「甘芳ばしくさわやかでキレがいい」と話題の焼酎がある。それは、鹿児島発の本格麦焼酎『うかぜ』だ。口に含むと、麦本来の甘芳ばしい香りが鼻に抜ける。優しさの中に高貴さが香り、くっきりとした個性も感じる。心地よさに身を任せ、盃を重ねていくうちに、飲み方や温度によって味わいが変わっていくことにも気づく。この魅力ある麦焼酎を生み出したのは、鹿児島県の濵田酒造。明治元年の創業から155年以上の時を重ねる伝統的な酒蔵だ。『うかぜ』の秘密は、個性豊かな4つの原酒をブレンダーが調和させていることだという。その魅力を探るべく、ブレンダーの大園栄作さんに『サライ.jp』編集長・稲葉成昭がお話を伺った。
飲みやすい麦焼酎は、料理の旨さを引き出す
グラスからふんわりと麦の芳ばしい香りが立ち上がる。「どうぞ」と差し出され、口に含むと、フルーティで華やかな香り。かすかに爽やかな草原の気配があり、刺身に箸が伸びる。
ブレンダー・大園栄作さん(以下・大園):『うかぜ』は、食べ物のおいしさを引き出す麦焼酎です。麦ならではの口あたりの滑らかさ、キレの良さはそのままに、豊かな個性を持っています。それは、4種類の原酒をブレンドしているから。1〜2種類だと、この“深さ”が出にくいのです。
編集長・稲葉成昭(以下・稲葉):確かに、魅力は奥深い。刺身の旨さを際立てるとともに、魚の脂やにおいを洗い流してくれるようにも感じます。
大園:紅茶を思わせる香りの原酒も入れているのです。だから、水割りにすると、とても爽やかに仕上がり、初夏から秋にかけて飲みたくなります。私は釣りが趣味なのですが、太陽にさらされた後の『うかぜ』の水割りは、声が出るほど旨い。釣った魚をつまみつつ、宵の時間を楽しむのは至福そのものです。
稲葉:それはいいですね。濵田酒造がある鹿児島県いちき串木野市は、マグロ、タイ、アジなどが有名。豊かな自然の恵みと、うまい焼酎。最高ですね。
大園:『うかぜ』は旨みが強い魚にも合うので、鰹のたたきや一夜干しなどにも合いますよ。水割りはたっぷり氷を入れたグラスに、酒と水を1:1がおすすめです。湯で割る場合は、2:3が最適です。ぜひ、お湯割りも召し上がってみてください。
稲葉:これは美味しい。甘芳ばしさがさらに引き立ちます。後味もとても優美で奥深い。水割りの時は気づかなかったのですが、ほのかに樽の香りもありますね。
大園:さすがです! 樽で熟成させた原酒をブレンドしているのです。お湯割りの『うかぜ』は、肉料理にとても合います。
稲葉:豚肉の濃厚な旨みが、『うかぜ』によって引き出されていくことがわかります。パンを思わせる香りは、肉の風味と合いますね。
大園:先ほど、稲葉さんが指摘した樽の香りが、脂っぽさをすっきりさせてくれるのです。だから、こってりとした料理にもぴったり。ほかには、中華料理や洋食系にも合います。
稲葉:『うかぜ』はオールラウンドプレーヤーなのですね。どんな料理にも合うから、晩酌用はもちろん、友人を招いた時などにも重宝しそうです。
大園:海外からのお客様から好評をいただいたという感想も来ています。シーンを問わないことも特徴です。私のおすすめは、キャンプや釣りなどのアウトドアシーン。草や土、水の香りが『うかぜ』に合います。
稲葉:料理のみならず、環境も選ばない。しかしなぜ、“軽快さ”と“重厚さ”という相反する要素を、1本で表現できているのでしょうか。
4種類の原酒をブレンドした麦焼酎『うかぜ』
大園:その理由は、4種の麦焼酎の原酒を使っている「カルテットブレンド」だからです。
まず、瑞々しいフルーツのような淡麗原酒でクリアな香味を表現し、次に紅茶のような豊かな香りで、口当たりスムーズな芳醇原酒を重ねました。そこに“麦らしい風味”の芳薫原酒で適度に甘芳ばしさを感じられるように重ね、最終的に味わいにマイルドさとコクを出す樽熟原酒を重ねました。4つの異なる表情を持つ酒が調和し、『うかぜ』の核となる麦らしい風味と、甘芳ばしさ、深いコクを表現しています。
稲葉:解説いただくと、『うかぜ』の深みがよくわかります。何百種類もある原酒から、個性豊かな4種を選び、ベストな割合で配合する……どれほどの感覚を駆使するのか、想像もつきません。
大園:15か月間かけて、何百の試作品を調合し、1%単位でブレンドしていきました。私にとっては、麦焼酎の魅力とは何かを考え続ける楽しい時間でもあったのです。鹿児島で生まれ育った私は、焼酎が大好きなんです(笑)。
