19世紀フランスを代表するレアリスム(写実主義)の巨匠、ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)。クールベは、現実を理想化して表現するそれまでの絵画を否定し、目の前の世界をあるがままに描くことで、既存の政治や美術制度に敵対的な態度を表明しました。

一方で、故郷のフランシュ=コンテ地方の切り立った山や森、ノルマンディー地方の海など、厳しい自然の姿を繰り返し描いています。

ギュスターヴ・クールベ《フランシュ=コンテの谷、オルナン付近》1865年頃
油彩・カンヴァス
茨城県近代美術館蔵

クールベの、とりわけ海の絵画を中心とした展覧会が開かれています。(6月13日まで)
本展では、クールベの風景画や狩猟画のほかに、モネやブータンなど同時代の画家たちによる海の絵を含む約60点を展観します。

ギュスターヴ・クールベ《エトルタ海岸、夕日》1869年
油彩・カンヴァス
新潟県立近代美術館・万代島美術館蔵

本展の見どころを、パナソニック汐留美術館の学芸員、古賀暁子さんにうかがいました。

「スイス国境近くの山々に囲まれた小さな町オルナンに生まれたクールベが、初めて海を目にしたのは22歳の時。それから20数年後の1865年から1869年にかけて、クールベは頻繁にノルマンディーを訪れ、嵐に荒れ狂う波や、夕日に染まる海の情景など、海の様々な表現をカンヴァスに描き出します。

ギュスターヴ・クールベ《波》1869年
油彩・カンヴァス
愛媛県美術館蔵

特に、波のみをクローズアップして捉えた独特の構図は、クールベをこのジャンルにおいて特異な位置へと押し上げています。パレットナイフを駆使して波の一瞬を質感豊かに表現したクールベの、迫力ある海の描写は圧巻です。

ウジェーヌ・ブータン《浜辺にて》
油彩・カンヴァス 個人蔵

また、本展では、クールベが1860年代に交流したモネやブータンが描いた海の絵もご紹介します。ブータンが描く観光地化された浜辺の様子は、当時、鉄道の開発とともに海が身近なものへとなっていった当時の時代背景を物語る一枚です。

会場内では、当時の浜辺に人々が集う様子を写真で辿る映像や、当時の水着もご覧いただけます。ぜひ会場にてお楽しみください」

自然への畏敬の念から鑑賞へと移る過渡期のヨーロッパを作品からお楽しみください。

クロード・モネ《アヴァルの門》1886年
油彩・カンヴァス
島根県立美術館蔵

【開催要項】
クールベと海展―フランス近代 自然へのまなざし  
会期:2021年4月10日(土)~6月13日(日)
会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時より18時まで、5月7日(金)と6月4日(金)は夜間開館のため20時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:水曜日(ただし5月5日は開館)
公式サイト  https://panasonic.co.jp/Is/museum/
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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