取材・文/坂口鈴香

写真はイメージです。写真:photoAC

高齢者ほど薬の副作用が起こりやすい

「ママがボケた…!? 見つかったのは大量の薬だった」(https://serai.jp/living/1275790)では、松兼恵理さん(仮名・61)の義母に認知症のような症状が出ていた。多くの睡眠薬や向精神薬の副作用が原因だった。幸い、家族が探して受診させた医師の指示で薬をやめることができたため半年ほどで症状は治まったが、高齢者にとって薬の副作用は侮れない。

松兼さんの義母のような状態を「ポリファーマシー」と呼ぶ。国立長寿医療研究センターによれば、「多くの薬を服用しているために、副作用を起こしたり、きちんと薬が飲めなくなったりしている状態」で、単に服用する薬の数が多いことではないという。

“ポリファーマシーでは、くすりの副作用が起こりやすくなります。特に、年齢を重ねるほど注意が必要です。その理由は、体内でくすりを分解したり、排泄したりする力が弱くなるため、くすりが効きすぎるためです。ふらつき、転倒、物忘れ、食欲低下などがその例です。(国立長寿医療研究センター「ポリファーマシーって知っていますか?」https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/48.html)”

やっかいなのは、薬が原因で普段の生活に支障が出る状態になっているのに、それが新しい病気ととらえられ、さらに薬が増えることがあるのだ。国立長寿医療研究センターによれば、次のポイントを意識することでこうしたトラブルを防ぐことができる。

●知らせていない薬はないか。
●薬を正しい飲み方で飲んでいるか。
●生活の中でいつもと違った症状はないか。
●むやみに薬を増やしていないか。

かかりつけの薬局をつくり、「お薬手帳」をひとつにまとめ、自分が飲んでいるすべての薬とともに市販薬やサプリメントも伝えて確認してもらおう。お薬手帳を持ち忘れることの多い人は、スマホの「お薬手帳」アプリに入れておくのもおすすめだ。家族にアプリを入れてもらうのもいいだろう。薬をもらったときに、アプリに薬を登録するのを手伝ってくれる薬局もある。

母の訴えを聞いてくれる“優しい先生”

赤坂かおりさん(仮名・56)の母親(82)にも、松兼さんの義母と似たような症状がみられたという。

「母は不眠症がひどく、かかりつけ医に頻繁に『眠れない』と訴えては睡眠薬や安定剤をもらっていました。しばらくすると、『この薬は効かない』と言って、また別の、おそらくもっと強い薬をもらうんです。母が『私の話をよく聞いてくれる』と気に入っていたかかりつけ医は確かに優しいのですが、優しいがゆえに母が訴えるままどんどん薬を出していたようです」

ある日、実家に泊まった赤坂さんは、母親が夜中に起きてきて「晩ご飯は食べたかしら」と言うのを聞いてゾッとした。

「まさかと思いました。ご飯を食べていないなんて、典型的な認知症の症状ではないですか」

また、こんなこともあった。両親と旅行に行ったときのことだ。

「両親とは別室に泊まったのですが、翌朝両親の部屋に行くと、母が寝巻のまま横たわっているんです」

聞いてみると、母親は夜中に眠れなくて、睡眠薬を追加して飲んだ。医師からはそのような指示はなく、母親の勝手な判断だった。そして朦朧とした状態でトイレに行こうとして、ふらついて転倒したというのだ。全身を打撲していたようだったが、体が動かないわけではないというし、旅行先でもあったので、救急車は呼ばずにすぐに車で帰宅した。翌日病院を受診し、打撲だけで骨折はしていなかったのは幸いだった。とはいえ、子どもたちも楽しみにしていた旅行はだいなしになった。

「私も父も、母に『薬の飲み過ぎだから、減らしてもらおう』と何度も勧めました。それでも『眠れないつらさをあなたたちはわからないから、そんなことが言えるんだ』と逆に私たちが責められる。毎日毎日『眠れない』と訴えられるとこちらもキツいので、過剰投薬とわかっていても目をつぶっていたのです。母が満足していればそれでいいと」

(後編に続きます)

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

 

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