文/鈴木拓也

画像はイメージです。(写真:photoAC)

年を重ねると、膝、腰などの慢性痛に見舞われやすくなる。マッサージを受けたり、湿布で冷やしたりと、いろいろ試しても良くならない。むしろ悪化しているという人も、少なくないだろう。

もしかしてその痛みは、「脳の誤作動」が原因かもしれない。そう説くのは、鍼灸師の稲村崇さんだ。稲村さんは、著書『10年治らなかった足・腰・膝 慢性の痛みがつまんで、ひっぱるで消えた』(KADOKAWA https://www.kadokawa.co.jp/product/322601001046/)で、次のように説明する。

すでに傷や炎症は治まっているのに、脳が痛みをつくり出しているともいえます。脳が「痛みを忘れるな」とばかりに、日常の動作や軽い刺激に過敏に反応をして痛みを起こすため、治療してもなかなか治りません。
これは脳の「防御反応」によって起こります。
(本書23pより)

マッサージなど定番のケアで、あまり改善しないのはこのためだ。それどころか、揉んだり叩いたりすると、脳は筋肉をさらに固くして組織を「守ろう」とする。これでは、かえって頑固な凝り・痛みにつながりかねない。

つまんで、ずらし、さすって痛みを取る

稲村さんが本書で提唱するのは、皮膚へのアプローチだ。具体的には、足指などの皮膚を「つまんで引っぱる」あるいは「手でさする」。これだけで、長年の痛みが軽減することが多々あるという。

これは、発生学の皮脳理論の考えに基づいている。受精卵が細胞分裂する際、皮膚と脳神経系は同じ外胚葉から分化する。そのため、皮膚と脳は密接なつながりを持ち、皮膚への刺激はダイレクトに脳へ届くという。皮膚が「むき出しの脳」とも呼ばれるのは、そのためだ。

そこで、皮膚にソフトな刺激を与えると、脳は「守らなくて大丈夫」と判断し、痛みの誤作動をリセットする。これが、痛みが改善する基本的な原理となる。

論より証拠で、ひとつ試してみよう。これは、足裏の痛みのケアとなる。

椅子か床に座って、痛いほうの足を反対側の足のももに乗せ、痛みのある足裏が上向きになるようにします。

1 皮膚をつまむ
足裏の痛む所の周囲から、手の親指と人差し指でやさしく皮膚を寄せて、痛みの中心に近づくようにつまみます。痛みの中心をピンポイントでつままずに、その周囲からやさしくつまむように気をつけて。

2 中心からずらす
つまんだまま、痛みの中心部から外側へと、わずか2~3ミリ皮膚をずらすように動かします。ごくやさしい圧力でずらし、そのまま3秒間キープ。パッとつまんでいた指を離します。

3 筆でなでるようにさする
さらに、足裏の指先からかかとへ一定方向に、習字の筆でなでるような超ソフトタッチで、30~60秒ほどやさしくさすります。両足か、痛みのある側の足だけでもOKです。
(以上、本書42~43pより)

このケアのポイントは、痛む箇所の周りから中心に向かって皮膚を寄せるようにつまんでずらすこと。そして、手でやさしくなで、脳に「守る」必要はないと安心させることだ。

膝の痛みは手を当てて改善

膝の慢性痛の原因といえば、膝回りの筋力低下や軟骨のすり減りだと考える人は多い。しかし稲村さんは、それによって痛みが生じることはないとする。

東洋医学の視点では、膝の痛みは、その上や近くを通る経絡(気の通り道)とつながる特定の臓器、あるいは心身のほかの不調とリンクしているとされる。例えば、膝の前やお皿の上部が痛む場合は、胃の経絡の滞りが考えられるという。そのため、膝のどの部位が痛むのかを特定する必要がある。もし、膝全体が痛くてどの部位なのかわからない場合、稲村さんは「手のひら当て」をすすめる。やり方は以下のとおり。

1 手を温める
両手をこすり合わせ、まずは手のひらを温めます。冷たい手で膝に触れると、皮膚や筋肉が緊張しやすく、ケアの効率が下がるためです。特に冬場は、手が冷たい人は手を湯に浸すなど、よく温めておきましょう。

2 膝を手のひらで包み込む
膝の痛むところに手のひらをそっと当て、膝をやさしく手で包み込みます。痛む場所が特定できない場合、膝の前後左右など数回に分けて、膝全体をカバーするように手を当てます。

3 脳に安心を伝える
じんわりと手の温もりが膝に伝わることを感じながら、深く呼吸します。「ここはもう守らなくて大丈夫」と脳に心で伝えて30秒間キープ。両膝または、痛い側の膝だけでもOK。
(以上、本書56~57pより)

本書にはこのほか、慢性腰痛や肩・首の凝りの解消法、(東洋医学で言う)「腎」を改善するケア、全身のバランスを整える生活習慣などが掲載されている。どれも覚えやすく、簡単に実践できるのが特徴。こうした不調を抱えている方に、おすすめしたい1冊である。

【今日の健康に良い1冊】
『10年治らなかった足・腰・膝 慢性の痛みがつまんで、ひっぱるで消えた』

稲村崇著
定価1760円
KADOKAWA

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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