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マネジメント課題解決のためのメディアプラットフォーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、識学の視点から部下の育成法について考察します。

はじめに

「もっと評価してほしい」「もっと給与を上げてほしい」——成果を出す前からそう主張する部下に、頭を悩ませていないでしょうか。実はその要求の裏には、上司の「良かれと思って」の対応が生んだ勘違いが潜んでいます。

本記事では、識学の観点から、成果と報酬の正しい順序を組織に根付かせる具体的な方法を解説します。

「もらうのが当たり前」が生まれる理由

狩猟採集の時代を考えてみてください。狩りに出るからこそ、獲物にありつける可能性が生まれます。もし「お腹がいっぱいにならなければ狩りに出たくない」という人ばかりの村があったら、その村はどうなるでしょうか。誰も獲物を得られず、やがて村そのものが立ち行かなくなるはずです。

企業活動もこれと同じ構造です。会社や担当者が顧客に価値(ギブ)を提供するからこそ、その対価(テイク)が支払われ、それを原資に社員の給与が生まれます。ところが、成果を上げる前から「もっと評価してほしい」「もっと給与を上げてほしい」と、先に「テイク」を求める社員の割合が組織の中で増えていくと、どうなるでしょうか。

業界構造として自動的に利益が生まれる環境であればまだしも、物価高をはじめとする様々な影響を受けながら、各社がしのぎを削って利益を確保しなければならない今の時代において、そのような組織が生き残れるはずはありません。「成果が先、報酬は後」という概念としての原則が崩れたとき、組織の土台そのものが静かに揺らぎ始めるのです。しかも厄介なことに、この勘違いは一部の社員だけでなく、放置すれば周囲にも伝播し、組織文化そのものとして定着してしまいます。

良かれと思った対応が招く逆効果

人間には、「もっと成長してスキルを高め、1時間かかっていた仕事を30分で終えたい」と考える側面もあれば、「頑張っても頑張り損になるなら、面目が立つ程度の働きで済ませたい」と考える側面もあります。どちらの気持ちも、決して嘘ではありません。そして、どちらの側面が引き出されるかは、本人の資質以上に、置かれている環境によって大きく左右されます。

このとき、上司が「部下に頑張ってもらいたい」という善意から、成果が出る前にプレゼントを渡したり、仕事を手伝ったり、食事に連れて行ったりして、外部からモチベーションを注ぎ込んでしまうことがあります。しかし、そうして与えられた「やる気」は長続きしません。むしろ、こうした「思いやり」を繰り返し受けた部下は、次第に頑張ることに対して、当然のように+αの見返りを求めるようになります。上司からのおごりや声かけが減っただけで「頑張る気が起きない」と感じるようになり、あたかも自分が頑張れないのは上司の責任であるかのような構造ができあがってしまうのです。

こうなると、上司は部下の機嫌を取ることに時間と労力を割かれ、本来注力すべき「成果につながる管理」がおろそかになっていきます。良かれと思って始めた気配りが、結果として組織全体の生産性を下げる皮肉な構図が生まれるのです。

成果と連動した評価の仕組みをつくる

このような錯覚を生まないために組織がすべきことは、「結果」や「成果」と連動した評価の仕組みを整えることです。これは営業組織の数字目標だけの話ではありません。バックオフィス部門であっても、より難易度の高い業務や、より多くの業務量を、ミスなくこなした社員が正当に報われる仕組みが必要です。

もし、こうした評価を後回しにし、「遅くまで残っている」「声が大きい」といった印象だけで査定を行ってしまうと、実際に結果を出している社員ほど「損をしている」と感じるようになります。その結果、優秀な人材から順に離れていき、成果を出していないもののアピールだけがうまい人材が残りやすい組織になってしまうのです。

ただし、こうした仕組みづくりは一筋縄ではいきません。評価項目や基準について仮説を立てては検証し、エラーを修正するというPDCAを何度も回す必要があり、当然ながら時間と手間がかかります。だからこそ、多くの組織が「先に与えて頑張らせる」という、一見手っ取り早い方法に頼ってしまう側面があるのです。しかし、その近道こそが、冒頭で述べた勘違いを助長する原因になっていることを忘れてはなりません。評価制度の設計は地道な作業ですが、遠回りに見えて、実は最も確実な近道なのです。

具体的には、まず部署ごとに「何をもって成果とするか」を明文化し、社員一人ひとりが自分の評価基準を正確に理解できる状態をつくることから始めましょう。基準が曖昧なままでは、どれだけ精緻な評価制度を導入しても、社員は「結局は上司の主観で決まる」と感じてしまい、成果を追いかける動機が育ちません。

頑張らざるを得ない環境こそが成長を生む

どちらの側面を引き出すかは環境が決めるとお伝えしましたが、近年、リモートワークによる働きやすさを優先してきた流れを見直し、原則出社に切り替える企業が増えているのも、こうした背景と無関係ではありません。制度の是非はここでは触れませんが、本来、「頑張らざるを得ない環境に身を置くこと」こそが、生産性向上に直結するのです。

成果を出す前から要望ばかりを口にする社員が増えていく組織は、果たして「頑張らざるを得ない環境」になっているでしょうか。そして、その先に、会社の発展、そしてそれと直結した個人の成長は見込めるでしょうか。答えは、おのずと明らかです。管理職に求められるのは、部下の機嫌を取ることではなく、成果を出さざるを得ない構造そのものを設計し、維持することなのです。

まとめ

「成果が先、報酬は後」——これは、組織運営における絶対的な基本原則です。この順番が逆転し、成果を出す前から評価や給与への要求ばかりが先行する組織は、優秀な人材から順に流出し、利益を生み出す力を失っていきます。

上司の善意による「先渡し」のモチベーション付与は、一時的には部下のやる気を引き出せたとしても、長期的には「もらうのが当たり前」という錯覚を植え付け、組織の生産性を蝕んでいきます。管理職として今すぐ取り組むべきことは、成果や結果と連動した評価の仕組みを整え、「頑張らざるを得ない環境」を意図的につくることなのです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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