もちろん、ブレンドは、私の好みだけでなく、嗜好調査データを反映しました。そこで得た麦焼酎の理想は、スッキリとした味わいの中に、ビスケットやパンを思わせるような「甘芳ばしさ」が薫ってこそ。ここを軸に据えて磨き上げていきました。
500年以上の歴史がある、鹿児島の焼酎
稲葉:鹿児島は多様な焼酎があり「焼酎王国」とも呼ばれています。いつから飲まれるようになったのでしょうか。
大園:諸説ありますが、15世紀には蒸留酒の製造法が南九州に伝えられたそうです。それを裏付ける最古の記録は、ポルトガルの貿易商のジョルジェ・アルヴァレスが著した『日本報告』(1546年)。彼は鹿児島に半年滞在し、友人の宣教師フランシスコ・ザビエルのために日本人の生活や風俗を記録していたのです。そこには、“この地には多数の居酒屋があり、日本人は米からつくるオラーカ(蒸留酒)を飲んでいる” という記述があります。
稲葉:当時の日本人が、個人的に焼酎造りをしている風景が目に浮かびます。土地に根ざしたお酒なのですね。濵田酒造は明治元年(1868年)から、鹿児島県市来(いちき)の地で大規模な焼酎造りを始めたと聞きました。
大園:はい。市来は南蛮貿易、琉球貿易で栄え、さらに近くに金山もありました。創業者・濵田伝兵衛は油商人から身を起こし、濵田酒造を創業。皆に美味しい焼酎を飲ませたいという思いがあったのでしょうね。
稲葉:港や鉱山で働く人は、疲れを癒す晩酌用の焼酎を求めたのでしょう。いや、時代や職業を超え、私たちも至福の1杯のために働いているようなものです。
大園:はい。仕事はいいことばかりではなく、辛いこともある。そういう時に飲む酒は体にも心にも沁みます。そういえば、約80年前、弊社の3代目・濵田傅一(当時50歳)は、太平洋戦争終戦の日に「こんな時こそふるまい酒だ」と、貯蔵していた焼酎を、一滴残さず町民に配ったそうです。この心意気は、今も私たち社員の心に染みわたっています。
稲葉:そのようなお話も、酒の味わいを深めます。心は味に反映されますから。
うまい本格麦焼酎『うかぜ』を世界へ
稲葉:ところで、『うかぜ』とはどのような意味なのでしょうか。
大園:鹿児島弁の「大風(おおかぜ)」に由来します。焼酎王国である鹿児島から新しい“定番本格麦焼酎”の風を吹き起こしたいという意味を込め、命名しました。
稲葉:確かに、『うかぜ』は全く新しい麦焼酎です。市場に“大きな風を吹かせる”可能性を秘めていると感じます。
大園:本格麦焼酎『うかぜ』は料理もシーンも問いませんし、価格も手頃です。また、人と人との心の距離を近くするので、あらゆるものを結んでいくと感じています。ですから、もっと多くの人に届けたい。
焼酎が日本を代表する酒になり、さらに世界に羽ばたいてほしい。それが私の夢でもあります。
稲葉:伝統の技で作られた焼酎。大園さんのブレンド技術が、革新的かつ魅力的な味わいを生み出しました。今後もさまざまなシーンで、『うかぜ』を楽しみたいですし、その輪は広がっていくと感じています。
大園:ありがとうございます。ぜひ、鹿児島の自然と共に味わいに来てください。南国の太陽と豊かな海が育んだ、旨みが濃い自然の恵みを用意して、お待ちしております。
【『サライ.jp』編集長の取材後記】
焼酎王国・鹿児島県で生まれた、本格麦焼酎『うかぜ』。名ブレンダー・大園栄作さんのお話をお伺いして、いかにして個性豊かな4つの原酒の個性を引きだし、調和させ、この焼酎が誕生したのかを、知ることができた。
その香りは、甘芳ばしく豊かで、料理の個性を最大限に引き出す。シーンを問わずに楽しめる極上麦焼酎があれば、きっと食はもっと豊かに、そして人生がもっと楽しく変わっていくはずだ。
今度は『うかぜ』誕生の地、鹿児島の自然の中で、この麦焼酎を味わってみたい。
本格麦焼酎『うかぜ』
本格麦焼酎 『うかぜ』
1800ml瓶 2195円・900ml瓶 1166円(以上・税込価格)
原材料名 麦(豪州産・国産)、 麦麹
アルコール分 25度
世界的な酒類品評会で『うかぜ』が金賞を受賞
・飲酒は20歳になってから
・妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります
・飲み過ぎにはご注意ください
・飲酒運転は法律で禁止されています
取材協力/鹿児島料理×本格焼酎 どん薩摩 丸の内店
撮影/フカヤマノリユキ 構成・文/前川亜紀