文・撮影/アンヌ遙香
20年暮らした東京を後にし、故郷札幌に帰ってきて3年目。
北海道観光の際にお寺や神社を選ぶ人はあまりいないかもしれませんが、実は北海道はユニークな仏像や狛犬たちの宝庫!

特に狛犬にいたっては全国から開拓で集まった人々が、故郷の神社にいた狛犬をなんとなく思い出しながら彫ったり…なんてこともあるようで、開拓期につくられた狛犬さんたちは特にキャラが強め。ぜひ北海道の狛犬の魅力を知っていただきたい。
北海道は実は「お参り」の聖地かも。
北海道おまいりワンダーランドへようこそ
本日は長年あこがれていた狛犬さんにお目にかかれたので慌てて筆を執っています(ワードで文章作っていますが)。狛犬業界で、北海道のみならず全国的な人気を誇る「笑う狛犬」にやっと出会えたのです。

それは北海道滝川市、江部乙神社の狛犬さん。
狛犬と聞いて思いうかべるのは、獅子のような厳しい顔つきをした阿吽の犬像ではないでしょうか。こちらの狛犬さんは、にこ~っもしくは、えへへ~と声が聞こえてきそうな、なんとも言えない笑顔を浮かべているのです。
その独特の表情からファンも多く、実は私が出演しているSTV『どさんこweekend』でも特集が組まれたほど。このとき私はロケに出られなかったので、ずっとずっと会ってみたい気持ちが積もりに積もっていたのでした。
ある秋の夕暮れ。西日がさす美しい境内に足を踏み入れた途端、にこにことかわいらしい笑顔をふりまく狛犬さんに真っ先に目を奪われた私。感激! 境内は自然豊かで、公園もあり、わんちゃん連れで訪れている人もいらっしゃいました。やっぱり「犬」に優しい神社なのです。

明治27年に入植した屯田兵400戸が地域の鎮守様として天照大神を奉り、江部乙神社と称したのが始まりだそう。この特徴的な狛犬は明治43年に奉献。すでに百歳を超えているのです。
石工は福岡の小倉から入植した佐々原一夫氏。狛犬は阿吽で対になっており、雄・牝にわかれています。全体的に丸みを帯びたようなフォルムが女の子、直線的な背中のフォルムが特徴なのが男の子です。

口をにぱーとあけて、こちらまで微笑みたくなるような満面の笑みを見せてくれているのは女の子のほう。
吽形でありながらも、何とも言えないほほえみを見せてくれているのは男の子。
さあ、なぜこの子たちの性別をみわけることができるのか? そもそも狛犬の性別について考えたことのある方は少ないのでは?
時折「子犬」の狛犬を連れている「母狛犬」と思しき像も見かけますが、性別そのものを明確に規定する狛犬は非常にレアなのです。
全国的にみても非常にめずらしい、しっかりと性別の区別をつける「しるし」がつけられている江部乙神社の狛犬。
失礼を承知で、吽形の狛犬の足のあいだをのぞいてみてください。そこにはシンボルがきっちりとついています。狛犬さんに失礼があっては私も嫌ですのでお写真は載せません。

これは宮司さんがしっかりご案内してくださり、お参りした方は皆さん驚いていかれるようです。
おそらく現代の狛犬ではなかなかお目にかかれない表現かと思いますが、こういった表現方法もなかなか新鮮で驚きです。
そしてやはりこの独特の「笑顔」。

「笑う門には福来る」というように、お参りをしてくださったみなさんが笑顔になるように、とこちらの狛犬さんの姿をおさめたかわいらしいお守りが人気となっています。
阿形は「開運招福」、吽形は「心願成就」。
お色味もかなりラインナップが充実しており、選ぶのがとにかく楽しい。最近では狛犬さんの形を模したバターサブレも人気ということでとにかくみんなに愛されているのです。

宮司さんたちの狛犬さんへの愛が伝わるエピソード、まだあります。
普段の狛犬さんは静かにたたずんでいますが、大雨や日差しの強い日は一文字笠をかぶせているのだそう。
風の伴う日は豆絞りの手ぬぐいでほっかむり。冬は雪除けハウスまで設置するのだとか。

私がお参りした日は他の犬連れのお客様がいらっしゃいましたが、お時間もありますしと宮司さんの奥様が特別にかぶせて見せてくださり感激。
なんとかわいらしい。
雪深い北海道、時折狛犬さんに笠をかぶせる神社はいくつか拝見したことがありますが、雨の日や日差しが強いときまで笠を被せて差し上げるという、その愛情にうるうる。
もちろん100歳を超えていますし、大事に大事にしていかなくてはというお気持ちなのでしょうが、それを越えた、愛らしい守り神としての存在を心底いとおしく思われているのだなというのがよくよく伝わってきました。
滝川市の観光ガイドブックでも狛犬さんの写真は大きく掲載されています。
味付きジンギスカンの発祥の地であり、あいがもが名産品という滝川市。雄大な景色に見とれることも間違いなし。

旭川からは車で30分ほど、札幌からは1時間ほど。
滝川、江部乙神社で最高の笑顔の狛犬さんとぜひ触れ合ってくださいね。

アンヌ 遙香(あんぬ・はるか)
元TBSアナウンサー。現在は故郷北海道を拠点に、フリーアナウンサー、文筆家として活動。STV「どさんこweekend」メインMCなど。北海道大学大学院博士後期課程にて日本映画におけるジェンダー表象を研究中。
Instagram:@aromatherapyanne







