黄金の茶室の中で、秀吉(演・池松壮亮)に茶を点てる秀次(演・山田涼介)。
(C)NHK

ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』第42回です。北野大茶会が描かれました。

編集者A(以下A):「若党・町人・百姓以下によらず、釜ひとつ、つるべひとつ、呑物ひとつでも」と貴賤を問わず、誰でも茶碗を持参すれば一服できるという趣向です。秀吉(演・池松壮亮)らしい鷹揚なイベントです。

I:真面目な官吏目線でいうと、警備の問題ですとか、頭の痛いところだったと思います。きっと担当者は右往左往したんだろうなと想像すると、それもまたおもしろいですよね。ちょっと前まで戦乱につぐ戦乱だった京都の民衆は、どのように受け止めたのでしょうか。例によって当時の民衆のひとたちの「感想」などはほとんど残されていないのですけれど……。

A:意外だったのは、茶会を提案したのが秀次(演・山田涼介)という設定だったこと。聚楽第の完成祝いということでした。秀長(演・仲野太賀)は、いまだに九州は落ち着いていないし、北条も意を明らかにしていない中で、まだそのタイミングではないと忠告しましたが、決行されることになりました。劇中の秀吉は、大名も百姓も商人も、来たい者が来ればいい、身分など分け隔てなく皆が笑って生きていける世を目指している、茶会もそういうものにしよう、ということでした。なんだか楽しそうでしたね。

黄金の茶室

黄金の茶室内で懐かしい顔ぶれに再会する秀長(左/演・仲野太賀)と秀吉(右)。(C)NHK

I:秀吉の黄金の茶室に行列ができていました。「関白様が御自ら点てた茶を頂ける」といって、庶民が物珍しそうな顔をして並んでいました。

A:黄金の茶室といえば、1996年の大河ドラマ『秀吉』でも黄金の茶室が登場しましたが、昔も今も金は富や権威の象徴です。東大寺の大仏も造営当時は金箔の大仏でした。その金を平城宮に送ったのが陸奥守の百済王敬福(くだらのこにきし・きょうふく)。この金を産出したのが陸奥国。現在の宮城県涌谷町で、当地には、黄金山神社に近接して「天平ろまん館」があり、文字通り「天平浪漫」をいまに伝えてくれます。平安時代に建てられた、陸奥国中尊寺の金色堂も有名です。

I:金で彩られた阿弥陀堂ですよね。興味深いのは、東大寺の大仏の金を産出した宮城県涌谷町と中尊寺とそれほど離れていないということです。かつてみちのくの地は「ゴールドラッシュ」だったんでしょうね。ちなみに、いずれも藩政時代は仙台藩伊達家の所領になります。

A:東大寺大仏の金、中尊寺金色堂の金、そして秀吉の黄金の茶室の金ですか。平成の「ふるさと創生事業」で「純金のこけし」をつくった自治体もありましたから、まさに古今東西「金」は夢の象徴のようなものですよね。

利休の茶の湯

利休(演・吉岡秀隆)といえば侘び寂びだが……。(C)NHK

I:秀吉が黄金の茶室で客を呼び寄せたのに対して、千利休(演・吉岡秀隆)はあえて質素な庵を建てたようです。秀吉は自分よりも行列ができているという利休に嫉妬心をむき出しにしていました。利休が「殿下をお立てせなと思て、粗末なものにしたんやけど……それがかえって客を惹きつけてしもた」と本音を言うと、秀長が「え、侘び、寂びというものでは……」と驚いていましたね。

A:なるほど。

I:利休といえば侘び寂びですが、この頃には秀長も「え、侘び寂びじゃなかったの?」と言うくらいには、利休の侘び寂びは浸透していたということだと捉えました。侘び寂びの概念自体は、利休よりだいぶ前の村田珠光の頃からあったと言われています。ただ、その頃にはまだ禅宗的な世界観の中で、質素なものの中に美を見出す侘び寂び、という哲学のようなものでしたが、大名や豪商たちと深いつながりを持った利休がその概念を一般化させたというか、大成させたわけです。利休を重用した秀吉ですが、好みは真逆だったようですね。

A:ただ、例えば秀吉の黄金の茶室にしても、利休は無関係ではなかったはず、というのが最近の研究では言われています。『豊臣兄弟!』では今までのドラマや映画などで描かれてきた利休とはずいぶん違った、お茶目な利休へのアプローチですが、実際の利休は侘び寂びだけではない、華やかなものも決して嫌いではない側面もあったのではないか、と言われています。

I:「赤は悪しき色」と利休がいったというのも、秀吉が好んだ赤を否定する意味合いで小説など後世の創作の中で語られているだけ、と聞いたことがあります。実際のところ、どうだったんですかね。

A:10日間続くと予定されていた茶会ですが、肥後(現在の熊本県)で一揆が発生したという報せを受けて、初日で中止することになりました。

I:ちなみに現代でも、秀吉が大茶会を催した北野の地に鎮座する北野天満宮では、北野大茶会にちなんで、御祭神菅原道真公の縁日である2月25日に「梅花祭野点大茶湯」を開催しています。近くの上七軒の舞妓さんや芸妓さんらが野点で茶を点ててくれるのをいただくことができます。それはそれは華やか、あでやかで、秀吉の頃もこんな感じだったんだろうなぁと思います。北野天満宮では毎年12月1日にも秀吉の北野大茶会にちなんで献茶祭が行なわれていて、今も秀吉の故事を大事にしているんですよね。

A:一度、拝見したいものですね。

黄金の茶室内では、茶道具も全て金ぴか。(C)NHK

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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