超える防水性・防汗性も備えている。本体は軽量でつけていることを忘れる。サイズは縦31.9幅14.0奥行9.5mm。耳かけ型RICタイプ。51万2000円〜(片耳)。

問い合わせ先/ソノヴァ・ジャパン株式会社(フォナック補聴器)0120・06・4079

 

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